アルピーヌA110 R(MR/7AT)
上には上がある 2023.07.29 試乗記 F1をはじめとするモータースポーツで得た知見を最大限に取り入れ、サーキット向けに走行性能をさらに高めたというアルピーヌのライトウェイトスポーツカー「A110 R」が上陸。強化されたシャシーと空力性能を追求した軽量なボディーが織りなす進化した走りを報告する。ライトウェイトの究極
スポーツカーエンスージアストなら皆大好き、ぞっこんとはいかないまでも必ず気になるコンパクトで軽快なミドシップ2シーターがアルピーヌA110である。軽量コンパクトなスポーツカーとして日常的実用性や快適性も備え、オリジナルモデルに憧れを抱くオヤジたちも納得せざるを得ない出来栄えだ。
しかも相次ぐ値上げで以前よりは高くなったとはいえ、「ポルシェ911」よりも庶民にとってはずっと現実的な価格である。われらが「マツダ・ロードスター」と並んで、現代におけるライトウェイトスポーツカーの代名詞であることに異論はないはずだ。
そんなスポーツカー専業のアルピーヌも将来の電動化を発表しているが、それまでは“オジサン・ホイホイ”的な特別仕様車を次々と発表してくるはずである。
アルピーヌの2022年のグローバル販売台数は前年比33%増の3500台余りという。6年前のデビュー直後の話では年間生産能力は2500台程度といわれていたから、絶対的には少ないとはいえ計画以上の売れ行きといえるだろう。同年の日本では238台の販売実績だが、これは供給が追いつかない状況での数字(受注ベースでは367台で世界第3位という)。
そんな人気ぶりを背景に、アルピーヌはサーキット走行を重視した究極のライトウェイトバージョンともいうべきA110 Rを2022年に横浜で世界初公開した。私やあなたも含めて日本のオヤジたちは真っすぐ狙い撃ちされているのである。
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これでもかと満載のカーボンパーツ
簡潔でキュートなスタイルが魅力のA110ながら、Rではあえて大きな「スワンネックマウントリアスポイラー」やフロントおよびサイドのエアスプリッターなど空力付加物と、もともとの軽量ボディーからさらに潔く各部を削(そ)ぎ落とした軽量化が肝である。
ボンネット、ルーフ、リアウィンドウの代わりのリアパネル(ルームミラーはなし)、バケットシート、さらにはホイールまでもフルカーボン製で、車重は「A110 S」に比べて34kg軽い1090kg(表記ルールの関係で日本では-30kg)に抑えられている。
ご承知のとおり、A110 Rの日本仕様は期間限定での受注・販売を行っている。その大きな理由になっているというのがカーボンパーツの供給で、なかでも問題なのが市販車としては珍しいフルカーボンホイール(これだけで-12.5kgという)である。
サプライヤーはデュケーヌ(Duqueine)というブランド。エアバス社など宇宙航空産業向けがメインのようだが、自前のレーシングチーム(LMP3)を運営していたこともあり、またロードレース用自転車で有名なマヴィックやHANSシステム(スタンド21)用にもカーボン部品を供給しているというから実績は豊富なようだ。
ちなみにフルカーボンホイールの市販車用標準装着としては一応ケーニグセグが初とされ、また「ポルシェ911ターボ」のオプションパーツなどの前例があるものの、まだまだ珍しいのが現状だ。1550万円とスタンダードモデルの倍近い価格のかなりの部分を占めているのではないかと思われる。
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パワーユニットは従来型と同じ
乾いた雑巾を絞るように軽量化したボディーのいっぽう、パワーユニットはA110 Sや「GT」と変わらない。1.8リッター直4ターボは最高出力300PS/6300rpmと最大トルク340N・m/2400rpmを生み出し、「ノーマル」「スポーツ」「トラック」が用意されるドライブモードも7段DCTも変わりなし。
それでも軽量化とエアロダイナミクスの改善によって0-100km/h加速はSの4.2秒から3.9秒へ向上。最高速も285km/h(Sは270km/h)に達するという。
これはずっとパワフルな「ケイマンGTS 4.0」をしのぐ数値である。もちろんA110は以前から高出力を追求したクルマではなく、Rもいわゆるシャシーファスターであることに違いはないが、エンジンルームのインシュレーターが取り去られたことや専用ツインパイプのエキゾーストシステムによって、Sよりも明らかに精悍(せいかん)なサウンドが耳に届く。
本気で走るとがぜん輝く
Rはラディカル(=過激な)の頭文字というぐらいだから、一般道の山道を短時間試乗しただけでその底力を探ることなど端から諦めてはいても、やはり違いは感じられる。
その前に、サベルト製6点式ベルトで体をフルバケットシートに縛り付けて恐る恐る走りだすと、意外やシートはなかなか快適で乗り心地も心配していたほどには過激ではない。Rは「シャシースポール」を備えるA110 Sに対して前後とも10%スプリングレートを引き上げ、スタビライザー剛性も前/後それぞれ10%/25%強化されている。
さらにZF製の車高調整式減衰力可変ダンパーが備わっており、Sよりも10mm低い車高をサーキット走行ではさらに10mm下げることができる。ダンピングは20段階調整式である。当然ながら不整路面ではダンと強力な上下動に見舞われるが、角が尖(とが)った突き上げではないので、これぐらいならまあ日常使用も何とかこなせるのではないだろうか。
ヒラリヒラリととにかく俊敏軽快なスタンダード系モデルに対して、締め上げられた足まわりにセミスリックのような浅溝の「ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2」タイヤ(サイズはSと同一)を履くRは、低速では鋭い切れ味よりもスタビリティーが目立つ手応えながら、スピードが増すにつれてステアリングフィールが鮮明に正確になり、挙動も落ち着く。そうやって荷重移動とフロントの接地感を意識しながら走っていると、いつの間にか「こりゃいかん」という域に踏み入っている。なるほどサーキット向け、そして積極的に挙動をコントロールする手だれ向けといえる。
前述したようにA110 Rは台数限定モデルではなく、継続生産のれっきとしたカタログモデルだという。日本ではロットごとに分けて期間限定扱いだが、それは納期が非常に長くなるのを避けるため(実際に本国では制限はない)。それゆえまだ焦る必要はない。
カーボンホイールにガリ傷をつけるのを心配しながら乗るぐらいならスタンダードで十分か、それともSか、いやいっそやっぱりRか。というようにスポーツカー好きを堂々巡りに追い込むのだからアルピーヌも罪作りである。
(文=高平高輝/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
アルピーヌA110 R
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4255×1800×1240mm
ホイールベース:2420mm
車重:1090kg
駆動方式:MR
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:300PS(221kW)/6300rpm
最大トルク:340N・m(34.6kgf・m)/2400rpm
タイヤ:(前)215/40ZR18 89Y/(後)245/40ZR18 97Y(ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2)
燃費:--km/リッター
価格:1550万円/テスト車=1550万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1104km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
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