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メルセデス・ベンツEQE350 4MATIC SUV(4WD)/EQE350+SUV(RWD)/EQE500 4MATIC SUV(4WD)

極上の無難 2023.04.05 試乗記 渡辺 慎太郎 先ごろ日本でもリリースされた「EQE」のSUVバージョン、その名も「メルセデス・ベンツEQE SUV」も、2023年内に上陸する予定だ。主力グレードになると目される「EQE350 4MATIC」を中心に、ひと足早くポルトガルでステアリングを握った。

コストのかかるBEV専用シャシー

いまのところ、BEVの作り方は主にふたつあって、ひとつは既存のモデルからコンバートするやり方、もうひとつはBEV専用のプラットフォームをこしらえるやり方である。メルセデス・ベンツはこれら両方を使って、気がつけば「EQA」「EQB」「EQC」「EQE」「EQS」「EQV」「EQT(商用バン)」「EQS SUV」それにEQE SUVとほぼすべてのモデルレンジのBEVを取りそろえるまでに至った。

このなかで、EQEとEQSとそれぞれのSUVの計4モデルは「EVA2」と呼ばれるメルセデスとしては初のBEV専用プラットフォームを共有している。EVA2を使った最初のモデルはEQSで、その時点で「このプラットフォームを共有するのは計4モデル」と公表されていたから、今回のEQE SUVで取りあえず打ち止めとなる。EVA2は最初に出てきたBEV専用プラットフォームのくせに、その名前に“2”と付いていることからも想像できるように、今後は“EVA1”やひょっとすると“EVA3”なんかも控えているかもしれない。

当然のことながら、BEV専用プラットフォームのほうが何かとコストはかかる。開発費はもちろん、対応可能な生産設備も用意する必要があるからだ。BMWもBEVを拡充しているものの、BEV専用プラットフォームを使うのは現時点で「iX」のみ。内燃機との共有のほうが開発時間も短縮できるし、とにかくいまは(あまりコストをかけずに)BEVの種類を増やそうという戦略だろう。だからメルセデスは、すでにずいぶん多額の投資をBEVに突っ込んでいることになる。「でもエンジニアリング的には専用プラットフォームのほうが何かと都合がいいですから」と胸を張る理由は、クルマを見れば納得する。

欧州各国では2022年末に受注が始まった「メルセデス・ベンツEQE SUV」。本国ドイツでのベース価格は8万3478.50ユーロ(約1207万円)から。
欧州各国では2022年末に受注が始まった「メルセデス・ベンツEQE SUV」。本国ドイツでのベース価格は8万3478.50ユーロ(約1207万円)から。拡大
ヘッドランプとグリル(に相当するパネル)が有機的に結びついた「EQシリーズ」特有のフロントマスク。「EQE」よりもキリッとした面構えだ。
ヘッドランプとグリル(に相当するパネル)が有機的に結びついた「EQシリーズ」特有のフロントマスク。「EQE」よりもキリッとした面構えだ。拡大
ワンボウ(一筆書きで書いた弓)フォルムを掲げていた「EQE」や「EQS」の未来的なスタイリングと比べるとスタンダードなSUVらしいフォルムだ。
ワンボウ(一筆書きで書いた弓)フォルムを掲げていた「EQE」や「EQS」の未来的なスタイリングと比べるとスタンダードなSUVらしいフォルムだ。拡大
ローンチ時のラインナップは「EQE300」「EQE350+」「EQE350 4MATIC」「EQE500 4MATIC」の全4タイプ。
ローンチ時のラインナップは「EQE300」「EQE350+」「EQE350 4MATIC」「EQE500 4MATIC」の全4タイプ。拡大
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空力にこだわるメルセデス

EQE SUVのCd値は0.25。これは、SUVのカタチのモデルとしてはトップレベルの数値である。ちなみに同じ0.25のCd値を持つメルセデスは「Aクラス」(「Aクラス セダン」は0.22)などがある。コンパクトな5ドアハッチバックと同等のCd値を全高が1686mmもあるSUVで成し遂げているわけで、これは専用のプラットフォームとそれにかぶさっているボディーによるところが大きい。例えばエンジンコンパートメントに収まる臓物は、トランスミッションや排気系などが必須の内燃機よりもそれらがないBEVのほうがずっとコンパクトなので、ボンネットを小さくしたり大きくスラントさせたりできる。逆に言えば、内燃機からコンバートしたBEVは、エンジンルームがかなりスカスカのまま放置されていることになる。

メルセデスはこれまでもCd値に関しては並々ならぬこだわりを見せてきた。現在の量産車でのCd値トップはEQSの0.20だし、EQSに首位の座を譲ったのは現行の「Sクラス」(0.22)だった。メルセデスは特にBEVでの空力の重要性を力説する。主な理由はふたつ。ひとつは、内燃機仕様よりも静かなBEVでは風切り音が際立ってしまい、それを軽減できるから。もうひとつは航続距離の上乗せである。事実上、BEVのほとんどがホイールベース=バッテリー搭載量=航続距離となっているわけで、さらに航続距離を増やす方法として空力の向上に積極的に取り組んでいる。例えば、前後フェンダーの9時の位置にある黒いスポイラー。彼らはこれを「ナインオクロックスポイラー」と呼び、これだけで航続距離が8kmも増えたという。このほかにも、ボディーやアンダーボディーの至る所に“ちりも積もれば”の要領で、航続距離アップのさまざまな空力対策が施されている。

空気抵抗を示すCd値は大型のSUVとしては異例に低い0.25。ボディーとボンネットの隙間には徹底して目張りがされるほか、前後フェンダーの前方にはコンパクトなスポイラーが装着される。
空気抵抗を示すCd値は大型のSUVとしては異例に低い0.25。ボディーとボンネットの隙間には徹底して目張りがされるほか、前後フェンダーの前方にはコンパクトなスポイラーが装着される。拡大
ダッシュボードのディスプレイ以外の場所には小さなスリーポインテッドスターがちりばめられる。パッセンジャーディスプレイが加わり、ドライバー側も含めて一枚ガラスで覆われる「MBUXハイパースクリーン」はオプションで選べる。
ダッシュボードのディスプレイ以外の場所には小さなスリーポインテッドスターがちりばめられる。パッセンジャーディスプレイが加わり、ドライバー側も含めて一枚ガラスで覆われる「MBUXハイパースクリーン」はオプションで選べる。拡大
シートの背もたれは肩の部分までフラットになった独特の形状。ボディーの高さがあるため「EQE」よりもグッと開放感がある。
シートの背もたれは肩の部分までフラットになった独特の形状。ボディーの高さがあるため「EQE」よりもグッと開放感がある。拡大
後席の広さはご覧のとおり。シャシーの下部がフラットになったBEVでありながら、床面と座面との高低差をしっかりと稼ぎ出しているのはさすが。
後席の広さはご覧のとおり。シャシーの下部がフラットになったBEVでありながら、床面と座面との高低差をしっかりと稼ぎ出しているのはさすが。拡大

ホイールベースをセダンから短縮

EQE SUVの現時点におけるラインナップは、「EQE300」「EQE350+」「EQE350 4MATIC」「EQE500 4MATIC」の4タイプで、日本へは年内にEQE350 4MATICがやってくる予定とのこと。今回は日本仕様と目されるEQE350 4MATICに加えて、参考までに後輪駆動でコンベンショナルなサスペンションのEQE350+と最もパワフルなEQE500 4MATICに試乗した。

EQE SUVの特徴のひとつが、セダンのEQEよりも90mm縮めたホイールベースである。EQS とEQS SUVは同じホイールベースなのにEQE SUVでわざわざ短くしたのは主に操縦性の向上、つまりさらによく曲がるようにしたかったそうだ。ここで不思議なのは、ホイールベースを短くしたにもかかわらず、バッテリー容量がセダンと同じ90.6kWhを維持している点だ。実はセダンのバッテリーはホイールベースぎりぎりまで積んでおらず若干スペースに余裕があり、だからホイールベースを縮めてもバッテリー容量を減らす必要がなかったそうだ。手品のように、種明かしは至って単純なものだった。

EQE350 4MATICのパワースペックは292PS/765N・mで、車名が示すように前後に永久磁石同期モーターを置いて4輪を駆動する。一充電走行距離はWLTPモードで460~551kmと公表されている。試乗車にはオプションのエアサスペンションと後輪操舵が装着されていた。実は最初に試した個体の印象があまり芳しくなく、「こんなもんなのかなあ」と思いつつ念のため別の個体にも試乗したらそっちが本来の姿であった。

ボディーサイズは全長×全幅×全高=4863×1940×1686mmで、ホイールベースは「EQE」よりも90mm短い3030mm。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4863×1940×1686mmで、ホイールベースは「EQE」よりも90mm短い3030mm。拡大
各スポークが2分割されたステアリングホイールはオプションの「AMGラインパッケージ」に含まれている。静電容量式センサーを内蔵するリムは極太。
各スポークが2分割されたステアリングホイールはオプションの「AMGラインパッケージ」に含まれている。静電容量式センサーを内蔵するリムは極太。拡大
インフォテインメントシステムには使い込むにつれてよく使う項目が上の階層に表示されるようになる学習機能付き。
インフォテインメントシステムには使い込むにつれてよく使う項目が上の階層に表示されるようになる学習機能付き。拡大
ドライブモードは「エコ」「コンフォート」「スポーツ」「インディビジュアル」「オフロード」の全5種類。
ドライブモードは「エコ」「コンフォート」「スポーツ」「インディビジュアル」「オフロード」の全5種類。拡大

前輪をフリーにする新機軸も

このクルマ、一体何と比較したらいいのか正直迷うところである。全般的にゆったりとしたEQS SUVよりもキビキビしているけれど、それはボディーサイズが違うのだから当たり前だし、EQEのセダンよりもホイールベースが短いぶんだけすっごくよく曲がるようになったわけでもない。かといって「GLE」とはやっぱりずいぶん違うところにいるクルマである。

走る曲がる止まるの性能で「おや?」と感じる部分はほとんどなかった。BEVでもメルセデスの流儀が貫かれていて、基本的には安定志向の味つけである。直進安定性はよく、ステアリング操作に対する応答性は極めて従順であり、ターンインからのばね上の動きも見事にコントロールされていて、いったん旋回姿勢が決まれば盤石な安定感を示す。ステアリング系やボディーなど各部の剛性感の高さも好印象だった。EQE350+はコンベンショナルなサスでもごく低速から高速域までほどよい乗り心地と正確なハンドリングを両立させていて、こういうクルマはたいていの場合、ボディーやシャシーの素性がいい。エアサスでもコンベのサスでも一定の性能が出せるのは、これこそ専用プラットフォームの恩恵だろう。

EVA2を使うモデルとしては初めて、このクルマにはフロントにドグクラッチを設け、状況に応じて前輪をフリーにする(=後輪駆動の2WDになる)機構が備わった。これもまた航続距離の延長にひと役買っているという。だったら最初のEQSから付けなさいよとも思ったけれど、今後順次導入していくそうだ。ちなみに4WDと2WDが切り替わる瞬間はまったく分からなかった。

EQE500は少々パワフル過ぎて、オーバースペックのような気がした。一番バランスがいいのはEQE350 4MATICだと思う。ありていに言えば無難な仕上がりだが、細部まで計算し尽くされている“極上の無難”とも言えるかもしれない。こういう乗り味をBEVでつくるのが本当は一番難しかったりするのである。

(文=渡辺慎太郎/写真=メルセデス・ベンツ/編集=藤沢 勝)

前後に駆動用モーターを搭載する「EQE350 4MATIC」は最高出力292PSと最大トルク765N・mを発生。0-100km/h加速のタイムは6.6秒。
前後に駆動用モーターを搭載する「EQE350 4MATIC」は最高出力292PSと最大トルク765N・mを発生。0-100km/h加速のタイムは6.6秒。拡大
荷室の容量は520~1675リッター。
荷室の容量は520~1675リッター。拡大
最大で10度まで切れるリアアクスルステアリングがオプション設定されている。これを装着した場合の最小回転直径は10.5m(12.3mがスタンダード)と小型ハッチバック並みになる。
最大で10度まで切れるリアアクスルステアリングがオプション設定されている。これを装着した場合の最小回転直径は10.5m(12.3mがスタンダード)と小型ハッチバック並みになる。拡大
フェンダーの前方に設けられた「ナインオクロックスポイラー」。
フェンダーの前方に設けられた「ナインオクロックスポイラー」。拡大
駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は90.6kWh。最大で出力170kWまでの急速充電に対応している。
駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は90.6kWh。最大で出力170kWまでの急速充電に対応している。拡大
メルセデス・ベンツEQE350 4MATIC SUV
メルセデス・ベンツEQE350 4MATIC SUV拡大

テスト車のデータ

メルセデス・ベンツEQE350 4MATIC SUV

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4863×1940×1686mm
ホイールベース:3030mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:永久磁石同期モーター
リアモーター:永久磁石同期モーター
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:292PS(215kW)/--rpm
システム最大トルク:765N・m(78.0kgf・m)/--rpm
タイヤ:(前)--/(後)--
交流電力量消費率:22.5-18.6kWh/100km(WLTPモード)
一充電走行距離:460-551km(WLTPモード)
価格:--円

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

メルセデス・ベンツEQE350+SUV
メルセデス・ベンツEQE350+SUV拡大

メルセデス・ベンツEQE350+SUV

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4863×1940×1686mm
ホイールベース:3030mm
車重:--kg
駆動方式:RWD
モーター:永久磁石同期モーター
最高出力:292PS(215kW)/--rpm
最大トルク:565N・m(57.6kgf・m)/--rpm
タイヤ:(前)--/(後)--
交流電力量消費率:21.7-17.5kWh/100km(WLTPモード)
一充電走行距離:484-596km(WLTPモード)
価格:--円

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

メルセデス・ベンツEQE500 4MATIC SUV
メルセデス・ベンツEQE500 4MATIC SUV拡大

メルセデス・ベンツEQE500 4MATIC SUV

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4863×1940×1686mm
ホイールベース:3030mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:永久磁石同期モーター
リアモーター:永久磁石同期モーター
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:408PS(300kW)/--rpm
システム最大トルク:858N・m(87.5kgf・m)/--rpm
タイヤ:(前)--/(後)--
交流電力量消費率:22.5-18.8kWh/100km(WLTPモード)
一充電走行距離:464-552km(WLTPモード)
価格:--円

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

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