第742回:お楽しみはクルマを買ってから! スバル独自のサービス「e-Tune」「SUBAROAD」の魅力と狙い
2023.04.06 エディターから一言 拡大 |
スバルが独自に開発したユニークなドライブアプリ「SUBAROAD(スバロード)」と、新たにスタートさせた電子制御サスペンションのアップデートサービス「e-Tune」。スバルの新しい挑戦が生んだ2つのサービスを体験し、その狙いを探った。
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クルマを購入した“後”に楽しめるサービス
突然だが、皆さんはスバロードなるアプリをご存じだろうか? スバルが2021年12月にリリースしたスマートフォン向けのアプリだ。運転を楽しめるワインディングロードや観光スポットを組み合わせたドライブコースを提供するもので、現在は「伊豆」の3コースと「広島」の2コース、そして「千葉/房総」「群馬」「奥多摩」「淡路島」「和歌山」の全10コースが用意されている。利用は無料で、実はスバルオーナーじゃなくても利用は可能だ。
ではe-Tuneはどうか? こちらは「レヴォーグ」の「STI Sport」系のグレードを対象とした電子制御ダンパーのソフトウエアアップデートプログラムのこと。今年(2023年)の東京オートサロンで発表され、このたび晴れてサービスが開始された。正式名称は「スバルActive Damper e-Tune」である。同車に搭載される「ドライブモードセレクト」の「Comfort」と「Sport」の減衰力特性を変更するというもので、Comfortはよりリラックスしてゆったり走れるようになり、Sportはより操縦安定性が高まる。ディーラーでの販売・施行となり、費用は工賃込みで約4万円である。
どちらも、スバル車を“購入した後”に楽しめるサービスだ。今回はその魅力を実感すべく、1.8リッターターボの「レヴォーグSTI Sport」を駆って、春の千葉/房総を1日ドライブしてみた。
「まじでここ曲がるの?」という驚きのルート案内
まず体験したのはスバロード。千葉/房総コースのスタート地点となったのは「道の駅木更津うまくたの里」であった。スタート前に、走行中に流す音楽のいくつかを選べるようになっている。房総ということもあってか、千葉出身の気志團の楽曲も用意されている。最新の音楽もあるけれど、懐メロのようなものもあるのが、おじさんにはちょっとうれしいポイントだ。
なんとなく曲を選んで、いよいよスタート! スバロードはいわゆるカーナビアプリなのだけれど、おおむねではあるがルートがあらかじめ決まっている。つまり目的地設定もなにもなく、スタートしたらアプリの示すルートを走るだけなのだ。
で、走りだしてすぐに驚いた。「えええ! まじで、ここを曲がるの?」という脇道に入っていくのだ。次の目的地を思えばあきらかに遠回りであるし、さらに道幅も狭い。しかし、そのまま進むと気づくのだ。「景色がいいねえ」と。山に湖、花に緑、トンネルや橋など、次々に新しいシチュエーションが現れる。加えて、クネクネと曲がり、しかもアップダウンのある道も多い。運転の楽しい道を選んでいるのだ。
そして運転を楽しんでいると、要所要所で最初に選んでおいた音楽が自動で流れてゆく。また、ときどき最寄りにある観光スポットの豆知識をアプリがしゃべってくれて、これもドライブを飽きさせない。ちなみにスバルの担当者いわく「同じルートでも季節が違えば景色も変わります」とのこと。四季折々の自然の変化も楽しめるというわけだ。
実のところ、筆者は撮影や試乗などで、房総半島は相当に走りまわっている。しかし今回のスバロードのルートは、知らない道や初めての観光スポットも多く、なかなかに新鮮な気分で走ることができた。ドライブコースのひとつとしてこのアプリを活用するのは大いにアリだろう。そもそも無料なんだから、逆に使わないほうが損な気までしてくる。
不満を言えば、コースが10しかないということ。もっともっと収録されるコースが増えることを期待したい。
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有志による調査から3年をかけてローンチ
「そもそもの始まりとなったのは、2018年ごろに行われた有志の調査です。リリースまで3年ほどもかかっています」。そう説明するのは、スバロードの開発に携わった将来ビジネス企画開発グループの田原春江さんだ。新サービスの開発に際し、最初にファンの詳しい調査を行い、特に「どういうきっかけでスバルファンになったのか?」「なにが楽しいのか?」などを詳細に調べたという。
「そこでわかったのですが、スバルを何台も乗り継いでいる人は『ハンドルを握っている、スバル車内での時間が一番楽しい』と言うんです。そのため、『自分で道を探したい』と。それを聞いてハッとしたんですね。私たちは、そういう機会を提供できていなかったと。そこでスマートフォンアプリを使って勝負しようとなりました」
アフターセールスの領域では、スバルと顧客との接点が少ない。そのためスマートフォンを使ってコミュニケーションを強化し、新たなスバルファンを獲得しようというのがスバロードの狙いだったのだ。ちなみに、将来的にはスマホだけでなく車載カーナビでもサービスを提供したいとのこと。いきなり車載機器用のサービスを開発すると、膨大な予算と時間がかかる。そのため、スマートフォンアプリからスタートしたという。
今はまだスバロードの利用者は少ないというが、一方で使った人の評判は相当に高いらしい。今後の発展に期待したいサービスといえるだろう。
“まっぷたつ”のユーザーの声に同時に応える
旅の後半では、房総半島のワインディングロードでe-Tuneも試せた。午前中にノーマルのレヴォーグSTI Sportで走り、午後にe-Tuneを施したクルマに乗り換えたのだ。
正直なところ、試す前は「変化が体感できるのかな?」と不安に思っていた。ところが実際に試してみれば、その差は歴然としていた。Comfortモードは、あきらかに減衰が緩くなっており、逆にSportはハッキリと締め上げられていた。
ドライブモードセレクトでサス設定をComfortにすると、段差などを越えるときの入力をより上手にいなすようになる。ただし、クルマの揺れが収まるのにも時間がかかる。ユラユラと揺れが大きくなるのだ。一方Sportでは、入力を許容しつつもダンパーの“伸び側”がより強く抑えられている。段差のショックは小さいけれど、ロールが少なくなり、ハンドルの応答はよりタイトになるのだ。
とはいえ、「ずいぶんと両極端に振ったな」というのが正直な感想だ。個人的にはComfortはちょっとユルすぎるし、逆にSportは硬すぎる。逆に言えば、ノーマルのComfortとSportは、快適性とハンドリングのバランスが非常によかったのだなと再認識した格好だ。もちろん、ノーマルに飽き足りない人に向けて、“もう一段階先”を提供するのがe-Tuneの狙いであるならば、これも当然のことなのだろう。
「レヴォーグの初期ユーザー調査をすると、スバル車からレヴォーグに乗り換えた方と、他メーカーから流入された方で意見がまっぷたつに分かれてしまったんです」。そう語るのは、e-Tune導入の担当者であるスバルの国内部品部 部品営業課の金井 達さん。要するに、スバル車からの乗り換えユーザーからは「足まわりをもっと硬くしたい」という要望が、他メーカーからの流入ユーザーからは「乗り味をもっとソフトにしてほしい」という要望が寄せられたのだ。Sportをさらに硬く、Comfortをさらに柔らかくしたのは、これらユーザーの声に同時に応えた結果であった。
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新しいアイデアがクルマをもっと楽しくする
「もともと『新しいアクセサリービジネスはないのか?』と考えていたときに、(電制サスのサプライヤーである)ZFさんから提案がありました。ソフトウエアアップデートのサービスを、まずサスペンションからやるというのもスバルらしいなと思いますね」というのは、同じく担当者であるアクセサリー企画部企画推進グループの宮下裕次さん。
ちなみにe-Tuneには、その装着を知らしめる専用バッジが用意されている。この必要性を強く主張したのは金井さんであり、当初は「左右のフェンダーとリアの3カ所を提案しましたが、さすがに3つはダメでした(笑)」と言う。また“なんちゃって仕様”を防ぐため、「簡単に偽物のバッジができないよう、カラーの部分は地に基盤の回路を模した、細いシルバーの印刷を行っています」(宮下さん)とのことだった。
また、e-Tuneは7000~8000円程度の工賃のみでノーマル仕様に戻すこともできる。これは中古車で買った人がノーマルに戻すことや、「変えてみたけど、やっぱり元に戻したい」というニーズを想定してのこと。そしてその場合は専用バッジは取り外すことをルールにしているという。
どんなクルマでも「もうちょっと足を硬く&柔らかくしたい」と思うことはあるはず。それがソフトウエアの書き換えだけで済むという手軽さこそがe-Tuneの魅力だろう。また、元の状態に戻すのも安価で簡単というところもうれしい。
アプリに電制サスペンションのアップデート。どちらもアフター向けの、買った後の楽しさを意図したサービスであり、そしてどちらも、試してみれば非常に魅力のわかりやすいものだった。今後はこうしたサービスが、どんどんと増えてゆくに違いない。スバルはもちろん、各メーカーからどんなアイデアが出てくるか、非常に楽しみである。
(文=鈴木ケンイチ/写真=webCG、スバル/編集=堀田剛資)
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鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
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