トヨタ・ハリアーZ プラグインハイブリッド(4WD/CVT)
やっぱりこのクルマがないと! 2023.05.24 試乗記 根強い人気を誇るトヨタの高級SUV「ハリアー」に、93kmのEV走行距離を実現したプラグインハイブリッド車(PHEV)が登場。パワフル&ちょっとコワモテな電動SUVは、実際に運転してみると、日常系クロスオーバーの王道をゆくマジメなクルマに仕上がっていた。実はこれが初取材
記者は、2022年7月の新型「クラウン」発表会(参照)を現場で取材したひとりなのだが、あのときふと思ってしまったのだ。「……あれ? これ、もうハリアーいらなくない?」。
もちろん、ロジカルにあれこれ考えたわけではない。ブランディングもありましょう。価格の違いもありましょう。しかし、同じトヨタのラインナップに、同じ「GA-Kプラットフォーム」の同じようなサイズの都市型クロスオーバーが、果たして2台も必要なのか?
……なんでこんなことを思い出したかというと、目の前にいるのだ、ハリアーが。2022年9月発表、同年10月発売の(参照)、その名も「ハリアーZ プラグインハイブリッド」である。「え、いまさらハリアーPHEVのリポート?」と思った御仁は、webCGの過去記事をご覧あれ。登場は半年も前のおクルマだが、実は試乗リポートはこれが初。理由は、取材したくてもずっと乗れるクルマがなかったからだ。「天下のトヨタが、発売から半年以上も人気車種の試乗車を確保できないなんて」と、サプライチェーンの混乱と半導体不足の影響を実感していた次第である。それもまぁ、今は解消されつつあるようですが。
そんなわけで、久々に見(まみ)えた現行型ハリアーだが、まじまじ見ると結構攻めたデザインをしている。薄いアッパーグリルに切れ長のヘッドランプは、SUVのお約束からかけ離れたものだし、サイドビューの抑揚も意外としっかりつけられている(特にリアタイヤまわり)。横一文字のリアコンビランプも、こんなに上下を絞って突き出していたとは。街なかでフツーに見かけるクルマなので気にしていなかったけれど、あらためて見ると、なんというか結構スゴい。
一方で、PHEVならではのお化粧については意外と控えめ。同日に取材した「プリウスPHEV」もそうだったので、もう「PHEVは特別なクルマ!」という時代ではないのでしょう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
さすがはHEVのパイオニア
しょうみ50分という限られた時間での取材だったので、観察もそこそこにさっそく出発する。操作性に特別なところはない。よくあるPHEVのそれだ。選べる走行モードは、バッテリーの電気で走る「EVモード」、普通のハイブリッド車(HEV)みたいに走る「HVモード」、EV走行とHV走行を自動で切り替える「AUTO EV/HVモード」の3種類が基本で、「EV/HVモード切替スイッチ」を長押しすると、エンジンで発電しながら走る「バッテリーチャージモード」に入る。シフトセレクターは今や懐かしのレバー式で、「プリウスもクラウンも、これでいいのになぁ」なんてあらためて思ってしまった。
走りだしは存外に穏やかだ。最初は「そりゃHEVの『Z』より200kgも重いんだもんな」と思っていたのだが、あらためてカタログを見ると、PHEVはフロントモーターのパワー/トルクが高められていて、システム出力も306PSとマッチョになっている。実際、ドライブモードを変えれば、アクセルペダルをがばちょと踏めば、結構な加速を見せてくれるので(といっても電動車としては驚くほどではないが)、ノーマル状態でのたおやかな走りは、意図的になましたものなのだろう。
その印象を助長するのがパワートレインのスムーズさで、滑らかな転がり感(……といって伝わるでしょうか? 電動車のなかには、EV走行時にクロカンのローレンジみたいな抵抗感を伴うものもあるんですよ)や、アクセルオフ時の唐突感のなさ、穏やかな制動のかかり具合など、とにかくすごく吟味されている。走行モードを変えてわざとエンジンを回してみても、その音・振動はきっちり抑え込まれていて、せいぜい「あぁ、今エンジンかかったね」と気づく程度だった。こうしたあたりは、さすがHEVのパイオニア。上から目線で恐縮ですが、やっぱりトヨタには一日の長があると思う。
乗り心地も、少なくとも走行がかなった横浜かいわいの下道では、まさに快適至極。段差を超えても、交差点をくいっと曲がってみても、とにかく気になるトコロがない。Kカメラマンともども全身全霊でアラを探してみたのだが、それでも「ちょっとピッチングが大きい? ……いや、気のせいかも」といった具合で、結局ハリアーが馬脚を現すことはなかった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
日常系クロスオーバーかくあるべし
……といった感じで、ハリアーのPHEVは全方位的にそつのない、よくできたおクルマだった。まぁドライブフィールにマニアックな感動はないけれど、だからダメ! という話でもないでしょう。そもそも、日常系のクロスオーバーって、そういうクルマだったじゃない。目くるめく加速や感動のハンドリングなんていらんがな。なんでもない日常を快適に、ちょっといい気分で過ごさせてくれることが大事なわけで、このハリアーなら、それを高いレベルでこなしてくれそうな気がする。
そして、ここで冒頭の疑問に戻る&翻意するわけである。やっぱりこれからも、トヨタの都市型クロスオーバーにハリアーは必要だよなぁと。まだ見ぬ「スポーツ」を含むクラウン系のそれは、やたらと走りに一家言あるクルマばかりになりそうだし、昔ながらのトヨタっぽい、「ザ・中庸」な上級SUVは、これからも存在感を示し続けるに違いない。
見た目はちょっと兄ちゃん系だけど、実はマジメで優しいクルマ。……なんて書いたらトヨタの関係者から「営業妨害だ!」って怒られるかしら? でも本当にそんな感じがしたのですよ。ちょっとデザインはいかついですが、普通に「いいSUVないかしら?」と探している人、オススメです。
(文=webCGほった<webCG”Happy”Hotta>/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
拡大 |
【スペック】
全長×全幅×全高=4740×1855×1660mm/ホイールベース=2690mm/車重=1950kg/駆動方式=4WD/エンジン=2.5リッター直4 DOHC 16バルブ(最高出力:177PS/6000rpm、最大トルク:219N・m/3600rpm)/フロントモーター=交流同期電動機(最高出力182PS、最大トルク270N・m)/リアモーター=交流同期電動機(最高出力54PS、最大トルク121N・m)/燃費=20.5km/リッター(WLTCモード)/充電電力使用時走行距離=93km/価格=620万円
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆トヨタのミッドサイズSUV「ハリアー」でプラグインハイブリッド車が選択可能に
◆トヨタ・ハリアー ハイブリッドZ“レザーパッケージ”(FF/CVT)【試乗記】
◆トヨタ・プリウスZ プラグインハイブリッド(FF/CVT)【試乗記】

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
-
スズキDR-Z4S(5MT)【レビュー】 2026.1.7 スズキから400ccクラスの新型デュアルパーパスモデル「DR-Z4S」が登場。“Ready 4 Anything”を標榜(ひょうぼう)するファン待望の一台は、いかなるパフォーマンスを秘めているのか? 本格的なオフロード走行も視野に入れたという、その走りの一端に触れた。
-
三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.1.6 「三菱デリカミニ」がフルモデルチェンジ。ただし、先代のデビューからわずか2年で……という期間も異例なら、見た目がほとんどそのままというのもまた異例だ。これで中身もそのままならさらに異例だが、こちらは逆に異例なほどの進化を遂げていた。
-
スズキ・クロスビー ハイブリッドMZ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.1.5 デビューから8年を迎え、大幅な改良が施された「スズキ・クロスビー」。内外装に車体にパワートレインにと、全方位的に手が加えられた“AセグメントSUVの元祖”は、フォロワーであるダイハツ・トヨタ連合のライバルとも伍(ご)して戦える実力を獲得していた。
-
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】 2025.12.30 ホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。といってもただのリバイバルではなく、ハイブリッドシステムや可変ダンパー、疑似変速機構などの最新メカニズムを搭載し、24年分(以上!?)の進化を果たしての見事な復活だ。果たしてその仕上がりは?
-
ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECHリミテッド【試乗記】 2025.12.27 マイナーチェンジした「ルノー・キャプチャー」に、台数200台の限定モデル「リミテッド」が登場。悪路での走破性を高めた走行モードの追加と、オールシーズンタイヤの採用を特徴とするフレンチコンパクトSUVの走りを、ロングドライブで確かめた。
-
NEW
第54回:18年目の大改良! 奇跡の不老不死ミニバン「デリカD:5」のナゾ
2026.1.11小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ三菱のオールラウンドミニバン「デリカD:5」が2025年末にまたも大幅改良を敢行。しかもモデルライフが10年をとっくに過ぎた2024年に過去最高の台数が販売されたというのだから、いったい現場で何が起きているのか。小沢コージが開発者を直撃! -
NEW
フェラーリ12チリンドリ(前編)
2026.1.11思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。その名が示すとおり「12気筒」=6.5リッターV12エンジンを積んだ、新たなフラッグシップマシンである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
NEW
東京オートサロン2026(ダンロップ)
2026.1.10画像・写真今年のダンロップブースはオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」一色! 「三菱デリカD:5」や「レクサスIS」はもちろん、クラシックカーの「いすゞ117クーペ」にまで装着して展示された。東京オートサロンの会場より、ダンロップの展示を写真で紹介する。 -
NEW
東京オートサロン2026展示車両(その6)
2026.1.10画像・写真「トヨタGR86」のオフロードマシンに前身宝飾の「メルセデス・ベンツSL」、これぞ定番なドレスアップミニバンの数々……。「東京オートサロン2026」の会場より、個性豊かなカスタムカー、チューニングカーを写真で紹介する。 -
NEW
東京オートサロン2026展示車両(その5)
2026.1.10画像・写真サーキットも走れる「アバルト1000TCR仕様」に、ランボルギーニのトラクター、そして「クラウン コンフォート」ベースのドラッグマシンも! 「東京オートサロン2026」の会場より、記者の目を奪ったモデルを写真で紹介する。 -
NEW
【東京オートサロン2026】コンパニオン・モデル名鑑(その9)
2026.1.10画像・写真年明け恒例となっている、チューニングカーやドレスアップカーの祭典「東京オートサロン」。HEARTILYブースを彩るコンパニオンの姿を写真で紹介する。














































