ニッポンに久々のバイクブーム到来! ……なのにwebCGバイク担当が素直に喜べない理由
2022.11.02 デイリーコラムバイク業界に春がきた!
突然だが、このたびwebCGは、「日本自動車工業会 二輪車委員会(以下、自工会)メディアミーティング」なるイベントにお呼ばれした。一部の読者諸兄姉におかれては「webCGが二輪車のメディアミーティングぅ?」と思うやもしれぬが、ウチでもちょくちょく、二輪の記事は載せているのよ? 二輪(もやっている)メディアでもあるんですよ。……まぁ、自工会のメディアミーティングに呼ばれたのは、これが初ですが。
3回目となる今回のお題は「二輪利用環境整備と今バイクが好調な理由~なぜ若者や女性に人気なのか~」というもので……皆さんお察しのとおり、最初は後学のために参加して、記事化はしないつもりでいた。ところがちょっと興味深いというか、皆さんと共有したいお話があったので、ここに記したいと思う。
さて、当メディアミーティングで聞いた話によると、今ニッポンには久方ぶりのバイクブームが到来しているという。2021年の年間販売台数は41万5892台で、6年連続の前年比増。40万台の大台突破は、実に6年ぶりのことだそうな。新規免許取得者も2018年以降ずっと増え続けており、特に10代、20代の若者、および女性の伸び率が大きいとのこと。教習所もパンパンで、2、3カ月の入所待ちを求めるところもあるのだとか。……なんだか四輪かいわいの人が聞いたら、うらやましくて歯ぎしりしそうな話である。
昨今のこのブーム、自工会では「第12世代バイクブーム」と呼んでいるのだが、その特徴は「個々人が好きな趣味に“バイク”を結びつけて楽しむ」ことにあるという。過去のブームを振り返りますと、“ナナハン”だとか“〇〇レプリカ”だとか、あるいはビッグスクーターだとか、つまりは欲しいバイクが先にあって、「それでナニをするか?」は買ってから考えることだった。それが今は、「キャンプがしたい」「御朱印を集めたい」「友達とツーリングしたい」「日々の足に使える、クルマより気軽なモビリティーが欲しい」→そのためにバイクを買う。と、順番が逆になったのだ。
拡大 |
今日のブームを招いたさまざまな要因
今回のブームの要因について、自工会は複数の理由を挙げている。バイクのジャンル拡大で、個々人がよりライフスタイルに沿うモデルを選べるようになったこと。若者にも受け入れられる、オシャレな(という表現を使っている時点で筆者はすでにオッサンである)ウエアが増えたこと。2018年の法改正で、AT小型限定普通二輪免許が最短2日で取れるようになったこと……もあるが、これについては客寄せパンダ的効果のほうが大きく、「AT小型免許を取りに教習所に行く→気が変わって中免を取る→時間的にも費用的にもお得なので、ついでに大型も取っちゃう」というケースが多いのだそうだ。
そしてなにより、昨今のSNSの普及である。自分と同じ世代、同じ目線の人たちがバイクで楽しんでいる姿に触れ、興味を持つ人が増え、そこからバイクの有用性や楽しさが認知されるようになったのだ。著名人が自身の趣味として、気軽にバイクを紹介するようになったのも大きいだろう。SNSではないが、筆者もTV番組『アメトーク』のバイク芸人回にはいたく共感したし、笑い転げさせていただいた。
もちろん、関係各所の努力もあったと思う。各種イベントの開催しかり、大学等に出向いての情報発信しかり。また都内在住のライダーならお気づきの方もおられるだろうが、最近になってこのかいわいでは、駐輪環境がいたく改善された。長年バイクで渋谷のタワレコに通っている筆者もひそかに実感していることで、これはメディア等の指摘で自工会が東京都に働きかけ、実現したことだそうな。とはいえ今日では、バイク利用の増加により、それでも駐輪場の問題が取りざたされている様子。自工会&東京都ではさらなる施設の整備と、「〇〇にバイク駐輪場がありまっせ」という情報発信に腐心しているそうである。
拡大 |
過去のブーム終焉は誰の責任だったの?
筆者がバイクの免許を取得したのは20代の後半で、自工会の分析に照らし合わすと、「バイクが欲しくてバイクを買った最後あたりの世代」に相当する感じだ。当時はまだ都内の駐輪環境はよくはなかったが、それでもこのモビリティーの便利さ、気軽さ、気持ちよさにいたく感動した。そして「なんでこんなに、バイクユーザーは少ないんだろう?」と不思議に思ったりもした。
そうしたいちバイク乗りとしても、webCG内でほぼ“ひとり編集部”状態で二輪記事を仕込んでいる偏屈野郎としても、ブームの盛り上がりは素直にうれしい。もっと多くの人にこの乗り物を楽しんでほしいし、少しでも長くこのブームが続けばいいと思う。……思うのだが、同時にこのブームの今後に関して、ちょっと危うさも感じている。
あれは今から3年前の、2019年の4月。筆者も大好きな奥多摩周遊道路において、一時、二輪車の通行が禁止される事態が起きた。暴走行為で立て続けに事故が起き、警察が規制に乗り出したのだ。正直「まだそんな迷惑なやから(あえて言わせていただきますよ)がいるのかよ」とあきれたものだったが、今日でも、そういうライダーをたまに見かけるのだ。先に触れた駐輪場問題もそうで、自工会によると、せっかく施設の整備が進んでいるのに、依然として迷惑な路上駐車が散見されるという。こうした状況が続けば、今は業界に協力的な東京都も、いずれ態度を変えるかもしれない。
ミーティングで語られたところによると、過去に起きた何度かのバイクブームは、深刻な事故が多発して原付にヘルメットの着用が義務づけられ、暴走行為を見かねて「三ない運動」が起こり、路駐の増加によって法改正&取り締まりが強化され、衰退していったという。尾藤イサオの歌じゃないけど、誰のせいでもありゃしなかったのだ。
拡大 |
文化の醸成や新サービスの定着を妨害するもの
また、これについては“二輪の話”とくくっていいものかビミョーだけど、利用者の倫理観は新モビリティーの成否にもかかわってくると思う。
最近、ちまたでは電動キックボードの利用マナーについて厳しい声がある。これについて、会の終了後に日髙祥博副会長兼二輪車委員会委員長にお話をうかがったのだが、この手のモビリティーで先行していたはずの欧米では、電動キックボードや電動モペットによるシェアリングサービスはすっかり下火なのだそうだ。話の流れで理由はお察しでしょう。乗り捨て、乗り逃げ、車両の破損と、まぁ利用者のマナーが悪かったのだ。無論、第三者の理解を遠ざける交通ルールの軽視もそのひとつで、原付ナンバーのキックボードを自転車のごとく走らせる利用者を見るにつけ、こりゃあ日本でもサービス定着はアヤシイなと危ぶむ今日このごろだ。
クルマやバイクに関して特定のトレンドが退潮となることや、それらが文化として定着しないこと、あるいは新しいモビリティーサービスの普及が進まないことについて、税制や規制、取り締まりのあり方、関連各所の施策の不足を指摘する声はよく聞かれる。でも、使用者の素行について自戒を促す声って、SNSでも正直あまり見かけない(他者がくさしているのは見かけるけど)。
方々で話を聞いていて思うのだが、コトが自分事であるモビリティーの関連各所は、当然ながら“廃れればいい”なんて思ってないし、行政も別に私たちに意地悪しているわけではない。彼らにしたら、「一般の方からクレームがきたら、そりゃ対処しないわけにはいかないでしょう」ということなのである。なんだかんだ言って、ブームの行く末を決めるいちばんの要因は、私たち当事者の行いなのでしょう。
会合の趣旨とはずいぶんかけ離れた感想だけど、そこで語られたバイクブームの変遷や、委員会が現状に持つ危機意識、日髙委員長から聞いた話などから、そんなことを思ったwebCG初参加の二輪メディアミーティングだった。
(文=webCGほった<webCG”Happy”Hotta>/写真=向後一宏、webCG/編集=堀田剛資)
拡大 |

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
-
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する 2026.8.24 2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。
-
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性 2026.8.21 欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。
-
FCEVで世界一の販売台数 「ヒョンデ・ネッソ」にみる水素の可能性と普及へのカギ 2026.8.20 フルモデルチェンジしたヒョンデの燃料電池車(FCEV)「ネッソ」は、1014km(参考値)の一充填走行距離を実現したという。進化したゼロエミッションの走りを味わいながら、ヒョンデが目指す水素社会の可能性とFCEVの未来について考えてみた。
-
新型「キックス」がスマッシュヒットの日産 次なる一手のコンパクトミニバンとはどんなクルマか? 2026.8.19 新型「キックス」が好評の日産が、次はコンパクトミニバンの発売をプランしているという。日産の国内ラインナップには(なぜか)なかったジャンルのモデルだが、果たしてどんなクルマになるのだろうか。「シエンタ」「フリード」といった強力なライバルに、どのような武器を手に挑むのだろうか。
-
次期「スカイライン」はこうしてつくられる! 日産が今やろうとしている開発効率化の取り組みとは? 2026.8.17 日産はいま車両開発期間の大幅短縮に向けて、大きなチャレンジをしているという。現在開発が進んでいる次期「スカイライン」に適用されるというその手法は、従来のやり方とどう違うのか? 世良耕太が解説する。
-
NEW
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
NEW
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)
2026.8.22試乗記DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。 -
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】
2026.8.21試乗記メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。 -
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性
2026.8.21デイリーコラム欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。



