価格は299万2000円~626万4500円 全23グレードからベスト「マツダCX-60」を選ぶなら
2022.07.13 デイリーコラム300万円切りというサプライズ
マツダの新世代ラージ商品群の第1弾「CX-60」が、2022年6月22日、ついに国内発表された。販売開始≒納車開始は同年9月の予定だが、予約受注はすでにはじまっている。
思い返せば、3月には日本に先行して欧州での価格が公表されて、その欧州価格が邦貨換算で700万円を超えており「マツダは高級車専門ブランドに移行するつもりか?」と、日本のファンの間で騒然となった。ただ、それはあくまで最上級の2.5リッタープラグインハイブリッド車(PHEV)の価格であり、しかも、欧州での価格を比較すれば、競合する「トヨタRAV4 PHV」と実質的には同等価格であることが判明した。
で、晴れてCX-60の日本仕様がデビューして驚かされたのは、想像以上に買い得感のある価格設定と、バリエーションの多さだ。
発売前ずっと議論のマトになっていた価格は、ふたを開けてみれば、トヨタでいうと「ハリアー」に近い設定で、サイズや内外装の質感を見ればCX-60に割高感はない。とくにスタート価格が300万円を切ったのは、ちょっとしたサプライズといってもいい。
組み合わせは膨大
CX-60はパワーユニットだけで大きく4種類。純エンジン車は2.5リッター直列4気筒ガソリンの「25S」と3.3リッター直列6気筒ディーゼルの「XD」の2種類。そこに3.3リッター直6の48Vマイルドハイブリッドである「XDハイブリッド」と、2.5リッター直4ガソリンのPHEVが加わる。さらに、電動車であるXDハイブリッドとPHEVの駆動方式は4WDのみだが、純エンジン車には2WDと4WDがある。というわけで、パワーユニットと駆動方式を組み合わせたパワートレインは都合6パターンにものぼる。
トリムグレードも豊富だ。実質的な基準グレードとなるのは「Sパッケージ」で、ひとつ上の「Lパッケージ」はそこに一部本革のレザーシートや大径ホイールが加わる。その上にあるのが、頭に「エクスクルーシブ~」とつくもので、柔らかなナッパレザーシートが標準となる豪華グレードだ。さらにXDハイブリッドとPHEVにのみ用意される「プレミアム~」は特別なタンのナッパレザーシート(「プレミアムスポーツ」のみ)や本木目パネル(「プレミアムモダン」のみ)があしらわれる最上級グレードである。
設定されるトリムグレードはパワーユニットによってちがいがあるが、前記のパワートレインのパターンとトリムグレードを組み合わせたCX-60の選択肢は、最終的に23種類にもおよぶ! バリエーションは膨大といってよく、いかにも迷ってしまう。
先の欧州仕様で話題となったPHEVだが、日本でのCX-60はハリアーとの競合を意識しているからか、539万円~626万4500円という価格設定はRAV4 PHVのそれ(469万円~539万円)よりは高い。CX-60内の比較でいうと、XDハイブリッドより約80万円高だが、ご想像のとおり、PHEVには国や自治体から補助金が出る。
補助金込みならディーゼルよりPHEV?
CX-60のPHEVは日本での細かい諸元が未発表で、補助金額も現時点では未定だ。ただ、RAV4 PHVと同額が出ると仮定すると、国からのCEV補助金が55万円なので、XDハイブリッドとの実質価格差は一気に約25万円にまで縮小する。そこに独自の補助金がプラスされる自治体も多く、たとえば東京都では30万円の助成金が出るので、実質価格はXDハイブリッドとほぼ横並び(か、PHEVのほうがわずかに安い)となる。もっというと、市町村や区単位の助成金もあるから、PHEVのほうがはっきり安く買える地域も少なくない。
PHEVのエントリーモデルであるSパッケージ(539万円)を選んで、「セーフティクルーズパッケージ」や「シースルービューパッケージ」を追加して先進運転支援システム(ADAS)をフルにそろえて、そこに「BOSEサウンドシステム」を追加すると、合計価格は565万円強。東京都民なら、これを実質500万円を切る価格で購入することも不可能ではない。それはXDハイブリッド(エクスクルーシブ系グレード)より安く、充電を活用したエネルギーコスト削減まで考えると、PHEVの買い得感が光る。
ただ、CX-60全体を通しての売れ筋は、やはり値ごろ感のある2機種の純エンジン車だろう。3.3リッターディーゼルにのみ素グレードの「XD」があり、300万円台前半(2WDが323万9500円、4WDが346万5000円)の本体価格にひかれるかもしれない。しかし、素のXDは「レーンキープアシスト」や「道路標識認機能」「ドライバー異常時対応システム」といったADAS機能や「IRカットガラス&スーパーUVカット」がオプションでも選ぶことができないので、個人的にはオススメしない。
買い得感のある2.5リッターだが……
それ以外の同じトリムグレード同士だと、2.5リッター直4ガソリンより3.3リッター直6ディーゼルのほうが58万8500円高となっている。これだけ聞くと2.5リッターガソリンの買い得感がさらに強まる気がする。
しかし、環境性能割や重量税が非課税・免税になる3.3リッターディーゼルは購入時の諸費用もガソリンより13~14万円低くなることは注意が必要だ。また、2.5リッターガソリンはエントリーモデルとして戦略的な価格にするためか、同じトリムグレードでもADAS機能を一部オプション化しているので、装備差を考えると、2.5リッターガソリンと3.3リッターディーゼルの実質価格差は30万円台半ばといったところか。
ちなみに、CX-60の3.3リッターディーゼルは、事実上、従来の2.2リッターディーゼルの後継エンジンとして開発された。排気量拡大と6気筒化は「性能を落とさず(もしくは引き上げながら)、環境性能を上げるため」だそうで、ガソリンでいうと「スカイアクティブX」世代に相当する新開発エンジンである。対して、CX-60の2.5リッターガソリンは従来世代の「スカイアクティブG」である。よって、2.5リッターガソリンとディーゼルの燃費差も、たとえば現行「CX-5」が3割弱なのに対して、CX-60のそれは約4割に拡大している。
好バランスな「XD Lパッケージ」
というわけで、(実質)価格差に性能差、そして世界的にも希少な直6エンジンという嬉しさ……も加味すると、CX-60の個人的な本命は、純エンジンの3.3リッターディーゼルだろうか。実際に買うなら、ツルシ状態でもADASがフル装備で、前後シートヒーターやレザーシートもつく「XD Lパッケージ」が、CX-60ならではの高級感も感じられる好バランスなグレードだと思う。2WD(400万4000円)か4WD(422万9500円)は好みや用途で選べばいいが、せっかくのFRベースなので、個人的にはあえて2WDで乗りたい。
とはいえ、前記のように、XDハイブリッド比で買い得感が光る539万円のPHEV Sパッケージにいくつかのパッケージオプションをフルトッピングするのも、予算が許せば心ひかれる。また、穴ねらいなら、ナッパレザーシート(シートベンチレーター付き)が標準のうえにホワイト内装まで選べる……というマツダ節炸裂の上質なインテリアが400万円切りで手に入る「25Sエクスクルーシブモード」の2WD(384万4500円)も意外に捨ておけない……と、せっかく本命を決めたつもりでも、次々と対抗馬が出てきてしまうCX-60だ。みなさんもCX-60のカタログと装備表で、購入予定の有無にかかわらず、皮算用を楽しんでみてはいかが。
(文=佐野弘宗/写真=マツダ、webCG/編集=藤沢 勝)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。