水素エンジンも燃料電池も関係ない! 水素ジドーシャに未来がないこれだけの理由
2023.02.10 デイリーコラムデンキのまま使ったほうがよくない?
覚えている人はあまりいないかもしれないが、東京2020オリンピック・パラリンピックは、水素社会の実現に向けた一大セレモニーになるはずだった。実際に聖火台や聖火トーチには水素が使われ、選手村の移動等には燃料電池バスが使われたりしたが、それで「水素社会の実現が間近になった!」と感じた人は多くはないだろう。
東京オリンピックの招致が決まった2013年頃、水素はまだ「カーボンフリーエネルギーの超有力&最終兵器!」と認識されていたが、あれから10年。水素への期待はかなりしぼんでいる。なかでも、乗用の燃料電池車の普及は、もはや誰も期待していないような気がする。先日はホンダが「水素事業の拡大」と銘打った発表を行ったが、中身を見ると、「乗用車はもうムリなので、トラック、定置電源、建設機械に活路を見いだします」ってことだろうなと推測できた。
思えば、トヨタの初代「ミライ」が発売されたのは、2014年だった。その時点ですでに私は、「ミライに未来はないかもしれない」と感じていた。なにせ水素というヤツは、使い勝手が悪い。しかも、当時も今も、水素の製造方法は多くが天然ガス経由だ。「いずれは太陽光や風力で発電した電力を使い、水の電気分解でクリーンに!」ではあるのだが、それなら電気のまま使ったほうが、効率がいいに決まってる。
特に日本の場合は、自然エネルギー経由の発電量が伸びる余地が小さいこともあり、ムダなく電気のまま使ったほうが絶対いいんじゃないか? 日本でグリーンな水素を大量に作るのは難しいから、オーストラリアで作って運びましょう、みたいな計画も、タンカーで水素を運ぶとなると、高圧で圧縮するか、超低温で液化するか、さもなくばアンモニアに変換して運ぶかしなければならない。このなかではアンモニア変換が一番効率がいいようですけど、いずれにせよ余計なエネルギー&コストが必要になる。
なんとか頑張ってグリーン水素を日本まで持ってきても、貯蔵、配送、供給がまた難題だ。難題を乗り越えるたびにエネルギー効率は落ち、コストは上がる。水素ステーションを全国に何千カ所も作るなんて、夢のまた夢。需要がないものを誰が作りますか!
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
カーボンフリー化自体がムズすぎる!
取りあえず、燃料電池で走る乗用車の普及は、もはや期待値ゼロ。現在の希望は、ホンダの言うとおりトラックや定置用、そして建設機械ということになるのでしょうが、それもどこまで進むか……。バッテリー革命が起きれば、それらの分野も水素を介する必要がなくなる可能性がある。
近い将来、水素は「扱いの難しい金食い虫」として、忘れ去られるのかもしれない。少なくとも今のところ、水素ステーションの拡充よりも、高速道路のSA・PAに電気自動車(EV)用の高性能急速充電器を増設したほうが、誰が考えたって絶対役に立つだろう。
でもまぁ日本の場合、EVとハイブリッドカーのウェル・トゥ・ホイールでのCO2排出量は、現状ほとんどイーブン。EVに乗り換えれば地球に褒めてもらえるわけじゃないので、この辺への出資はどうしても動機が薄くなる。一方で、「日産フェアレディZ」や「ホンダ・シビック タイプR」が大人気で売り切れなんだから、逆方向に振れてる部分のほうが目についてしまう。
そもそも日本の場合、水素うんぬんじゃなく、カーボンフリー化自体が難題すぎる。太陽光も風力も、日本はあまりにも条件に恵まれていない。あああ~~~、もう考えるのが嫌になってくるぅ!
(文=清水草一/写真=トヨタ自動車、本田技研工業、webCG/編集=堀田剛資)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
F1で絶体絶命!? アストンマーティン・ホンダになにが起きているのか?NEW 2026.3.3 2026年のF1開催を前に、早くも苦戦が伝えられるアストンマーティン・ホンダ。プレシーズンテストでの大不振はなぜ起きたのか? ここから復活する可能性はあるのか? 栄光と挫折を繰り返してきたホンダが、ふたたびF1で輝くために必要なものを探った。
-
“エネマネ”時代に突入! 2026年のF1は「F1ではなくなる」のか? 2026.3.2 レギュレーションは大幅変更。ホンダがアストンマーティンと手を組み復帰を果たすF1の2026年シーズンは、どんな戦いになるのだろうか? 本番前のテストを経て開幕戦が近づいてきた今、その“見どころ”についてリポートする。
-
ホンダがBEV「スーパーONE」の情報を先行公開 「ブルドッグ」の再来といわれるその特徴は? 2026.2.26 ブリスターフェンダーが備わるアグレッシブなエクステリアデザインから、ファンが「シティ ターボII」の再来と色めき立ったホンダの新型電気自動車(BEV)「スーパーONE」。2026年中の発売がウワサされる最新BEVの特徴とホンダの狙いを解説する。
-
右も左もスライドドアばかり ヒンジドアの軽自動車ならではのメリットはあるのか? 2026.2.25 軽自動車の売れ筋が「ホンダN-BOX」のようなスーパーハイトワゴンであるのはご承知のとおりだが、かつての主流だった「スズキ・ワゴンR」のような車型に復権の余地はないか。ヒンジドアのメリットなど、(やや強引ながら)優れている点を探ってみた。
-
いつの間にやら多種多様! 「トヨタGRヤリス」のベストバイはどれだ? 2026.2.23 2020年のデビュー以来、改良が重ねられてきたトヨタの高性能ハッチバック「GRヤリス」。気がつけば、限定車を含めずいぶんと選択肢が増えている!? 現時点でのベストバイは一体どれなのか、工藤貴宏が指南する。
-
NEW
第330回:「マカン」のことは忘れましょう
2026.3.2カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。JAIA(日本自動車輸入組合)主催の報道関係者向け試乗会に参加し、「T-ハイブリッド」システムを搭載する「911タルガ4 GTS」とBEV「マカン ターボ」のステアリングを握った。電動化が進む最新ポルシェの走りやいかに。 -
NEW
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】
2026.3.2試乗記ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。 -
NEW
“エネマネ”時代に突入! 2026年のF1は「F1ではなくなる」のか?
2026.3.2デイリーコラムレギュレーションは大幅変更。ホンダがアストンマーティンと手を組み復帰を果たすF1の2026年シーズンは、どんな戦いになるのだろうか? 本番前のテストを経て開幕戦が近づいてきた今、その“見どころ”についてリポートする。 -
アルピーヌA110 R70(後編)
2026.3.1ミスター・スバル 辰己英治の目利き9年の歴史に幕を下ろそうとする、アルピーヌのピュアスポーツカー「A110」。“ミスター・スバル”こと辰己英治氏の目に、ディエップ流のスポーツカー哲学はどのように映るのか? スパルタンな「R70」の試乗を通し、その魅力が大いに語られた。 -
歴史に名を残す“ニッポンの迷車”特集
2026.3.1日刊!名車列伝風変わりなデザインや、聞きなれないモデル名。それでも自動車史に名を刻む、日本が生んだマイナー車を日替わりで紹介します。 -
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】
2026.2.28試乗記フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。





