メルセデス・ベンツEQS450 4MATIC SUV(4WD)
技術で理想を現実に 2023.06.24 試乗記 メルセデス・ベンツの電気自動車(EV)ラインナップに、ラージサイズの3列シートSUV「EQS SUV」が登場。全長5mを超える電気仕掛けの巨人は、都会に映える存在感やEVならではの走りに加え、最先端のハイテクにも感心させられる一台となっていた。ウケること間違いなし
「メルセデスEQ」としてくくられるメルセデス・ベンツのEVラインナップに新たに加わったのが、ラグジュアリーSUVのEQS SUVだ。気がつけば“A”から“S”までラインナップを充実させているメルセデスEQにおいて、このEQS SUVはその名前が示すように、ラグジュアリーEVセダン「EQS」のSUV版という位置づけ。EQSゆずりの豪華なつくりに、大人7人が乗れる広い室内、そして流行のSUVスタイルを身にまとうだけに、人気モデルになること必至の一台である。
EQS SUVは、EQSやその弟分の「EQE」同様、EV専用プラットフォーム「EVA2」をベースにデザインされている。ホイールベースはEQSと同じ3210mmで、フロア部分に容量107.8kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを積むのもEQSと同じである。日本で販売されるのは、「EQS450 4MATIC SUV」と「EQS580 4MATIC SUVスポーツ」の2グレードで、どちらも前後1基ずつの永久磁石同期モーターにより4WDを実現。航続距離は、最高出力360PSのEQS450 4MATIC SUVが593kmであるのに対して、同544PSのEQS580 4MATIC SUVスポーツが589kmと、その差はわずか4km。パワーの違いから想像するよりはるかに航続距離に差がつかないのが、EVらしいところである。
そんな2台のなかから、今回は出力が控えめなEQS450 4MATIC SUVで街なかを中心にドライブし、その仕上がりをチェックしてみる。
いろんな意味で圧倒される
メルセデスのラグジュアリーSUVには、内燃機関を搭載する「GLS」があるが、GLSがタフな印象を前面に押し出しているのに対し、このEQS SUVはSUVならではの存在感をアピールしつつも、EQS同様、都会的で洗練された雰囲気が強く感じられるクルマに仕立て上げられているのが大きく異なるところ。全長×全幅×全高=5130×2035×1725mmとそれなりにボディーサイズは大きいものの、GLSより100mm抑えられた全高や低く短いボンネット、柔らかな面で構成されるボディーパネル、そして、フロントフェイスを彩る“ブラックパネルユニット”などが、効いているのだろう。
エクステリア以上に新しさと洗練性を印象づけるのが、EQS SUVのコックピット。なかでもダッシュボードに広がる「MBUXハイパースクリーン」には圧倒される。上級グレードのEQS580 4MATIC SUVスポーツに標準、試乗したEQS450 4MATIC SUVにはメーカーオプションとして設定されるこの装備は、運転席のコックピットディスプレイ、中央のメディアディスプレイ、助手席のパッセンジャーディスプレイを横幅141cmもの一枚ガラスで覆うもの。これを見てしまうと、助手席が単なるパネルという標準仕様のコックピットがさびしく思えてしまうし、助手席の乗員にとっても走行中に地デジなどのコンテンツが楽しめるのは魅力に思えるだろう。走行中にドライバーがこのディスプレイをのぞいても、一部のコンテンツは見えないという安全策が施されるのも見逃せない。
ただし、このMBUXハイパースクリーンを含む「デジタルインテリアパッケージ」は、オプション価格が税込み121万円と、別な意味でも圧倒される。ちなみに、東京都に在住の個人の場合、都の補助金を35万円、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)を68万円、それぞれ受けることができる(2023年6月現在)が、それらをこのオプション代に充てても、まだ少し足りない計算である。
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扱いやすさを重視したモーターの調律
EQS同様、このEQS SUVにも格納式のドアハンドルが装着されており、リモコンキーを持ってクルマに近づくと、自動的にドアハンドルがせり出してくる。一方、世間では運転席に座り、ブレーキを踏むだけでシステムが起動するEVが増えているものの、EQS SUVはスタートボタンを押す儀式が必要だ。
まずはドライブモードを「コンフォート」にして走りだすと、発進からスムーズで余裕あるトルクが感じられるが、EVだからといって過剰なほど鋭い加速を見せないところがメルセデスらしい。それでいて2900kgに及ぶ重量級のボディーをドライバーの意図したとおりに軽々と加速させるのが心地よいのだ。高速道路の合流などでアクセルペダルを思い切り踏み込んでも、冷や汗をかくほどの過激さはないが、加速が足りないと感じることはなかった。「スポーツ」モードに切り替えれば、より力強く、レスポンスはさらに素早くなるが、荒々しさとは無縁であり、総じてラグジュアリーSUVにふさわしい上品な味つけである。
面白いのが回生ブレーキ。走行中にアクセルペダルを緩めたとき、モーターに発電させることで減速しながらエネルギーを回収するそのブレーキの特性を、4パターンから選ぶことができるのだ。標準の「D」(普通回生)がやや利きが弱めなのに対し、「D-」(強化回生)は強めで、アクセルペダルの操作だけで加減速がほぼ可能なレベルだ。一方、「D+」(回生なし)を選べばコースティングすることもできる。さらに「D Auto」(インテリジェント回生)なら、先行車との距離や道路状況によりコースティングから強めの回生まで自動で減速を調整してくれる。D Autoは高速道路などでとても便利だが、先行車がいない状況では基本的にコースティングとなるため、赤信号やカーブなどでアクセルペダルを離しても減速してくれないのは注意が必要。回生ブレーキを使って確実に減速したいなら、D-に切り替えておくことをお忘れなく!
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エアサスペンションがもたらす上質な走り
EQS SUVには可変ダンパーとエアスプリングを組み合わせた「エアマチックサスペンション」が標準装着されている。試乗車は標準から1インチアップの21インチアルミホイールがオプション装着されていたが、終始マイルドでスムーズな乗り心地が味わえた。目地段差を越える際のショックも絶妙にいなし、ラグジュアリーSUVの名にふさわしい快適さを手に入れている。ホイールベース間の床下に重量物のバッテリーを搭載するため、SUVとしては重心が低く、エアマチックサスペンションの働きもあってロールやピッチングの動きはよく抑えられているのもうれしいところだ。
5m強の全長に2mを超える全幅、さらにホイールベースが3.2mとくれば、大きなボディーの扱いに手こずりそうだが、リアアクスルステアリングが標準装着されるおかげで、思いのほか取り回しがしやすく、片側1車線の道路でUターンするような場面でも小回りが利いて驚くほどだ。走行時の動きにも軽快さが感じられ、狭い駐車場での車庫入れといった状況を除けば、大きなボディーを持て余すことはなかった。
ボディーサイズが大きいだけに、2列目シートやラゲッジスペースは余裕たっぷり。3列目は大人が座るとヒザが立つが、短時間の移動なら十分許容できるレベルである。
今回は限られた時間の試乗だったため、電費や充電性能についてはチェックできなかったが、EVとして、またラグジュアリーSUVとして、このEQS450 4MATIC SUVが極めて高い完成度を持つことが確認できた。メルセデスの最先端も体験できるこのEQS SUV、“新しモノ好き”にはたまらない一台である。
(文=生方 聡/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツEQS450 4MATIC SUV
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5135×2035×1725mm
ホイールベース:3210mm
車重:2900kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:永久磁石同期モーター
リアモーター:永久磁石同期モーター
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:360PS(265kW)
システム最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)
タイヤ:(前)275/45R21 110H/(後)275/45R21 110H(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック5)
交流電力量消費率:221Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:593km(WLTCモード)
価格:1542万円/テスト車=1822万5000円
オプション装備:ボディーカラー<ダイヤモンドホワイトメタリック>(18万7000円)/AMGラインパッケージ(44万円)/ショーファーパッケージ<EQS SUV専用>(85万8000円)/デジタルインテリアパッケージ(121万円)/ブラウンマグノリアウッドインテリアトリム<メルセデス・ベンツパターン>(11万円)/21インチAMG5スポークアルミホイール(0円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:762km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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