トヨタ・スープラRZ(FR/8AT)
硬派変わらず 2022.11.14 試乗記 話題は後発の新型「フェアレディZ」に持っていかれ気味だが、同じ2シータースポーツということなら「トヨタ・スープラ」もまだまだ元気だ。シャシーのチューニングでハンドリング性能と乗り心地の改善を図ったという、最新モデルの仕上がりを試す。6MTではなかった
今年の春にマイナーチェンジを受けたスープラの目玉は、何よりも6気筒エンジン搭載の「RZ」だけに追加された6MTモデルである。その注目モデルにようやく乗れるのか、と勢い込んだら、そちらはまだ用意がないのだという。なーんだ、ということで今回の試乗は8AT仕様である。
ご存じのとおり、スープラはいわば兄弟車の「BMW Z4」と一緒にオーストリア・グラーツのマグナ・シュタイヤーの工場で生産されている。そこからトヨタの元町工場に運ばれて再びチェックを受けた後に出荷されるという、普通に考えても大変手間のかかる手順でディーラーに届けられるのだから時間がかかって当たり前ともいえる。
そもそもヨーロッパ車は夏休みを挟んでモデルイヤーが変わるのが一般的で、スープラもそのスケジュールでつくられていると推測する。そのうえ当節は生産流通のサプライチェーンに問題がないクルマを見つけるほうが難しい。さらに近ごろは発売前からいわゆるローンチエディションだ、限定車だと盛り上げるのが流行しており、だいぶたってから、ところであのクルマどうしたっけ? となりがちだ。
思えば昭和のころはもっとずっとシンプルだった。トヨタの人気車種ともなれば都心のホテルの大宴会場で大々的に、しかもいっぺんでは招待客をさばき切れないため、数度に分けて発表会が開催され、その当日には全国のディーラーの店頭に一斉に新型車が展示されていたものである。
そんな時代でないことは百も承知ながら、近ごろはどうも前宣伝だけ華々しくて、実際の新車がなかなかカスタマーの手に渡らないという状況が常態化しているように見えて、なんだかスッキリしないのである。
どこが火元か煙の元か
2019年春に鳴り物入りで登場したスープラながら、デリバリーが軌道に乗ったタイミングで新型コロナウイルスのまん延が深刻化し、出ばなをくじかれてしまった。それでも翌2020年の国内登録台数はおよそ2700台、2021年は1200台あまり、直近では今年の上半期で500台弱という数字になっているという。
決して多いとは言えないが、RZでは軽く700万円を超える本体価格と2シータースポーツカーという特殊性を考えれば納得できない数字でもない。にもかかわらず、一部ネットで早くもスープラの存続に関するうわさが取りざたされているのは、現行型でZ4が生産終了するというヨーロッパメディアの報道が火元というか煙の出どころになっているのだろうと推測される。
もちろんあくまでうわさであり、BMWはそれについてコメントしていないが、やはり期待したほど売れ行きが伸びないことは事実。世界的にもオープン2シーターの人気がいまひとつで、各ブランドが車種の整理統合を行っていることが背景にあると思われる。
ならば兄弟車たるスープラのほうも廃止されるのではないか、という臆測だろうが、サブブランドである「GR」の象徴であり、トヨタのモータースポーツ活動の看板となっているスープラをそんなに簡単には諦めるはずはない。
トヨタ単独では難しかったからこそ、BMWとの共同プロジェクトを立ち上げたのであり、当然相手方の都合を無視するわけにはいかないが、そういう事態も織り込み済みと信じている。これから世界中のカスタマーチームにGT4マシンを売り込もうという時に、簡単に手を引くことはない、はずである。
少し大人っぽく
6MTではないとしたらマイナーチェンジでどこが変わったのかというと、足まわりやステアリング系の細かなブラッシュアップがすべてである。すなわち、ダンパーの減衰特性チューニング、スタビライザーブッシュの特性変更、電制パワーステアリングやVSCの見直しなどによって乗り心地とロールバランス、操舵フィーリング、限界域でのコントロール性をそれぞれ向上させたという。さらにRZには新デザインの鍛造アルミホイールが採用されている。
実際に初期型のいささか荒々しいが、硬派骨太の伝統的後輪駆動スポーツカーという印象はかなり薄くなっている。ただし、発売後1年で早くもマイナーチェンジした後のモデルでもだいぶ角が丸められていたと記憶しているから、今回の改良分がどの程度影響しているのか判断するのは正直難しい。ともかく、かつてのスパルタンなとげとげしさというか野蛮な感じはグッと影をひそめ、全体的に洗練されたと言っていいだろう。
最初のモデルは乱暴に言ってしまえばいかにもドリフト上等、容易にリアがブレークする方向にしつけられているな、と感じたものだが、安定志向に振り子を少し戻したとみられる。分かりやすく“キャラを立てる”という点ではそのほうがアピールしやすいのかもしれないが、トヨタ車のなかでも最高価格帯に位置する、ということは当然年齢層が高いユーザー向けとしては、全体的にちょっと子供っぽくはないかと思っていたが、やはりちょっと行きすぎだったのかもしれない。このあたりは「GR86」と「スバルBRZ」の関係に通じるものがあるといえるだろう。
覚悟が必要
といっても、スープラRZは依然としてはっきり武闘派のスポーツカーである。パワフルなグランドツアラーとして見ると、やはりちょっと落ち着きに欠ける。とりわけリアサスペンションは舗装の荒れたところでは暴れると言ってもいいぐらいで、山道を元気に走る際にはそれなりの覚悟と注意が要る。パワーを与えると後輪がムズムズする傾向も相変わらずである。それが楽しい、という熱いドライバーにはまさしく望むところなのだろうが、万人向けではないということは明記しておきたい。
パワーユニットは従来どおりBMW謹製の3リッター直列6気筒ターボエンジンだが、これは2020年に初期型の340PS/5000rpmと500N・m/1600-4500rpmから387PS/5800rpmと500N・m/1800-5000rpmへピークパワーが引き上げられている。とはいえ無理に絞り出しているものではなく(そもそも北米向けZ4のパワーアップに伴う変更だ)、実用域でも滑らかでたくましく、さすがBMWの6気筒としみじみ思う。トラックデーでは楽しいだろうな、と思う一方で毎日乗るには使い勝手が悪いし疲れるな、とも思う。そういう割り切りができるかどうかを問われるスポーツカーである。
(文=高平高輝/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
トヨタ・スープラRZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4380×1865×1295mm
ホイールベース:2470mm
車重:1530kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:387PS(285kW)/5800rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1800-5000rpm
タイヤ:(前)255/35ZR19 96Y/(後)275/35ZR19 100Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:12.1km/リッター(WLTCモード)
価格:731万3000円/テスト車=735万9882円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション カメラ一体型ドライブレコーダー<DRT-H68A>(2万1516円)/ETC2.0ユニット<ボイスタイプ>(2万5366円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1891km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:335.0km
使用燃料:42.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.9km/リッター(満タン法)/8.2km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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