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世界へ羽ばたく「トヨタ・クラウン」 ずばり狙い目グレードは?

2022.08.17 デイリーコラム 渡辺 陽一郎

名前を残すことが第一

かつてトヨタは、「マークII(後のマークX)」「コロナ(同プレミオ)」「カリーナ(同アリオン)」などのセダンを廃止してきた。特に今はセダンの販売が世界的に低調で、トヨタに限らずセダンの廃止は多い。日産の「シーマ」や「フーガ」、ホンダの「レジェンド」なども過去のクルマになった。

上級セダンのクラウンも同様だ。1990年には1カ月平均で約1万7300台のクラウンが登録されたが、2021年は約1800台であった。最盛期の約10%に落ち込んだ。

マークIIやコロナと同様、クラウンを廃止する方法もあるが、トヨタはそれを絶対に避けたい。初代モデルを1955年に投入したクラウンは、トヨタにとって伝統ある基幹車種だからだ。将来に向けて確実に存続させたい。

そこでクラウンをSUVに発展させた。一般的にフルモデルチェンジは、カテゴリーを変えずに実施する。「ランドクルーザー」をスポーツカーに変更すれば、まったく違うクルマになってしまうが、クラウンの場合は事情が異なる。前述のとおり車名を残すことが重要で、当分の間は廃れないカテゴリーにせねばならない。そこでSUVになった。

またクラウンの累計販売台数は680万台で、この内の80%以上を国内で売ってきた。しかし今後も国内市場は伸び悩み傾向だから、クラウンを長く存続させるには、海外で販売する必要もある。その意味でも世界的に人気の高いSUVが好ましい。

千葉の幕張メッセで世界初披露された新型「トヨタ・クラウン」。単一車種のお披露目に豊田章男社長が登壇するというところにトヨタの意気込みを感じる。
千葉の幕張メッセで世界初披露された新型「トヨタ・クラウン」。単一車種のお披露目に豊田章男社長が登壇するというところにトヨタの意気込みを感じる。拡大
間もなく先代となる15代目「クラウン」。歴代モデルにもステーションワゴンやバン、ピックアップなどが設定されてきたが、クラウンといえばセダンだった時代が終わる。
間もなく先代となる15代目「クラウン」。歴代モデルにもステーションワゴンやバン、ピックアップなどが設定されてきたが、クラウンといえばセダンだった時代が終わる。拡大
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全4タイプで鉄壁の構え

そこで新型クラウンはSUVになり、ボディータイプは「クロスオーバー」「スポーツ」「エステート」の3種類を用意して、さらに「セダン」も加えた。これもクラウンを確実に売るためだ。かつてのマークXは、基本はセダンだったが、販売テコ入れのために3列シートの「マークXジオ」を加えた。しかし3列目が狭く価格は割高で販売は低迷し、マークX自体が結局廃止された。クラウンを確実に存続させるには、1~2種類のボディーでは不安があるため、4種類をそろえた。

また販売の低迷によりセダンを廃止して、SUV専用車にすると、歴代クラウンとの連続性が完全に絶たれてしまう。フォーマルなブランドイメージが薄れることも考えられるから、セダンも残した。

そして真横から撮影した写真を見ると、クロスオーバー/スポーツ/エステートはフロントピラー(柱)と前輪の間隔が近い前輪駆動のボディー形状だが、セダンだけは間隔が離れている。これは後輪駆動の形状だ。

開発者は駆動方式の明言は避けたが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は「クロスオーバーとエステートが2850mm、スポーツは2770mm、セダンは3000mm」だという。セダンだけは後輪駆動を採用するから、クロスオーバーやスポーツよりも前輪が前寄りに配置され、ホイールベースも大幅に長い。

「ジオ」のテコ入れでも販売が回復しなかった「マークX」の教訓を生かし、「クラウン」は4モデル展開で鉄壁の構えだ。
「ジオ」のテコ入れでも販売が回復しなかった「マークX」の教訓を生かし、「クラウン」は4モデル展開で鉄壁の構えだ。拡大
歴代モデルとの連続性を保つためとフォーマルなイメージを維持するために新型にも「セダン」が残る。サイドビューから判断すると、おそらくFR(ベース)だろう。
歴代モデルとの連続性を保つためとフォーマルなイメージを維持するために新型にも「セダン」が残る。サイドビューから判断すると、おそらくFR(ベース)だろう。拡大

毎年乗り換えられるクラウン

なお開発者は「クラウンのフルモデルチェンジが決まったのは2年半ほど前で、開発期間が短く、最初に市販できるのはクロスオーバーのみになる。セダンを含めて今は開発途中だから、今後約1年半の間に、順次投入していく」という。

これでは新型クラウンを購入しにくい。今回発売されたクロスオーバーを契約後に「後から登場したスポーツにしておけばよかった、失敗した!」と後悔するのは避けたいからだ。全車を見ないと安心して購入できない。

この点をトヨタの販売店に尋ねると、以下のような返答があった。
「クラウンの各車種が時間を置いて発売されるのは、販売面で不利になる。そこで『トヨタパスポートエクスプレス』を用意した(名称は販売会社によって異なる)。これは短期間の残価設定ローンで、クラウン クロスオーバーの場合、1年後の残価は新車時の80%、2年後でも70%と高い(残価も販売会社によって異なる)。クラウン クロスオーバーをトヨタパスポートエクスプレスで利用すると、次に登場したタイプに乗り換えやすい」

つまりまずは2022年秋に発売されるクラウン クロスオーバーを1年間使い、翌年にはクラウン スポーツ、その翌年にはクラウン エステートという具合に、「毎年新しいクラウンに乗り換えてくださいね」というわけだ。いかにもトヨタらしい周到な戦略だ。

「クラウン スポーツ」は丸みを帯びたスタイリングが「マカン」「カイエン」といったポルシェのハイパフォーマンスSUVにちょっと似ている。
「クラウン スポーツ」は丸みを帯びたスタイリングが「マカン」「カイエン」といったポルシェのハイパフォーマンスSUVにちょっと似ている。拡大
他に先駆けて2022年秋に発売される「クラウン クロスオーバー」。クラウンの常識を打ち破る大胆なツートンカラーも特徴のひとつ。
他に先駆けて2022年秋に発売される「クラウン クロスオーバー」。クラウンの常識を打ち破る大胆なツートンカラーも特徴のひとつ。拡大

納車を急ぐなら「アドバンスト」

このサービスも踏まえて、クラウン クロスオーバーは、どのグレードを選べばいいのか。グレード構成を見ると、全車がハイブリッドで、モーターを併用しない純エンジン車はない。駆動方式も全車が4WDで2WDは選べない。

ハイブリッドは2種類あり、2.5リッター自然吸気と2.4リッターターボがある。2.5リッターはエンジンとモーター駆動を合計したシステム最高出力が234PS、WLTCモード燃費は22.4km/リッターだ。ターボのシステム最高出力は349PSで、WLTCモード燃費は15.7km/リッターになる。ターボの使用燃料はプレミアムガソリンだ。ターボの動力性能と、同じ距離を走った時の燃料代は、両方とも2.5リッターの約1.5倍になる。

また装備の違いを補正してパワーユニットの正味価格差を算出すると、ターボは2.5リッターよりも実質57万円高い。以上を考慮すると2.5リッターが買い得だ。

次はグレードを選ぶ。まず最廉価の「X」(435万円)は避ける。ディスプレイオーディオが37万5100円のメーカーオプションになることをはじめ、装備が不足していて割高だ。その意味ではXに比べて40万円高くても、「G」(475万円)が魅力的だが、このグレードでもクラウンとしては装備が足りない。

結局、最も推奨度が高いグレードは、ハンズフリーパワートランクリッドなどの上級装備を採用した「Gアドバンスト」(510万円)だ。

なお名称に「アドバンスト」のつかないグレードは、生産が2023年1月以降になる。販売店では「アドバンストの注文が多いと、それ以外のグレードはさらに遅れる可能性もある」という。納期を考えてもGアドバンストを推奨したい。

(文=渡辺陽一郎/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

トヨタ車では初採用となる2.4リッターのデュアルブーストハイブリッドはシステム出力349PSを発生。燃費よりもドライバビリティーを追求した電動パワートレインだ。
トヨタ車では初採用となる2.4リッターのデュアルブーストハイブリッドはシステム出力349PSを発生。燃費よりもドライバビリティーを追求した電動パワートレインだ。拡大
「G“アドバンスト・レザーパッケージ”」のインテリア。早めに手に入れたい人は名前にアドバンストがついたグレードを選びたい。
「G“アドバンスト・レザーパッケージ”」のインテリア。早めに手に入れたい人は名前にアドバンストがついたグレードを選びたい。拡大
渡辺 陽一郎

渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。

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