メルセデス・ベンツEQS SUV580 4MATIC(4WD)/EQS SUV450+(RWD)/EQS SUV450 4MATIC(4WD)
決意と覚悟 2022.10.06 試乗記 600km以上の一充電走行距離を誇るばかりか、最大7人が乗れるゆったりとしたパッケージングでいざとなれば悪路も走れる……。「EQS SUV」は一切の出し惜しみのないメルセデスの最新電気自動車(BEV)だ。アメリカ・デンバーでその仕上がりをテストした。パワートレインは3種類
メルセデスの電動化パワートレインを総括するコードネーム「EQ」が、BEV専用のサブブランド「メルセデスEQ」へと昇格したのは2018年のこと。そのファーストモデルとなった「EQC」の登場から4年で6モデルを展開している。そして7つ目のモデルとしてデビューするのがこのEQS SUVだ。
EQS SUVのコアとなる「EVA2」は、既にセダンタイプの「EQS」や「EQE」で採用されている。メルセデス自らちゃめっ気を込めて「エレクトリックスケートボードアーキテクチャー」とも称するこの車台は、想像のとおりフラットフロアの一面にバッテリーを敷設しながら、前後もしくは後ろにモーターを搭載することで4輪駆動もしくは後輪駆動の駆動環境を採るもの。バッテリーはニッケル・マンガン・コバルト=NMCの比率をポピュラーな6:2:2から8:1:1としたハイニッケル型のリチウムイオン型を採用し、コバルトフリー化に寄せながら性能向上を果たした。搭載バッテリーはEQSではグレードに応じて107.8kWhと90kWhの2つが用意されているが、EQS SUVは107.8kWhのみで、一充電走行距離はグレードに応じてWLTP値で最大609~671kmとなっている。
そのグレードはパワートレインの役割を果たすモーターの数や出力に応じて3つを用意。ベースモデルとなる「450+」はメルセデスが「eATS」と呼ぶモーターをリアアクスルに搭載。最高出力360PS/最大トルク568N・mの後輪駆動となる。「450 4MATIC」はモーターを前後に搭載して4輪駆動化し、360PS/800N・mを発生。そしてトップグレードの「580 4MATIC」は544PS/858N・mをマークする。ちなみに580 4MATICの最高速は210km/h、0-100km/hは4.9秒。トップレンジだけあって最高速は内燃機モデルに合わせた一方で、動力性能は過剰な数値を追わず常識的にチューニングされているようだ。
SUVらしからぬ空力性能
EQS SUVの車格は全長が5125mm、全幅が1959mm、全高が1718mm。「GLS」に比べるとわずかながら短く狭く低い。対してホイールベースはEQSと同じ3210mmで、これはGLSより75mm長い。そのディメンションはスタイリングにもよく現れていて、いかにも実用側にいるGLSに比べると、シュッとスリークだ。そのおかげもあってか、Cd値も0.26と、SUVとしては異様に低い数値に収まっている。
Cd値0.20のEQSは、バッテリー搭載による室内高の制約に加えてワンモーションデザインやリアゲートヒンジ等の関係もあって、後席つまり2列目シートは「Sクラス」に比べると圧迫感があるのは否めない。対すればEQS SUVは無理なく広々としている。3列目シートの居住性にBEVミラクルはなくあくまでオケージョナルだが、こうなると2列目の居住価値を最大化すれば、Sクラスをも超える静かで滑らかなショーファードリブンとなる可能性もあるだろう。と、そこで思い浮かぶのは2021年のIAAでお披露目されたコンセプトカー「メルセデス・マイバッハEQS」だ。なるほど、火のないところに煙は立たないものである。
コックピット環境はEQSに準じており、インフォテインメントは標準でSクラスと同様のメータークラスター&センターコンソールの2画面仕立てを、オプションで助手席側を含む3画面を1枚のガラスパネルでつなぐ「ハイパースクリーン」を選ぶことができる。アッパーサルーンともなればもはや後席の独立モニターが当たり前と考えれば、車中の末席である助手席のモニターだって……と考えるのは普通なのかもしれない。今やフェラーリにさえ同質のブツが乗っかっているご時世でもある。
BEVならではの扱いやすさ
試乗はトップグレードの580 4MATICを中心に、450 4MATICや450+にもさらりと触れることができた。が、パワートレインの質感による感触差みたいなものが内燃機のそれよりは感じにくいのがBEVの特性であって、EQS SUVもしずしずと乗っている限りはグレードによる格差が嗅ぎ取りづらい。クルマの特性的に都市部で乗せられるということを鑑みると、450+と580 4MATICの間には著しい差異はないかもなと思った。BEVは走りだしのトラクションとトルクによってのキャラクターの差異が顕著な一方で、そこから向こうの巡航域では微妙なニュアンスによる個性の差が出しづらい。そういうBEVならではのジレンマもみえてくる。
それでも踏み込みに応じた加速力はグレードごとの差異が確実に伝わってくるわけだが、最強スペックの580 4MATICについてはどこかのBEVのように首ごと持っていかれるような下劣な加速はあえて封印しているのだろう。が、巨体の速度を意のままに瞬時に、そしてすこぶる滑らかに合わせていける即応性はきっちり確保されており、いやはや本当に扱いやすい。この感覚は、やはりどんなによくできた内燃機車とも一線を画するものだ。
このリニアリティーやシームレス感は程度の差こそあれ450 4MATICでも450+でも同質で、この項目においては明らかにBEVならではの価値がある。やれ情緒だの官能だのと、こっちが内燃機に求め続けてきた色気をうんぬん言わなければこれが最良という説得力は乗れば十分に伝わってくるだろう。乗るだけでなく乗せられる可能性も高い高級車こそBEVだ――という意見に対する反論はさすがに思い浮かばない。
なにぶん車格が車格ゆえ、ワインディングロードをひらひらと舞うように……とはいかないことは頭に入れておくべきことだろう。的確な加減速をわきまえれば、EQS SUVは持ち前のBEVらしい低重心を利して、背の高い車体をぐらぐらと傾けることなく安定して旋回できる。乗り心地の穏やかさと姿勢変化の少なさに一助しているリアアクスルステアは最大4.5度の舵角を持つが、OTAによる有償アップデートで最大値を10度まで増すことができる。強力な小回り性能は、狭所での取り回しやパーキングアシストなどで生かそうというもくろみだ。
いま考えられるすべてが詰まっている
ドライブモードを「オフロード」に設定すれば車高は25mmアップ。対地アングルが高まるも、クルマのキャラクター的に悪路への対応力は期待できないものと予想していた。が、実際にそういう場所へと踏み入れてみると、望外の走破性に驚かされることになる。前述の10度舵角のリアアクスルステアも加われば、木々の間をくるりと回り、片輪を空に浮かせてのモーグル走行でも滑りさえ感じさせずにしずしずと歩を進める。
その源となっているのは、モーターならではの安定したトルク特性と、それをきっちりトラクションに反映する緻密な駆動制御で、トランスファーを介してエンジンのうなりとともに4輪へと駆動力を伝える今までのクルマとは、扱いやすさもダイレクト感もまるで異なっている。楽で快適なのは明らかに前者の側だ。その向こうには、オーディオでもカメラでも電話でも目にしてきた、デジタルがアナログを駆逐していく未来が垣間見えるような気さえする。
根本のエネルギーマネジメントの問題は地域もろもろの事情があり、決して一朝一夕でカタがつくものではない。そして何が最適効率なのかは用途によっても大きく異なってくる。この前提に立てば、マルチソリューションが最善であることに変わりはないと思う。
でもBEVというハードウエアが自動車にもたらす新たな可能性という点で言えば、EQS SUVはいま考えられるすべてを見せてくれる一台であることは間違いない。その背景にあるのは、パラダイムシフトの嵐に見舞われようが、その次に再び頂に立つのは自分たちだというメルセデスの決意と覚悟だ。
(文=渡辺敏史/写真=メルセデス・ベンツ/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツEQS SUV580 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5125×1959×1718mm
ホイールベース:3210mm
車重:2735kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:永久磁石同期式電動モーター
リアモーター:永久磁石同期式電動モーター
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:544PS(400kW)
システム最大トルク:858N・m(87.5kgf・m)
タイヤ:--
一充電走行距離:609km(WLTPモード)
価格:--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
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メルセデス・ベンツEQS SUV450+
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5125×1959×1718mm
ホイールベース:3210mm
車重:2620kg
駆動方式:RWD
モーター:永久磁石同期式電動モーター
モーター最高出力:360PS(265kW)
モーター最大トルク:568N・m(57.9kgf・m)
タイヤ:--
一充電走行距離:671km(WLTPモード)
価格:--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
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メルセデス・ベンツEQS SUV450 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5125×1959×1718mm
ホイールベース:3210mm
車重:2730kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:永久磁石同期式電動モーター
リアモーター:永久磁石同期式電動モーター
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:360PS(265kW)
システム最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)
タイヤ:--
一充電走行距離:610km(WLTPモード)
価格:--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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