トヨタ・クラウン クロスオーバーRS“アドバンスト”(4WD/6AT)/シトロエンC5 Xプラグインハイブリッド(FF/8AT)
運命のシンクロ 2023.10.20 試乗記 「トヨタ・クラウン クロスオーバー」と「シトロエンC5 X」はともにブランドを率いる旗艦であり、スタイリングを筆頭にいくつかの類似点が指摘されている。どちらにしようかと迷う人は数少ないと思うが、同時に連れ出してアレコレ比べてみた。日本ではほぼ同時に発売
トヨタ・クラウン クロスオーバーとシトロエンC5 Xはそっくり。という説が巷間(こうかん)はびこっているらしい。それなら現物で確認してみよう。というのが今回の比較テストのきっかけであり、目的である。
なるほど、この2台。写真だとフロントのフェンダー、ボンネットからAピラーにかけてと、ヘッドライトまわりのデザインがそっくり……のように見える。かたやシトロエン、フランスを代表する独創的メーカーの、こなたニッポンを代表する世界のトヨタの、ともに最新のフラッグシップで、ともにクロスオーバーというコンセプトも、同じといえば同じ。ボディーのサイズも近く、パワートレインにハイブリッドの設定がある(クラウンは全車がハイブリッド)、ということでも共通している。
そっくり説はおそらく発売時期が近いこともある。C5 Xが本国で発表されたのは2021年4月、日本での発売は翌2022年8月。トヨタの第16代クラウンがワールドデビューを飾ったのは2022年7月で、発売は同年9月。グローバル化の時代とはいえ、歴史も文化も異なるフランスとニッポンから、クロスオーバーに転じた旗艦が極東でほぼ同時に発売になった。注目を集めるのも当然である。
ドアの枚数が違う
さてそこで、2台の実車を並べてみると、う~む。全然違う。というのが筆者の感想である。まずもってフロントマスクの印象が異なる。写真だとライト周辺がそっくりだけれど、C5 Xの場合、DRLよりもその下のヘッドライトに、なぜか私の目は落ち着く。クラウンはDRLとヘッドランプが、実際には別々ながら、一体化しているような造形になっていて、大変スッキリしている。私の目は細部へと向かう。そうすると、ヘッドライトは横に並んだ小さな4つの角型LEDとなり、C5 Xとは全然違う。と私の脳は判断する。
視点を広げると、そもそもボディー形式が異なる。ということを思い出す。
ご存じのようにC5 Xはリアにゲートを持つ、シトロエンいわく「サルーンとステーションワゴンを組み合わせた」、その意味でもクロスオーバーで、ボディー後半の造形が、4ドアのセダンとクーペを融合したシルエットのクラウン クロスオーバーとはこれまた異なる。前後のデザインを統一しようというデザイナーの狙いによって、C5 Xのテールライトはフロント同様のVを横に寝かせたかたちになっている一方、クラウンのそれは横一線で、フロント同様シンプルに徹している。
C5 Xのデザイナーが複雑な造形でエレガントに見せようとしているのに対して、クラウンはシンプルな造形でエレガントさと同時に力強さを狙っている……ように筆者には思える。
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どちらもエンジンは横置き
それは2台並べるとはっきり分かる。大きさの違いが与える印象もある。C5 Xは、全長×全幅×全高=4805×1865×1490mm。クラウン クロスオーバーは4930×1840×1540mmで、クラウンのほうがC5 Xより125mm長くて、25mmナローで、50mm背が高い。なぜか若干ナローなのに、私には数値以上にクラウンは骨太だと感じる。ちょっとばかし小ぶりなC5 Xが繊細に思えるのは線や面の構成もさることながら、単純にちょっぴり小さいからだと筆者は想像する。
クラウン クロスオーバーの後ろ姿。あのリアの、中からナニカが出てきそうなキュービスム的デザインこそ、15代将軍で終わった徳川幕府にならい、16代にして自ら維新におよんだトヨタ・クラウンの象徴ではあるまいか……なんてことを思うのは私だけですね、きっと。
オフロードで重要なポイントとなる最低地上高はクラウン クロスオーバーが145mm、C5 Xが165mmで、C5 Xのほうが20mm高い。同じ「GA-K」プラットフォームの仲間でも、SUVの「ハリアー」や「レクサスRX」の最低地上高は190mmある。最低地上高145mmというのは、実は「カムリ」と同じなのだ。最低地上高の数字でクルマの性格が決定されるわけではないにしても、興味深い数値である。
プラットフォームはともにエンジン横置き用で、C5 XはグループPSAから使う「EMP2」を、クラウンはGA-Kを、それぞれベースにしている。最新のEMP2を採用するC5 Xの仲間にはプジョーの「308」や「408」、それに「DS 4」などがある。トヨタのGA-Kはカムリ、ハリアーから「アルファード」「センチュリー(SUV)」まで、幅広いモデルで使われている。トレッドは若干狭いものの、クラウンのホイールベースの2850mmはレクサスRXと同じだ。
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価格もほとんど同じ
いずれにせよ、どちらもエンジン横置きの前輪駆動用プラットフォームを採用しているわけで、これがそっくり説の土台になっている。もしもクラウンがこれまでどおり、縦置きプラットフォーム、例えばレクサスの「LS」「LC」と同じ「GA-L」を採用していたとしたら、C5 Xと比較の対象になることなどなかったろう。
最後にパワートレインである。C5 XにはグループPSA系ではおなじみの1.6リッター直4ターボと、その直4ターボにモーターとリチウムイオン電池を搭載したプラグインハイブリッドがある。今回のテスト車は後者のプラグインハイブリッドである。
一方のクラウン クロスオーバーには2.4リッター直4ターボ+モーターと、2.5リッター直4自然吸気+モーターという2タイプのハイブリッドがある。このうちテスト車は前者、「デュアルブーストハイブリッドシステム」とも称される高性能モデル用のパワーユニットで、これまでのトヨタ式ハイブリッドシステムとは異なり、エンジンの大パワーを生かすべく、モーターがエンジンと6段ATの間に組み込まれている。テスト車はこの高性能ハイブリッドシステムを搭載するクラウン クロスオーバーの最上級モデル「RS“アドバンスト”」である。
テスト車の「シトロエンC5 Xプラグインハイブリッド」は車両価格653.8万円。トヨタ・クラウン クロスオーバーRS“アドバンスト”は640万円で、価格もそっくり、とは言わぬまでも、ほとんど同じだ。
では、乗ってみてはどうなのか? 以下後編につづく。
(文=今尾直樹/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
トヨタ・クラウン クロスオーバーRS“アドバンスト”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1840×1540mm
ホイールベース:2850mm
車重:1950kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:272PS(200kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:460N・m(46.9kgf・m)/2000-3000rpm
フロントモーター最高出力:82.9PS(61kW)
フロントモーター最大トルク:292N・m(29.8kgf・m)
リアモーター最高出力:80.2PS(59kW)
リアモーター最大トルク:169N・m(17.2kgf・m)
システム最高出力:349PS(257kW)
タイヤ:(前)225/45R21 95W/(後)225/45R21 95W(ミシュランeプライマシー)
燃費:15.7km/リッター(WLTCモード)
価格:640万円/テスト車=722万5550円
オプション装備:ボディーカラー<ブラック×エモーショナルレッドII>(16万5000円)/ドライバーサポートパッケージ2(23万6500円)/リアサポートパッケージ(27万9400円)/デジタルインナーミラー(4万4000円)/ITSコネクト(2万7500円) ※以下、販売店オプション フロアマット<エクセレントタイプ>(6万7100円)/HDMI入力端子(6050円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:9187km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:509.1km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.9km/リッター(車載燃費計計測値)
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シトロエンC5 Xプラグインハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4805×1865×1490mm
ホイールベース:2785mm
車重:1790kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:180PS(132kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:110PS(81kW)/2500rpm
モーター最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/500-2500rpm
システム最高出力:225PS
システム最大トルク:360N・m
タイヤ:(前)205/55R19 97V XL/(後)205/55R19 97V XL(ミシュランeプライマシー)
ハイブリッド燃料消費率:17.3km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:65km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:65km(WLTCモード)
交流電力量消費率:188Wh/km(WLTCモード)
価格:653万8000円/テスト車=662万6715円
オプション装備:メタリックペイント<グリアマゾニトゥ>(7万1500円)/ETC+取り付けブラケット(1万7215円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1万4123km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:338.0km
使用燃料:27.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.2km/リッター(満タン法)/12.6km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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