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トヨタ・クラウン スポーツ プロトタイプ

その名に恥じぬ身のこなし 2023.05.01 試乗記 渡辺 敏史 2022年に「クロスオーバー」で華々しいデビューを飾った16代目「トヨタ・クラウン」。その第2弾が「スポーツ」である。細かなスペックなども判然としない状況ながら、ひと足早くプロトタイプモデルの仕上がりを試した。

スニークプレビューの合間に

驚きの変身とともに2022年秋にデビューしたクラウン クロスオーバー。その販売はまずまず好調のようで、例えばこの1~3月をみても月販は3200台の目標を2割以上も上回る、4000台超のペースで推移している。この自販連の発表値には警察車両等も含まれるかもしれないが、低く見積もっても想定以上の成果といえるだろう。

このクロスオーバー発表時にアナウンスされたとおり、現世代のクラウンには4つのバリエーションが用意される。そのひとつとなるスポーツが、第2のクラウンとして2023年秋にリリースされる予定だ。今回はそのデビューに先駆けて行われたトヨタパスポート・エクスプレス会員向けのスニークプレビューの合間をお借りして、短時間ながら試乗も交えた実車確認の機会をいただいた。

個体は正式投入の約半年前ということもあってすべてプロトタイプの段階。パネルの建て付けや塗装、内装部品などにはまだ一部アラがある状態だ。そんなタイミングゆえ詳細はほとんど明かされず、ハイブリッド車(HEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)があるということ以上のパワートレインのディテールも公表されていない。確定情報ではなく現地でのエンジニアとの対話を基にした筆者の臆測も多く入っていることをお断りしておきたい。

新生「トヨタ・クラウン」の第2弾として2023年秋に登場予定の「スポーツ」。同時期に「セダン」がデビューし、2024年には「エステート」が続く予定だ。
新生「トヨタ・クラウン」の第2弾として2023年秋に登場予定の「スポーツ」。同時期に「セダン」がデビューし、2024年には「エステート」が続く予定だ。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4710×1880×1560mmで、ホイールベースは2770mm。先にデビューした「クロスオーバー」よりも全長が220mm、ホイールベースが80mm短い。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4710×1880×1560mmで、ホイールベースは2770mm。先にデビューした「クロスオーバー」よりも全長が220mm、ホイールベースが80mm短い。拡大
「ハンマーヘッド」と名づけられたフロントマスク。シャープなヘッドランプが未来感を漂わせる。
「ハンマーヘッド」と名づけられたフロントマスク。シャープなヘッドランプが未来感を漂わせる。拡大
リアコンビランプは左右ひとつながりのデザイン。リアウィンドウとの間がフラットになっておりスポイラーも兼ねている。
リアコンビランプは左右ひとつながりのデザイン。リアウィンドウとの間がフラットになっておりスポイラーも兼ねている。拡大
「スポーツ」(写真左)と「クロスオーバー」を並べてみる。スポーツにもツートンカラーが設定されているという。
「スポーツ」(写真左)と「クロスオーバー」を並べてみる。スポーツにもツートンカラーが設定されているという。拡大
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思い出すのは「プロサングエ」なれど

スポーツのスリーサイズは4710×1880×1560mm。ホイールベースは2770mmとなる。クロスオーバーに対しては全長で220mm短く全幅で40mm広く、全高は20mm高い。そしてホイールベースは80mm短くなっている。拡幅しろはトレッドにも反映されているそうで、タイヤ位置の縦横比は正方形側に近づいている。つまり、クロスオーバーよりも旋回指向のディメンションということだ。

プロポーションはSUVというよりもスポーツワゴンの側に近く、仕様のいかんを問わずタイヤサイズは235/45R21のみになるという。ただし、ホイールデザインはいくつかのバリエーションを検討しているそうだ。最低地上高はクロスオーバーとのタイヤ外径差分がかさ上げされて150mm程度と目される。一方で1560mmの全高は、都市部の立体駐車場などでの利便を鑑みれば不利になるかもしれない。

と、そんなこんなでいや応なく思い起こすのは「フェラーリ・プロサングエ」だ。ちまたでは早速パクリなどとささやかれているようだが、開発の時系列的にみても参照・引用うんぬんの話にはあたらないと断言できる。が、結果的には同類の印象を与えるのもまた確かだ。造形という共通言語を持つデザイナーたちが考えるスポーティーなSUVの成り立ちというのがこういうところに収束する、そうみるのが自然だろう。プレス機の限界で表現しているというウエストからリアフェンダー、リアゲートにかけての抑揚は強烈で、ちょっと「スープラ」とのつながりも感じられる。

「クロスオーバー」(写真右)よりも「スポーツ」のほうが車高が20mm高い。これはタイヤの外形寸法によるもの。
「クロスオーバー」(写真右)よりも「スポーツ」のほうが車高が20mm高い。これはタイヤの外形寸法によるもの。拡大
リアにレイアウトされた「CROWN」のロゴ。トヨタのエンブレムは左右リアコンビランプ間にあるものの、横幅がわずか3cmほどしかない。
リアにレイアウトされた「CROWN」のロゴ。トヨタのエンブレムは左右リアコンビランプ間にあるものの、横幅がわずか3cmほどしかない。拡大
ボンネットの先端にトヨタのエンブレムはなく、王冠バッジが貼られる
ボンネットの先端にトヨタのエンブレムはなく、王冠バッジが貼られる拡大
タイヤは全モデルで235/45R21を履く。ホイールエンブレムも王冠だ。
タイヤは全モデルで235/45R21を履く。ホイールエンブレムも王冠だ。拡大
今回はトヨタパスポート・エクスプレス会員向けイベントの合間に試乗させてもらった。3年以内の乗り換えを前提に残価設定ローンやKINTOで新型「クラウン」に乗る人向けのサービスで、残価が通常よりも高く設定されるほか、今回のような特別なイベントに参加できる。
今回はトヨタパスポート・エクスプレス会員向けイベントの合間に試乗させてもらった。3年以内の乗り換えを前提に残価設定ローンやKINTOで新型「クラウン」に乗る人向けのサービスで、残価が通常よりも高く設定されるほか、今回のような特別なイベントに参加できる。拡大

パワートレインはHEVとPHEVの2本立て

車台のベースとなるのはクロスオーバーだが、当然ながらこのディメンションとキャラクターに合わせて、サスセッティングや駆動配分のパラメーター、60km/h付近を境に最大4度の前輪との同逆相角を制御する「DRS」=4輪操舵といったシャシーまわりのセットアップはすべて専用設定となっている。タイヤは試乗用、展示用車両の全てがミシュランの「eプライマシー」を装着。試乗車両はPHEVのみだったが、前ブレーキには無塗装の6ポットキャリパーとベルハット別体型の20インチディスクが採用されていた。意匠的にみて、「レクサスRX500h」に採用されたアドヴィックスのモノブロックタイプと推定される。

パワートレインはHEVとPHEVの2本立てで、それ以上の情報は一切アナウンスされていないが、エンジニアの話を総合するにHEVはクロスオーバーにも用意される2.5リッター4気筒の「THS II」、PHEVは同じ2.5リッター4気筒の、レクサスの「NX」やRXの「450h+」と同等のシステムだと想定される。PHEVの側は搭載バッテリー容量が仮にレクサス勢と同じ18.1kWhであれば、前例から推するに90km近いEV走行が可能となるかもしれない。また、給電口リッドは普通充電用とは思えないサイズでCHAdeMO併用にも察せられたが、後に左ハンドル仕様も用意されるということなので、仕向け地に合わせて北米や欧州で主力の規格「CCS」などに対応するために、あらかじめリッドを大きく設定しているのかもしれない。

パワートレインはハイブリッドとプラグインハイブリッドの2種類だが、詳細は未公表。エンジニアに聞いたところでは2.4リッターのターボハイブリッドは搭載されないもよう。
パワートレインはハイブリッドとプラグインハイブリッドの2種類だが、詳細は未公表。エンジニアに聞いたところでは2.4リッターのターボハイブリッドは搭載されないもよう。拡大
内装色は赤(写真)と黒、茶が用意される。ステアリングホイールにはディンプルレザーが巻かれる。
内装色は赤(写真)と黒、茶が用意される。ステアリングホイールにはディンプルレザーが巻かれる。拡大
赤と茶のインテリアでは、主に助手席側にその色が使われ、運転席側はブラック基調でコーディネート。キャビンの左右でツートンカラーのようになる。
赤と茶のインテリアでは、主に助手席側にその色が使われ、運転席側はブラック基調でコーディネート。キャビンの左右でツートンカラーのようになる。拡大
シフトセレクターにもディンプルレザーが巻かれる。
シフトセレクターにもディンプルレザーが巻かれる。拡大

“スポーツ”に恥じない運動性能

前述のとおり試乗車はPHEVのみ。雨のなか、短いクローズドコースを5周程度ということで、試乗の印象はごく限られた範囲になってしまうが、ドライブトレインのしつけは昨今のトヨタの電動化モデルに共通する、後軸モーターを積極的にダイナミクスに振ったものだ。ウエットのコーナリングでも立ち上がりでアクセルをじわりと踏み込んでいくと、前輪側から膨らむことなくじわじわと鼻先をインに向けていく挙動などはクロスオーバーでも感じ取れたところだ。

そこに加えてスポーツは、コーナーの入りや切り返しなどで明快な軽さが感じられる。実重差はさほどでもないだろうが、ディメンションやDRSによる切り始めの動きのよさがそう見せているのだろう。ただし、ゲインの立ち上がりはしっかり角が丸められていて、安直なキビキビ感を醸しているわけではない。初動は優しく、でもお望みのゲインをスッと引き出せるという、「GA-Kプラットフォーム」に共通する感触は、実験部門の味つけのうまさによるところだろう。

ともあれ短い試乗での印象ながら、クロスオーバーとは一線を画する、スポーツの名に恥じない運動性能の一面はしっかりと感じ取れた。内装のしつらえなどから推するに、価格はクロスオーバーに対して著しく異なることはないと想像できる。デザインだけではなく走ってナンボのところでも、よりアクティブなクラウンを望む向きは検討に値するモデルだと思う。

(文=渡辺敏史/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝)

4輪操舵は全モデルに標準装備で、セッティングは「スポーツ」専用。タイトなコーナーでもリアから回り込むようなコーナリングができた。
4輪操舵は全モデルに標準装備で、セッティングは「スポーツ」専用。タイトなコーナーでもリアから回り込むようなコーナリングができた。拡大
フロントには専用のスポーツシートを装備。撮影した車両にはヒーターとベンチレーション機能が付いていた。
フロントには専用のスポーツシートを装備。撮影した車両にはヒーターとベンチレーション機能が付いていた。拡大
車体が小さくなっているため後席の広さは「クロスオーバー」に譲る。
車体が小さくなっているため後席の広さは「クロスオーバー」に譲る。拡大
ドライブモードを変えると液晶メーターに車両の側面が大写しになる。撮影したハイブリッド車では「ノーマル」「エコ」「スポーツ」の3種類が選べた。
ドライブモードを変えると液晶メーターに車両の側面が大写しになる。撮影したハイブリッド車では「ノーマル」「エコ」「スポーツ」の3種類が選べた。拡大

テスト車のデータ

トヨタ・クラウン スポーツ プロトタイプ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1880×1560mm
ホイールベース:2770mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:--
モーター:--
トランスミッション:--
エンジン最高出力:--PS(--kW)/--rpm
エンジン最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
モーター最高出力:--PS(--kW)
モーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:--PS(--kW)
タイヤ:(前)235/45R21 97W/(後)235/45R21 97W(ミシュランeプライマシー)
ハイブリッド燃料消費率:--km/リッター
EV走行換算距離:--km
充電電力使用時走行距離:--km
交流電力量消費率:--Wh/km
価格:--万円
オプション装備:--

テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

トヨタ・クラウン スポーツ プロトタイプ
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渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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