第686回:SUV用タイヤの新たなベンチマーク! 「ミシュラン・プライマシーSUV+」の実力を試す
2022.05.17 エディターから一言 拡大 |
ミシュランがSUV用の新しいコンフォートタイヤ「プライマシーSUV+」を発売。快適性とドライ路面での運動性能、ウエットグリップ性能、そして省燃費性能と、各方面で高い性能を追求した欲張りな新製品の実力をリポートする。
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日本のR&Dセンターが開発を主導
ブランドやボディーサイズの違いを問わず、今もバリエーションの拡大を続けているSUVカテゴリーのモデル。こうなれば、そこへの装着を前提とするタイヤの種類が増えていくのも当然の成り行きだ。
2022年5月19日発売のミシュランの新タイヤ、プライマシーSUV+も、そうしたモデルのひとつ。「プライマシー」シリーズの一員という位置づけからも明らかなように、SUV用をうたうタイヤのなかでも、これは主としてコンフォート性能の高さに重点が置かれた存在ということになる。
ちなみに、日本では初お目見えの名称ではあるものの、一部アジアのマーケットに向けては、これまでも「プライマシーSUV」という名の製品が存在していた。新製品の名称に加えられた“+”という記号には、その進化版という意味も込められているのだ。一方、欧州マーケットで大半を占めるSUV用のリプレイスタイヤは、日本でも「雪も走れる夏タイヤ」というキャッチフレーズで展開されている「クロスクライメート」シリーズとなっており、プライマシーSUVシリーズの欧州展開は行われないという。
それもあり、「プライマシーSUV+」の研究開発はミシュランの世界主要研究開発拠点のひとつである群馬県太田市のR&Dセンターが主導して行われた。15インチから20インチまでの全28サイズを用意するものの、「基本的には輸入SUVに多い大型のモデルはターゲットに入っていない」というのも、こうした事情が関係しているようだ。
トレッド面に表れる新製品のキャラクター
ブランド内で属するシリーズは異なっていたものの、「コンフォート性能に重きを置いたSUV向け商品」という点で共通するキャラクターの持ち主だったタイヤとしては、2016年2月にローンチされた「プレミアLTX」が挙げられる。摩耗の進行とともにトレッド溝の幅が拡大して排水性低下を抑制する「エクスパンディング・レイングルーブ」や、ゲリラ豪雨などで突然路面温度が低下した場合にも柔軟さを保つ「ハイトラクション・コンパウンド」といった技術を採用。ふらつきが少ないフラットライド感や、高いウエットグリップ性能が特徴として挙げられていた。
それから6年を経て登場したプライマシーSUV+では、ドライ路面でのグリップ性能はもとより、ウエットブレーキング性能や静粛性の高さ、高速安定性の高さ、ハンドリング性能のさらなる向上が目指されている。
プライマシーSUV+のトレッドパターンを見ていくと、デザインそのものはプレミアLTXとはまったく異なるものの、一つひとつのブロックが比較的小さく、また多数のサイプが刻まれているところは共通する。ノイズの小ささや“路面当たり”のマイルドさが意図された設計であることは明白だ。それに加えて新製品では、摩耗時の排水性低下を抑制する深いサイプ内に突起を設け、ブロックの倒れ込みを防ぐ「スタビリ・グリップ・サイプ」を採用するなど、運動性能の向上を目的とした新技術も採用されている。こうした対応が採られているのは、「他の乗用車と比べて重量級のモデルが多いSUV向けの商品である」という点を踏まえてのことでもあるという。
静粛性とウエットブレーキ性能にみる進化
比較用に用意された前出のプレミアLTXとともに、「トヨタ・ハリアー」に装着されてチェック走行に供されたのは、225/65R17サイズのプライマシーSUV+だ。当日は降雨に見舞われ、路面もほとんどがウエットであったものの、クローズドコースの外周路で試走をスタートさせた時点では、水たまりができたり、しぶきが上がったりというほどではなかった。
そうした状況にあってまず確かめられたのは、静粛性がなかなかに高いことである。このサイズで確認したミシュラン自身の計測データでは、60km/h走行時で約27.9%の音圧レベル低減という結果が得られているという。プレミアLTXに比べて「トレッド上のボイド比(溝の比率)を下げた」というが、その狙いもパターンノイズの減少だった。
一方で、クルージング時のフラット感や車線変更/スラローム時の安定感など、運動性能に関しては「従来品と同等レベルだった」というのが第一印象。率直なところ、今回の限られたチェック走行の条件下では、この領域に関して大幅な性能向上は実感できなかった。もちろん、プレミアLTXに対して引けを取る感触など一切なかったというのもまた間違いのない印象。ドライのハンドリング路でチェック走行ができたのなら、違いをより鮮明に捉えられたかもしれない。
こうした運動性能の印象に対し、体感的にも、特設された車載計器上でも、明確に従来商品との差を確認できたのが、フルウエット路面でチェックしたブレーキング性能だった。ブレーキング開始の初速は80km/h。そこからの減速GはプレミアLTXに対して明確に高く、それは計器上に記録されたピークGや制動距離、そして車速がゼロ=完全停止に至るまでに要した時間の数値でも裏づけられた。
タイヤの性能向上を通して環境負荷低減に寄与
先に紹介したように、一般には排水性に寄与することでウエットグリップの向上に効果があるとされるトレッドパターンのボイド比は、プライマシーSUV+では減らされている。それにもかかわらず、こうしてウエット路面でのブレーキング性能が明らかに向上した要因として大きいと思われるのは、シリカの含有量を増大させたという新コンパウンドの採用だ。加えて、細かなサイプも深く刻まれており、摩耗が進んでも排水性能が急激に低下するのを抑制。装着初期の性能が摩耗末期まで持続するという。こうした工夫は、タイヤ原材料の使用量低減や、廃棄タイヤの抑制までを見込んでのものだそうだ。
日本自動車タイヤ協会のグレーディングシステムにおける性能評価を見ても、28サイズ中24のサイズで、低転がり抵抗性能とウエットグリップ性能を高次元で両立させたことを示す「A/b」を取得し、さらに3サイズで申請中だという。時代の要請でもある「サステイナブルな製品であること」という観点からも、ひとつの解を示したニューモデルといえそうなプライマシーSUV+。SUV用をうたうミシュラン製品の、ひとつのスタンダードとなっていきそうだ。
(文=河村康彦/写真=日本ミシュランタイヤ/編集=堀田剛資)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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