第792回:【Movie】「パンダ」の“国民車化”がここでも証明! イタリア中古車販売最前線
2023.01.26 マッキナ あらモーダ!フィアットの中古車
イタリアで中古車の販売状況を示す名義変更数は2022年に272万5019台を記録し、303万3816台だった2021年と比較して10.2%の減少となった。しかし割合でみると、新車登録台数を100とした場合に中古車の名義変更は204となり、依然堅調であることが分かる(データ出典:ACI)。
特にフィアットの地位は盤石だ。ユーズドカー検索サイト『アウトヒーロー』によれば、2022年の中古車市場におけるフィアット車の占有率は13%と、2位のフォードおよびフォルクスワーゲン(7%)の2倍近くになっている。
今回登場願ったのは、イタリア・トスカーナ州のステランティス系販売店、スコッティで働く知人のアンドレア氏である。1970年生まれの彼は、1997年に自動車販売の道に入って以来26年、ランチア、アルファ・ロメオ、そしてフィアットの新車を担当してきた。
その彼が2022年秋、異動となった。新しい職場は、屋内型の認定中古車センターである。従来は新車ショールームの一角や数km離れた屋外展示場に分散されていた施設を1カ所にまとめてオープンしたものだ。事実上、中古車部門の主任となったアンドレア氏は、ひとまわり若いヤコポ氏と店内を仕切る。
動画ではアンドレア氏に、イタリア中部トスカーナ州における中古車マーケットの現状を語ってもらった。彼が語るとおり、ここ数カ月の在庫不足は顕著だ。半導体不足で新車の供給が円滑に行われないため、すぐに車両を必要とするユーザーが中古車を求めるからである。そのため、一般的な中古車はもとより、未使用車、すなわち日本でいう新古車に相当する「0km車」も足りなくなっている。また、メーカーや販売店が社員に新車で貸与した、いわゆるカンパニーカーの中古は、消費者のニーズとなかなか合致しない。詳しい理由は動画をご覧いただこう。
参考までにステランティスは欧州各国で「Spoticar(スポティカー)」と名づけた中古車ブランドをスタートさせている。ウェブサイトでは、グループ内各ブランドのモデルを中心に、全国の旧FCA系・旧グループPSA系販売店にある在庫を横断的に検索することができる。「満足できない場合、10日以内なら返品可能」も大きな売りだ。もちろん、アンドレア氏とヤコポ氏の店もネットワークにつながっている。
動画では、現在ショールームにあるクルマもご覧いただける。ところで、前述のアウトヒーローによれば、2022年にイタリアで最も売れた中古車は「フィアット・パンダ」で、2位は同じフィアットの「500」、3位は「ルノー・クリオ」だった。
それを物語るかのように、彼らの展示場にもパンダは、納車待ちブースに1台があるのみだった。実際にアンドレア氏も「パンダが足りない!」と悲鳴を上げる。同車は、2022年の新車の国内登録台数でも1位。もはやイタリアにおける国民車の地位は不動であることを、この中古車センターからも察することができた。
【イタリアの最新中古車事情】
(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=Akio Lorenzo OYA、ステランティス/動画=大矢麻里<Mari OYA>/編集=藤沢 勝)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの 2025.10.16 イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。
-
第931回:幻ですカー 主要ブランド製なのにめったに見ないあのクルマ 2025.10.9 確かにラインナップされているはずなのに、路上でほとんど見かけない! そんな不思議な「幻ですカー」を、イタリア在住の大矢アキオ氏が紹介。幻のクルマが誕生する背景を考察しつつ、人気車種にはない風情に思いをはせた。
-
第930回:日本未上陸ブランドも見逃すな! 追報「IAAモビリティー2025」 2025.10.2 コラムニストの大矢アキオが、欧州最大規模の自動車ショー「IAAモビリティー2025」をリポート。そこで感じた、欧州の、世界の自動車マーケットの趨勢(すうせい)とは? 新興の電気自動車メーカーの勢いを肌で感じ、日本の自動車メーカーに警鐘を鳴らす。
-
第929回:販売終了後も大人気! 「あのアルファ・ロメオ」が暗示するもの 2025.9.25 何年も前に生産を終えているのに、今でも人気は健在! ちょっと古い“あのアルファ・ロメオ”が、依然イタリアで愛されている理由とは? ちょっと不思議な人気の理由と、それが暗示する今日のクルマづくりの難しさを、イタリア在住の大矢アキオが考察する。
-
第928回:「IAAモビリティー2025」見聞録 ―新デザイン言語、現実派、そしてチャイナパワー― 2025.9.18 ドイツ・ミュンヘンで開催された「IAAモビリティー」を、コラムニストの大矢アキオが取材。欧州屈指の規模を誇る自動車ショーで感じた、トレンドの変化と新たな潮流とは? 進出を強める中国勢の動向は? 会場で感じた欧州の今をリポートする。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。