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【スペック】全長×全幅×全高=4135×1765×1570mm/ホイールベース=2530mm/重量=1380kg/駆動方式=4WD/1.6リッター直4DOHC16バルブターボ(190ps/5600rpm、24.5kgm/2000-5200rpm)/価格=245万1750円(テスト車=296万1000円)

日産ジューク 16GT FOUR(4WD/CVT)【試乗記】

冷たい高性能 2011.01.31 試乗記 山田 弘樹 日産ジューク 16GT FOUR(4WD/CVT)
……296万1000円

「日産ジューク」のハイパワー&4WDグレード「16GT FOUR」に試乗。足まわりの仕上がり具合を中心に、その走りを峠道でチェックしてみた。

期待の後発グレード

日産のコンパクトカー用Bプラットフォームに、強化した井桁サブフレームを追加して、「マーチ」や「ノート」とは全く違う世界観をつくり出した「ジューク」。1.5リッターのパワーユニットは、それらBセグメントの共用エンジンというよりもむしろ「革新的なダウンサイジング」という感じで、非常に好感がもてた。質感も、ひとクラス上。でも、個人的には実に「惜しい!」と思えるクルマだった。

その理由は、「SUV的なボディ形状だから腰高感が出るところに、かなり強めのロール剛性が与えられた」から。
もっとわかりやすくいうと? これだけ見晴らしが良い(そしてトレッドの狭い)ボディでキビキビ走ろうとすれば、当然ロールしたら怖いし、それを止めようとすれば足まわりは硬めになる。そのせいで、路面とのコンタクト感がやや希薄になっていた。ダンパーの質感やタイヤの選択もまた、実に惜しいと思ったのである。

そんな1.5リッターモデルの試乗会で、日産自動車のエンジニア氏は「それなら、あとで追加される1.6リッターのターボモデルには期待してください」とおっしゃった。つまり、走りのターボ車用にセッティングが煮詰められた足まわりならば、たとえ腰高なジュークでも、ご所望の質感とスタビリティを味わえますよ、ということなのである。

インテリアの色は、赤×黒のツートンカラー(写真)と黒系ツートンカラーのふたつから選べる。
インテリアの色は、赤×黒のツートンカラー(写真)と黒系ツートンカラーのふたつから選べる。 拡大
「日産ジューク」は、2010年6月にまず1.5リッターのFF車がデビュー。5カ月後の11月に1.6リッターのFF車と4WD車が追加された。ひとまわり大きな17インチアルミホイール(写真)は、1.6リッターモデルの特徴のひとつ。なお、タイヤサイズは215/55R17だ。
「日産ジューク」は、2010年6月にまず1.5リッターのFF車がデビュー。5カ月後の11月に1.6リッターのFF車と4WD車が追加された。ひとまわり大きな17インチアルミホイール(写真)は、1.6リッターモデルの特徴のひとつ。なお、タイヤサイズは215/55R17だ。 拡大
日産 ジューク の中古車

あきれるほどのコーナー上手

結論から言ってしまえば、その仕上がりは、期待と違うところにあった。
ひとことで言えば、この「16GT FOUR」は“1.5リッターの上のグレード”というよりは、それ自体がコーナリングマシンだったのだ。今回試乗した箱根のターンパイクのような、速度レンジの高いコーナーが連続する峠道では、あきれるほどにスタビリティが高く、そして速い。

その大きな要因は、電子制御式の4WDシステムにあると思われる。このクラスでは初となるトルクベクトル機能を付けたジュークの「4×4-i」システムは、ドライバーが気づかぬうちにアンダーステアを消し去り、オーバーステアに転じる予兆をヨーレイトセンサーから検出して、事前に制御してしまう。このクルマで過大なアンダーステアを出しながらギャンギャン走っているようなら、自分のドライビングを見直した方がいい。

しかしそのあまりにも自然な制御は、逆に言えば、たとえばフォルクスワーゲンの「XDS」なんかよりもはるかに細かい制御をしているにもかかわらず、シームレス過ぎて乗り手が効果を感じにくい。結果、16GT FOURが喧伝(けんでん)するような、熱いスポーツ感はくみ取れず。思いのほか“クールな高性能”になっている。

ただ、僕が今回この16GT FOURに求めたのは、こうした走りではない。見晴らしがよく取り回しもいいジュークの走りを、新たに用意された足腰がどう受け止めるかという点では、あまり良い方向のセッティングだとは思えないのである。


日産ジューク 16GT FOUR(4WD/CVT)【試乗記】の画像 拡大

日産ジューク 16GT FOUR(4WD/CVT)【試乗記】の画像 拡大
1.6リッターモデルでは、空調や燃費の基本情報に加え、ターボの過給状態や車両にかかるG(写真)を、カーナビ画面下の「インテリジェントコントロールディスプレイ」に表示できる。
1.6リッターモデルでは、空調や燃費の基本情報に加え、ターボの過給状態や車両にかかるG(写真)を、カーナビ画面下の「インテリジェントコントロールディスプレイ」に表示できる。 拡大
荷室の容量は、251〜786リッター。床下にも44リッターの予備スペースが確保される。 (写真をクリックするとシートの倒れるさまが見られます)
荷室の容量は、251〜786リッター。床下にも44リッターの予備スペースが確保される。
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たくましいけど惜しい足

コーナリング性能を高めたことで(というよりも、背の高いコンパクトSUVのロールやピッチングを抑えたというのが本音だろう)、このグレードでは大切な要素となる高速道路での直進性は犠牲になった。路面の凹凸に対して小さな入力がコツコツと伝わってくるから、高速走行時の大きな入力を見越してバンプ(突き上げ)側を固めたのかと速度域を上げてみると、そこでダンピングがピタリと合うわけでもない。この足まわりに対する速度域のスイートスポットは、非常にわかりづらい。
その固めた突き上げに対してなんとか乗り心地を確保しようと、リバウンド側は緩めてはいるのだが、それが上下方向の揺り返しになっており、収まらない。

また重心が高いSUVゆえに操舵(そうだ)に対する反応が敏感で、たとえば片手で運転をすると、路面の起伏を通過する際に少しでも力の入った方向にかじが取られてしまう。電動パワステの効き方そのものは良いから、これにもう少しステアリングセンターの“座り”を与えてほしかった。

荷物もほとんど積み込まない単独走行での印象ではあるのだが、総じて、もう少しだけダンパー(とタイヤ)にお金を掛けてほしいと思った。乗り味でいえば、兄貴分にあたる「デュアリス」の、ザックス製ダンパーを使った足のような、しっとりとして追従性の高い操縦性が望ましい。こうしたクルマのスポーティさは、反応を過敏にしてコーナリング速度を高めることだけではないはずだ。

もうひとつのキモ、1.6リッター直噴ターボ「MR16DDT」ユニットは、必要にして十分な190psを発生する。エグゾーストノートやエンジンノイズはチープな印象で、豊かなトルクとは裏腹に“2.5リッター以上のNA車に相当する質感”を備えているとは思えないが、小排気量化が進む時代のエンジンとしてはひとまず合格。むしろ高回転をキープしがちなCVTが、そのチープさ加減を助長してしまうのが惜しかった。でも、DSGのような技術を持たなければ、これで対応するしかないのだろう。

ジュークにも言い分があるとすれば、その根拠はトレッドの狭さなのだろう。ホイールベースも短いけれど、その点は4×4-iシステムやリアマルチリンクサスのおかげで、ほとんど気にせずドライブできる。つまりそれだけ、コンパクトな(しかもSUV風な)クルマをスポーツカー風に仕立てるのは難しいのだと思う。
すごくカッコイイんだけど……あぁ惜しい!

(文=山田弘樹/写真=峰昌宏)

峠道を疾走する「ジューク」。横から見ると、スポーツカーの上半身とSUVの下半身を合わせたという個性的なデザインが際立つ。
峠道を疾走する「ジューク」。横から見ると、スポーツカーの上半身とSUVの下半身を合わせたという個性的なデザインが際立つ。 拡大
身長171cmのリポーターがリアシートにおさまると、ごらんの様子。
身長171cmのリポーターがリアシートにおさまると、ごらんの様子。 拡大
「16GT/GT FOUR」に積まれる新開発の1.6リッター直噴ターボユニット。190ps、24.5kgmのパフォーマンスはもちろん燃費性能も自慢で、10・15モードの燃費値は14.4km/リッターを記録する。
「16GT/GT FOUR」に積まれる新開発の1.6リッター直噴ターボユニット。190ps、24.5kgmのパフォーマンスはもちろん燃費性能も自慢で、10・15モードの燃費値は14.4km/リッターを記録する。 拡大
【テスト車のオプション装備】
キセノンヘッドランプ=6万3000円/バックビューモニター+カーウイングスナビゲーションシステム+ETCユニット+ステアリングスイッチ=30万9750円/インテリジェントキー+プッシュスターター+電動格納式リモコンカラードドアミラー+Sパック+エンジンイモビライザー=13万6500円
【テスト車のオプション装備】
キセノンヘッドランプ=6万3000円/バックビューモニター+カーウイングスナビゲーションシステム+ETCユニット+ステアリングスイッチ=30万9750円/インテリジェントキー+プッシュスターター+電動格納式リモコンカラードドアミラー+Sパック+エンジンイモビライザー=13万6500円 拡大
山田 弘樹

山田 弘樹

ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。

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