メルセデス・マイバッハEQS680 SUV(4WD)
やる時は徹底的 2024.09.21 試乗記 「メルセデス・マイバッハEQS680 SUV」が日本に上陸。価格や動力性能、各部の仕立てなど、浮世離れした要素がたっぷりのウルトララグジュアリーなSUVタイプの電気自動車(BEV)だ。ロングドライブでお金持ち(またはその運転手)気分を味わってみた。メルセデス・マイバッハ初のBEV
メルセデス・ベンツのさらに上を行くラグジュアリーブランドたるメルセデス・マイバッハの超ド級SUVということだけでもうおなかいっぱいなのに、同ブランドとしては初のBEVであるというこのEQS680は、マイバッハにEQが加わって、そのうえ「680」ときた。もはや何がなんだか、メルセデス・ベンツブランドの「EQS SUV」の「580」よりもスゴイのだろうことは想像できるけれど、正直庶民の理解を超えている。
もちろん必要な人もいるはずだし、これこれ、こういうのが欲しかったんだ、と胸を打ち抜かれる方もいるのだろうが、目の当たりにするとただ圧倒されてため息が出るばかりである。ただし、小山のような巨体に圧力を感じるというほどではない。落ち着いて眺めると意外にキュッと締まったボディーである。
それもそのはず、EQS680 SUVのボディー外寸は全長×全幅×全高=5135×2035×1725mmというもので、V8ツインターボを積む「メルセデス・マイバッハGLS600」の5210×2030×1840mmに比べるとはっきり短く低い。いっぽうホイールベースは3210mmでGLS600の3135mmより長く、前後のオーバーハングが明らかに短い。メルセデス・ベンツ版のEQS SUV同様(外寸は事実上同じ)、電動車専用プラットフォームを採用している証拠である。
とはいえ十分に大きく、そのうえやんごとなきツートンのボディーカラー「ベルベットブラウン×オニキスブラック」(これだけで約286万円!)や、細かい縦桟のフロントパネル、欄間の組子細工のようなマイバッハマークがちりばめられたインテーク(風パネル)などの絢爛(けんらん)豪華さにひるむのは仕方のないところである。
意外に安い? いえいえとんでもないです
大きくせり出す電動格納式ステップボードにむこうずねを蹴られないようにして乗り込むと、目の前にはもうおなじみの「MBUXハイパースクリーン」が広がるが、目を奪われるのはそれよりもまばゆいばかりのクリスタルホワイト×シルバーグレーのナッパレザートリムである。標準仕様でもナッパレザートリムが備わるが、この光り輝くインテリアはやはりこれだけで約225万円のオプション(「ファーストクラスパッケージ」とセット装着)で、汗ばんだ体では触るのさえ躊躇(ちゅうちょ)するような豪華さである。
メルセデス・ベンツEQS SUVをベースにしているものの、3列シート7人乗りのあちらに対して、マイバッハ680は同じロングホイールベースをぜいたくに使った2列5人乗り、しかも左右独立式の豪勢な後席とシャンパン用冷蔵庫などからなるファーストクラスパッケージ(123.6万円)を備えるこのクルマの定員は4人となる。ちなみに車両本体価格では2790万円とマイバッハGLS600の3220万円よりは安いが、前述のオプション装備を加えると総額はおよそ3450万円に上る。いやはやなんとも、移動するタワマンといっていいほどだ。
3t超でも0-100km/hは4.4秒
前述のとおり、先日マイナーチェンジを受けたマイバッハGLS600よりはちょっと小さいとはいえ、118kWhの大容量バッテリー(EQS580 SUVは107.8kWh)と前後にモーターを搭載するBEVだけに車重は3050kgと3tの大台を超える(GLS600は2850kg)。知ればちょっと不安になるほどの重さだが、巡航中は前輪用ドライブユニットを切り離すディスコネクト機能を備えるなどのおかげか、WLTCモードの一充電走行距離は640kmという。実際、まったくエコ運転に配慮することなく東京と富士山麓を往復した際の電費は4km/kWh台前半だったから、500kmほどは走れるはずだ。
フロントモーター(236PS/346N・m)とリアモーター(422PS/609N・m)を合計したシステム最高出力は658PS、最大トルクは955N・mと猛烈だ。欧州仕様では0-100km/h加速は4.4秒という。これだけの質量にもかかわらず、もちろん滑らかに静かに動くし、その気になれば猛然と加速することもできる。足まわりは当然連続可変ダンパーにエアスプリングユニットを装備した「エアマチックサスペンション」で、車高を上げることも可能。リアアクスルステアリングも備わり、おかげで最小回転半径は5.1mとコンパクトセダン並みだ。
特徴的なのは通常の「コンフォート」モードに代わって「マイバッハ」モードが用意されていること。後席VIPの快適性第一に設定されたモードというが、路面と速度によってはボディーのフワフワした上下動が収まり切らない場合もあり、運転しているぶんには「スポーツ」を選んだほうがビシッと引き締まって安心感がある。
すべてに対応するというアピール
3t超えのボディーをよくぞこれほどまでに破綻なくコントロールできるものだと感心するしかないが、念のために言っておくと下りのコーナーなどでは油断禁物である。扱いやすさと快適さについ忘れてしまうが、巨大な運動エネルギーはどんな電子制御デバイスでも抑えることはできないのである。
極めて静粛にゼロエミッションで走行できるからにはパレードなどには最適なのかもしれないが、一般人にはやはりどのようなシーンで活躍するのか思い描くのは難しい。中東の王様はV8ツインターボのGLS600で豪快に砂塵(さじん)を巻き上げ、モナコの大富豪はEQS680 SUVで静々とヨットハーバーに向かうのだろうか。ただし、このマイバッハEQS680が、世の中の風向きがどう変わろうと、あらゆる市場のすべての顧客に対応する用意があるというメルセデスの宣言だとすれば、ちょっとゾクッとする。やる時にはここまでやるのか、と思い知らせるのがメルセデスのやり方である。
(文=高平高輝/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
メルセデス・マイバッハEQS680 SUV
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5135×2035×1725mm
ホイールベース:3210mm
車重:3050kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:236PS(174kW)/4858-6937rpm
フロントモーター最大トルク:346N・m(35.3kgf・m)/0-4858rpm
リアモーター最高出力:422PS(310kW)/4918-6886rpm
リアモーター最大トルク:609N・m(62.1kgf・m)/0-4822rpm
システム最高出力:658PS(484kW)
システム最大トルク:955N・m(97.4kgf・m)
タイヤ:(前)275/40R22 107H XL/(後)275/40R22 107H XL(クーパー・ズィオン クロスレンジ)
交流電力量消費率:224Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:640km(WLTCモード)
価格:2790万円/テスト車=3452万3000円
オプション装備:ツートンペイント<ベルベットブラウン×オニキスブラック>(285万9000円)/ファーストクラスパッケージ(123万6000円)/ブラックピアノラッカーフローイングラインインテリアトリム(28万1000円)/ナッパレザーインテリア<クリスタルホワイト×シルバーグレー>(224万7000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:442km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:362.4km
消費電力:--kWh
参考電力消費率:4.2km/kWh(車載電費計計測値)

高平 高輝
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