プジョー2008 GT BlueHDi(FF/8AT)
選べるシアワセ 2022.08.31 試乗記 既存のガソリン車と同じ最高出力130PSを発生する、1.5リッター直4ディーゼルエンジン搭載の「プジョー2008 GT BlueHDi」に試乗。混雑する街なかと郊外のドライブコースでハンドルを握ると、ガソリン車との違いがわかってきた。主張が強くて個性的
「POWER OF CHOICE」、つまりさまざまなパワートレインの選択肢を用意するというプジョーの戦略にのっとり、コンパクトSUV「2008」のラインナップに、1.5リッター直4ディーゼルターボエンジン仕様が加わった。
これで2008は、1.2リッターの直3ガソリンターボエンジン、フル電動(バッテリーに蓄えた電力だけで駆動するピュアEV「e-2008」)、そしてディーゼルターボエンジンと、パワートレインは3本立てとなる。
ディーゼル仕様の2008 GT BlueHDiと対面。2008のデザインを見てまず思うのは、こりゃ好き嫌いがわかれるだろうな、ということだ。
ヘッドランプ内の3本のカギ爪、牙のように見えるデイタイムランニングランプ、そして二股にわかれる独特のキャラクターラインとリアのコンビネーションランプを立体的に見せる演出。全長4305mmというコンパクトなサイズでありながら、その小さなボディーすべてを使って「埋もれないゾ」とアピールしている。この形を好きになってくれる人だけに伝わればいい、という潔さが気持ちいい。
運転席からの眺めも独特だ。プジョーが「3D iコックピット」と呼ぶインテリアのレイアウトは、まず小径のステアリングホイールの上からメーターパネルを視認するところからして、ほかに例がない。メーターパネルは、ちょっと未来っぽい3D表示。センターコンソールに位置して地図などを表示する液晶パネルは明確にドライバーの方向に傾けられていて、この“囲まれ感”によって運転に集中しようという気になる。
エアコンの内気循環やデフロスターを操作するトグルスイッチなど、各部に使われる黒い樹脂にはピアノのようなつやと深みがあり、「小さい=安っぽい」じゃないと訴えている。内外装ともに尖(とが)っていて、主張が強くて個性的だ。では、ディーゼルエンジンはどうだろうか。
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ディーゼルとガソリンの“いいとこ取り”
エンジンを始動して、シフトセレクターでDレンジを選び、いざスタート。発進加速でまず感じるのは、ディーゼルエンジン特有の力強さではなく、滑らかで上質なフィーリングだ。
発進時、ブレーキペダルをリリースしてクリープから加速態勢に入るべくアクセルペダルに力を込める。すると、ディーゼルエンジンに期待していた「ズシン」という腹に響くトルクは感じず、軽く拍子抜けする。ただし、力が足りないというわけではなく、余裕を持って加速する。
加速と減速を繰り返すうちに、次第にこのディーゼルエンジンのキャラが見えてきた。低回転域のトルクに特化したひと昔前のディーゼルエンジンと異なり、「DV5」と呼ばれるこの新しいクリーンディーゼルは、豊かなトルクと中速域からの伸びのよさを両立した、新しいタイプのエンジンなのだ。
発進加速に軽く拍子抜けした、と書いたけれど、それは最初の数分だけで、慣れるとこれで十分。ストップ&ゴーが連続する都心部を、すいすいと泳ぐように走り抜ける。回転を上げなくてもよく走るから室内は静かで、これも上質なフィーリングにつながる。
必要に応じてアクセルペダルをもう少し強く踏み込めば、喜々とした様子で回転を上げてパワーを紡ぎ出す。 2000〜3000rpmを超えると、音もディーゼルとは思えない軽やかなものとなる。ちなみに振動は、アイドル回転から高回転域まで、まったく気にならなかった。
低回転域ではリッチなトルクを発し、中回転域から上では気持ちよく回る。ディーゼルとガソリンの“いいとこ取り”をしているように感じるあたりは、マツダのディーゼルエンジンに雰囲気が似ている。
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スポーツも得意なディーゼル
大きさも都市部にジャストサイズだし、街なかをすいすいと走るし、これは都市型コンパクトSUVかと思ったら、このエンジンは意外やワインディングロードで本領を発揮した。
例えばタイトなコーナーに進入、向きを変えて脱出する時にアクセルペダルを踏むと、低回転域からピックアップのよいエンジンが瞬時に反応、スムーズに加速する。さらにアクセルペダルを踏み続けると、気持ちよく回転が上がり、伸びやかな加速感を堪能できる。街なかを粛々と走るだけでなく、長距離をトコトコと走るだけでもなく、そのどちらもしっかりこなしながらスポーツドライビングも楽しませてくれる。
そしてこのディーゼルエンジンの特性を上手に引き出しているのが、出来のいい8段AT。基本的には、すい、すい、すいと、早め早めにシフトアップしてエンジン回転を低く抑えようとする効率型のATで、シフトショックをほとんど感じさせないあたりが動的な質感の高さをもたらしている。
一方、加速を求めてアクセルペダルを踏み込むと、ドライバーの意思を察知したかのように素早くギアを落としてエンジン回転を上げる。ATそのものがよくできているし、エンジンとの連携もよく練られている印象だ。
今回のテストドライブで得た燃費は、割とがんばって走った区間が長かったにもかかわらず、14.7km/リッター(満タン法)と、納得できるもの。ドライブフィールも含めて、ディーゼルエンジンは期待以上の出来だった。
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すべてが安全性向上に結びつく
エンジンにばかり注意が向かってしまったけれど、乗り心地のよさと爽快なハンドリングを両立している2008の美点は、ディーゼル仕様でも変わらなかった。
このクルマの足まわりが伝える印象をひとことで表現すれば、軽快という言葉になる。決してソフトなわけではないけれど、市街地から高速道路まで、段差や荒れた路面をタンタンタンと軽快に乗り越えていく。タイトなコーナーでも、ハンドルを切ると素直に、すっと向きを変えてくれる。
こうした軽快な操縦感覚をさらに強めてくれるのが、冒頭に記した3D iコックピット。小径のハンドルを操作すると、クイックに車体が動くのだ。また、ハンドルの上からメーターパネルを見る格好となるレイアウトも、街を走り、山道を上ってみると、奇をてらったものではなく、視線の移動を極力減らすための工夫だということがわかってくる。
ADAS(先進運転支援システム)に関しては、上級モデルと遜色ないレベルに達している。車線の維持をサポートしながら先行車両に追従する機能を試したところ、3D表示のメーターパネルに現在の状況がわかりやすく表示されるので安心して使うことができた。この種のシステムは、正確に作動することと同じくらい、ドライバーが安心して使えることが重要だとあらためて感じる。同時に、この3D表示もギミックではなく、より快適なドライビングを実現するために開発されたものだということを肌で感じた。
さすがに全長4305mmだから後席が広々というわけにはいかないけれど、車高の高いSUVスタイルを利して大人2名がきちんと座ることができる。荷室も深い。見た目は尖っているけれど、さすがはフランスでベストセラーになっているだけあって、実用性はしっかりと確保されている。
もともとプジョー2008というクルマは、じっくりと比較検討して買うクルマではなく、ひとめぼれをして買うタイプのクルマだと思っていた。その思いはいまも変わらないけれど、ディーゼルエンジンの追加によって、ひとめぼれをした後で、自分のクルマとの付き合い方やライフスタイルを冷静に振り返ってパワーユニットを選択する必要が生じた。それはもちろん、好ましいことではある。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
プジョー2008 GT BlueHDi
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4305×1770×1550mm
ホイールベース:2610mm
車重:1350kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:130PS(96kW)/3750rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1750rpm
タイヤ:(前)215/60R17 96H/(後)215/60R17 96H(コンチネンタル・エココンタクト6 Q)
燃費:20.8km/リッター(WLTCモード)
価格:409万7000円/テスト車=461万7240円
オプション装備:パールペイント<フュージョンオレンジ>(7万1500円)/パノラミックサンルーフ(14万円)/ナビゲーション(25万3300円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(4万4740円)/ETCユニット(1万0670円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1280km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(5)/山岳路(2)
テスト距離:280.0km
使用燃料:19.0リッター(軽油)
参考燃費:14.7km/リッター(満タン法)/15.3km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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