第398回:凍った路面に強いのはどんなクルマ?
「日産オールラインナップ 氷上・雪上試乗会」に参加して
2017.02.11
エディターから一言
2017年2月、長野県北佐久郡の女神湖で「日産オールラインナップ 氷上・雪上試乗会」が開催された。雪も氷もお手のものといった4WDモデルから、いま話題の“新しいカタチの電気自動車”やスーパースポーツカーなどが勢ぞろい。氷上のスキッドパッド(旋回走行コース)やハンドリングコース、雪の積もった一般道でのテストドライブで、滑る路面に強かったのはどんなクルマ?
凍った湖の上でクルマを走らせる
長野県から山梨県へと連なる八ヶ岳連峰の、北端に位置する標高2531mの火山が蓼科山。それが別名“女の神山”と呼ばれるということから名付けられたのが、そこから4kmほど離れた、標高約1500mの高原に位置する女神湖だ。
そもそも「下流に広がる農地に水を供給するために開発された」というこの湖は、春から秋にかけては各種のボートやカヌー/カヤックなどが楽しめるリゾート地である。その一方で、冬になると厳しい寒さのために全面が結氷する。氷の厚さは40cm以上にもなり、クルマが乗っても十分な強度を備えるようになる。
そんな凍った湖上と、雪が積もる周辺の一般道を舞台に開催されたのが、今回の日産オールラインナップ 氷上・雪上試乗会だ。
極端に滑りやすい環境下で、「リーフ」や「ノートe-POWER」といった、日産ならではの“電動車両”を含めたさまざまなパワーユニットや駆動レイアウトを持つクルマが、どのような走りの特性を披露するのかを実際に乗って見極めてもらおう……。そんな趣旨に基づいたイベントと理解すればよさそうである。
何でこんなクルマがこの場所に!?
“オールラインナップ”とあるように、14台のテスト車両はさまざま。いずれもブリヂストン製のスタッドレスタイヤを装着していた。
前述した通り、日産ならではの電動車両もあれば、「ジューク」や「エクストレイル」のようなSUVモデルもアリ。さらには「セレナ」のような流行のミニバンもあれば、「GT-R」や「フェアレディZ」のような正統派のスポーツカーもアリ……といった具合だ。
一方で、ズラリと並んだクルマたちを眺めていると、正直なところ「あれ? 何でこんなの持ってきちゃったの!?」と感じさせるクルマも。そんな印象を抱いたのは「スカイライン200GT-tタイプP」。もっとも、そんな場違い感(?)の原因は、2014年の発売時に話題となった「ダイムラー製エンジンを搭載」というところにあったわけではなく、グレードラインナップの中に多くの4WDモデルが存在するのに、あえて氷上や雪上は苦手という定評(?)のある、FR仕様が持ち込まれたところにあったわけだが……。
「モーターはエンジンよりもアクセル操作への応答性が緻密で素早いため、電動車両は氷結路や雪上でのスムーズな走行が可能なことが大きなメリット」とか、「ジュークのオールモード4×4-iシステムは、リアデフの左右に設けられた電子制御カップリングの採用により、左右輪へのエンジントルク配分を自在に制御できるため、スポーティーなハンドリング性能を実現」といったプレゼンテーションを耳にしたあとに、真っ青な空と、真っ白な氷上のコントラストがこの上なく美しい、湖上のコースへといざ出陣。
気温は氷点下10度ほどで「今年は路面状況がかなり良好」といわれる中を、まずは氷上スティントからプログラムをこなしていく。
モーター駆動車の扱いやすさにびっくり
女神湖の氷上に用意されたのは、リーフやジューク、スカイラインやフェアレディZ、そしてGT-Rやノートe-POWER。
これでスキッドパッドやハンドリングコースを走り回ったわけだが、なるほど「仰せの通り」。そう、ここで光ったのは、まずリーフとノートe-POWERという“電動車両”の扱いやすさだった。
いずれもFF車ゆえ、絶対的な駆動力が4WDシステムの持ち主に及ばないのは言わずもがな。けれども、アクセル操作に対するトルク制御が極めてきめ細かく、そしてレスポンスにも長(た)けているので、タイヤのグリップ能力を目いっぱいに、無駄なく駆動力へと変換していることが実感できるのだ。
それが最も顕著なのが、トラクションコントロール機能の作動時。これは下手にマニュアル操作を行うよりも素早い加速をしているなと、そう感じられるシーンがしばしばだった。
さらに「これが重要!」と強く実感したのは、トルクを絞る側の制御レスポンス。これがエンジンよりもはるかに素早いため、駆動力変換できない無駄なスリップが抑えられ、それがハンドリングの向上にも大きく効いていた実感が強かったのだ。
ハンドリングコースでは、GT-Rの楽しさとコントロール性の高さを再認識。舗装路でのスーパータイムアタッカーであるこのモデルは、やはり氷上でも速かった。リア側に大きなトルクバイアスが掛けられたハイテク4WDシステムを採用したゆえの、ハンドリングの自在度の高さは感涙モノだ。
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快適性にも秀でたNISMOモデル
一方、一般道のスティントでは、エクストレイルとセレナの4WD、そしてノートe-POWERのNISMOバージョンをドライブ。このセッションで最も印象深かったのはノートだった。
NISMOバージョンは初乗りということで、あえて推奨ルートを外れ、ドライの舗装路面をメインにしてのテストドライブ。ここで感心したのは「望外に快適性が高い」ということ。確かに、全般的にサスペンションが強化された印象はあるものの、それでもヒョコヒョコとした動きが少なく、思いのほかフラット感が高かった。
走り始めてすぐに、「あれ? ノートってこんなにボディーがしっかりしていたかな?」と感じたが、あとで調べるとこのモデルにはやはり専用の補強が入っているとのこと。
同様に、ノーマルモードDレンジでの加速感の良さに「ノートe-POWERって、こんなにシャープに加速したっけ?」と記憶をたどってみたが、こちらも発電用エンジンの回し方を含めて、NISMOモデル専用の制御ロジックが入れられていることが判明した。
というわけでこのノート、フットワークの強化やボディーキットの採用だけではなく、「シリーズハイブリッドシステムの持ち主だからこそできる、パワーユニットのスペシャルチューニング」が、この上ない好印象を与えてくれたようだ。
「電気自動車のまったく新しいカタチ」って、それって「排ガスの出る電気自動車じゃん!」と、そのプロモーション方法には納得がいかないところがある。
けれども“新しいドライビングの楽しさ”という視点で見ると、こちらはなかなかのポテンシャル。そんなことも発見させられた氷上・雪上イベントだった。
(文=河村康彦/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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