ボルボS60 T6 AWD R-DESIGN/DRIVe【試乗記】
考えるボルボ 2011.02.15 試乗記 ボルボS60 T6 AWD R-DESIGN(4WD/6AT)/DRIVe(FF/6AT)……594万1200円/390万1200円
スタイリングと安全性能に磨きをかけたという新型「ボルボS60」が日本上陸。その実力を“エコ”と“スポーツ”、ふたつのグレードで確かめた。
アクセル・オンでもぶつからない
「寒いなか、裸のままでかわいそうだよな」とは、『webCG』編集部のKさん。コースの先で、空気で膨らんだビニール製の人形が、北風に吹かれて震えている。
「クルマで跳ね飛ばされるよりいいんじゃないか」と思いながら、新型「ボルボS60」に乗り込む。助手席にはエンジニアの方。
「25km/hくらいで直進してください」
「ブツかる直前に、アクセルから足を離したほうがいいですか?」
「いいえ。踏んだままでお願いします」
思い出すのは、某部品メーカーが開催した体験試乗会である。新開発の衝突防止システムの恩恵で、対象物(このときはクルマ型の風船だった)の手前で停車するはずが、
ボヨヨ〜ン!
みごとに跳ね飛ばした……。
ボルボS60で人形に近づいていく。「衝突!」と思ったまさにその瞬間、ABSが作動して、驚くほどの急制動でクルマが止まった。
「1.5秒後に自動ブレーキが解除されて、通常のクリープが始まるので、ブレーキペダルを踏んでください」と隣から冷静な指示。足を置いたままだったアクセルから右足を移す。
ボルボの新しい安全機能「ヒューマン・セーフティ」を試している。これは、主に歩行者との衝突回避を狙った新装備で、グリル内のデバイスから発せられるレーダーと、ルームミラーのそばに設置されたカメラによって前方を監視。クルマが「危険!」と判断すると、メーターナセルのむこうに置かれたヘッドアップディスプレイを赤く点灯させてドライバーに警告し、場合によっては自動でブレーキをかける。時速35kmまでなら衝突を回避、時速80kmでも衝突スピードを減じ、ダメージを軽減してくれるという。
ヒューマン・セーフティは、どうやって「人間」を見分けているのだろうか?
目指すは「ゼロ」
ヒューマン・セーフティ機能は、歩行者なら55m、クルマなら180m先のものまで検知できる。対象物が人間かどうかは、カメラに取り込んだ画像の「形態」と「サイズ」「各部のバランス」さらに「足が地面についているか」などから判断する。同時に10人まで検知できるうえ、対象物の進行方向と移動速度を計算して、衝突の可能性を探り出すことまで行っているそうだ。
新しいテクノロジーを体験して、丁寧な説明を受けて、そうした機能の先進性もさることながら、安全デバイスを開発して商品化、地道に自社モデルに搭載していくボルボの姿勢に感銘を受けた。ちなみに、ヒューマン・セーフティに先だって採用された追突防止システム「シティ・セーフティ」機能は、新型S60では全車に標準装備される。「2020年までに新しいボルボ車がかかわる事故や死傷者をゼロにする」というのが、同社の野望(!?)である。
さて、日本に輸入されるS60は、3つのグレードでスタートする。エンジンは、4気筒の1.6リッター直噴ターボ(180ps、24.5kgm)と、3リッター直6ターボ(304ps、44.9kgm)の2種類。
1.6リッターモデル「S60 DRIVe」は375万円。カタログ燃費12.6km/リッター(JC08モード:11.4km/リッター)の、エコカー減税対象車である。6気筒ターボは、519万円の「S60 T6 AWD SE」と、専用サスペンションがおごられ、よりスポーティに装った「S60 T6 AWD R-DESIGN」579万円がカタログに載る。組み合わされるトランスミッションは、全グレードとも6段のオートマチック。駆動方式は、4気筒がFF、6気筒が4WDとなる。
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個性際立つ、ふたつのエンジン
最初に乗ったのは、“トップ・オブ・S60”の「R-DESIGN」。バンパー下部に派手なエアインテークをもつフロントと、デュアルパイプのマフラーが「R」の目印。専用ホイールは18インチとなる。
これまた専用の、2色のコンビネーションシートに座って走り始めると、サスペンション、ちょっとハードにすぎるかな。舗装が悪い一般道では乗り心地の硬さが少々気になる。R-DESIGNでない「T6」には、相対的にマイルドな「ダイナミック」サスペンションが与えられるから、また違った印象を受けるはずだ。
ターボで過給された3リッターストレート6はトルキーでスムーズ。余裕をもって1770kgのボディを運ぶ。ごついゴムの滑り止めが付いたスポーツペダルを踏み込めば、アグレッシブな外観にたがわぬ加速力を見せつける。新型S60では、ステアリングのギア比をクイックにし、コラム(軸)の剛性を上げたという。それでも、どちらかというと「繊細なハンドリングを愛(め)でる」というより、「ここぞ!」というときの加速を楽しむタイプとみた。以前からボルボのスポーツモデルには、どこか大味なところがある。これはこれでひとつの個性なのだろう。
この日、試乗できたもう1台が、エントリーグレードの「S60 DRIVe」。1.6リッター直噴ターボは、いかにも4気筒らしい元気のいいエンジンで、24.5kgmの最大トルクはわずか1600rpmから発生するが、回転が上がるのに比例して高まるエンジン音が楽しくて、意外や、回し気味に走ってしまう。いかにターボエンジンとはいえ、3リッターモデルと基本的に同じボディを半分の排気量で走らせるのだから、無意識のうちに回転数で仕事量を確保しようとするせいかもしれない。本国ではMT車専用の、よりチューンを落とした1.6リッターターボも用意されるというが、さもありなん。
「ツーリング」と名付けられた足まわりは穏やかで、17インチの50タイヤとのマッチングもいい。室内に飛び込むエンジン音を「うるさい」と感じるか「活発」ととるかが、DRIVeに好感をもつかどうかの分かれ目か。
2代目となったボルボS60。欧州では、「2リッターのターボエンジンを刷新中」とのハナシもあるから、追って、3リッターと1.6リッターの間を埋めるグレードが設定されるかもしれない。なにより、セダンボディだけだった先代と異なり、今回はワゴンボディもある。北欧のハンサムカーからは、まだまだ目が離せない。
(文=青木禎之/写真=荒川正幸)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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