「スバルBRZ STI Sport」でMT車用の「アイサイト」を試す
2023.10.06 デイリーコラムアイサイト搭載車両は550万台超え
スバルが2023年9月22日に発表した、FRスポーツカー「スバルBRZ」の一部改良モデル。トピックはスバルのモータースポーツ部門、STIによる専用開発サスペンションを装備した「STI Sport」グレードの追加設定だが、もうひとつ、マニュアルトランスミッション車(MT車)向けの「アイサイト」が初めて導入されたことも忘れてはいけない。
ここであらためて紹介するまでもなく、アイサイトはステレオカメラの映像をベースとするスバル独自の運転支援システムである。「ぶつからないクルマ」とのうたい文句はあまりにも有名で、テレビコマーシャルを見て販売店に「アイサイトください」と訪れた人もいたという。
プリクラッシュブレーキや追従機能付きクルーズコントロールなどの機能に加え、3つのカメラとレーダーが備わる最新バージョンでは、クルマやバイク、歩行者、自転車までを幅広く認識。見通しの悪い交差点や路地を通過する際などの左右が見えにくいシーンでは前側方からの接近車両を認識し、また、プリクラッシュブレーキが作動しても衝突回避が難しい場合、周囲にスペースがあればハンドル操作を車両がサポートし回避を行う機能も盛り込まれている。
3D高精度地図データやGPSと準天頂衛星を利用し、渋滞時のハンズオフ機能や車線変更のアシスト、ETCレーンで適切な車速に減速するなど高速道路での運転をサポートする「アイサイトX」も一部車種で選べる。ちなみに2008年5月の発売以来、アイサイトを搭載した車両の全世界販売台数は550万台を超えているという。
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MT車用のプリクラッシュブレーキを体験
新たに導入されたMT車用のアイサイトは、BRZのAT車用システムをベースに改良が加えられたもので、2つのカメラが搭載される。衝突回避や衝突被害軽減、運転負荷軽減の各制御をMT車の特性に合わせ、幅広いシーンにおいて安定した動作を実現しながら、運転する楽しさと安心を高い次元で両立したと紹介される。
具体的には、プリクラッシュブレーキと追従機能付きクルーズコントロール、車線逸脱/ふらつき警報、先行車発進お知らせ、スバルリアビークルディテクション(SRVD=後側方ソナー警戒支援システム)の各機能が備わる。誤発進/誤後進抑制機能や後退時ブレーキアシスト機能はドライバー自身のクラッチ操作が必要なMTゆえに非採用となっている。そのかわりに障害物への接近を検知するクリアランスソナーは備わる。
では、3つのカメラを備える最新のアイサイトに比べシンプルにして必要最小限の機能に絞られたMT車用のアイサイトは、実際にはどんなフィーリングなのか。今回、クローズドコースの特別体験プログラムでプリクラッシュブレーキの実力を試すことができた。
車両はオプションとなるゴールドキャリパーのブレンボ製ブレーキが装着されたBRZ STI Sportの6段MT車。アイサイトはMT全車に標準装備のアイテムである。まずは鮮やかなブルーの「スバル・クロストレック」を模したダミーに向かって約20km/hで走行。ギアは2速である。
アイサイトの発するブレーキ操作を促す車両接近警告音を無視してアクセルを踏み、左足をフットレストに乗せたままダミーに接近。ダミーの目前でプリクラッシュブレーキが作動しクラッチペダルを踏む間もなく、結構な減速Gとともに車両は完全停止。当然エンストしている。「ブレンボのブレーキ、すごいな」と独り言が口をついたが、今回の試走で注目すべきはそこではなかった。
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朗報以外のなにものでもない
ドライバー的な心境でいえばMT車でのエンストは恥ずかしいので避けたいところだが、いまはMT車用のアイサイトの機能を体験することが主眼である。今度は同じく20km/hで無理やり3速に入れて再チャレンジ。結果は同じくプリクラッシュブレーキによってダミーの80cm程度手前でBRZは完全停止し、と同時にエンストした。
3度目は完全停止直前にクラッチペダルを踏み、エンスト回避を目指す。完全停止を待たずにクラッチを切るのがコツだった。
ここでわかったのは、ギアが何速に入っていても、そしてクラッチペダルを操作してもプリクラッシュブレーキは問題なく作動するということである。また、完全停止から3秒はブレーキの制動力が維持される。
リアルワールドではプリクラッシュブレーキが作動し車両が完全停止した時点で多くのドライバーは無意識にブレーキペダルを踏んでいるはずだが、万が一パニックになってブレーキペダルを踏んでいなくても、車両がすぐに動きだすことはない。もっともギアが入ったままの自動停止であれば、当たり前だがクラッチペダルを踏まない限り車両は静止状態を保つ。
追従機能付きクルーズコントロールを試すことはできなかったが、30km/hから約120km/hの車速域でギアが2速~6速に入っている場合にクルコンを作動させることができるという。ドライバーがクラッチペダルやシフトレバーを操作してもその作動状態は継続する(クラッチを5秒以上踏み続ける、またはギアを5秒以上ニュートラルに入れ続けるとシステムがキャンセルされる)。これは姉妹車の「トヨタGR86」も同じである。
MTのBRZやGR86に乗りたいが、アイサイトが搭載されていないのであきらめたという方がもしいれば、今回の改良は朗報以外のなにものでもない。日立Astemo製SFRDフロントダンパーが採用されたSTI Sportの走りも気になるが、それはまた別の機会に報告させていただこう。
(文=櫻井健一/写真=スバル、花村英典、webCG/編集=櫻井健一)
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櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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