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ルノー・エスパス【海外試乗記】

これなら合格! 2023.11.16 アウトビルトジャパン AUTO BILD 編集部 昔からの名前でラインナップされている、ルノーの新しいクルマ「エスパス」。そのボディーは大きいままだが、オフロードも行けるSUVタイプに変化した。6代目となる最新モデルはどの程度優れているのか、テスト走行で明らかにする。

※この記事は「AUTO BILD JAPAN Web」より転載したものです。
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価格の割には……

この名前なら、これまでの歴史を深く掘り下げることもできるだろう。しかし、あえてそれはしない。試そうとも思わない。というのも、新型ルノー・エスパスは、先代モデルとの共通点がバゲットとプンパニッケルのように「何もない」からだ! ミニバンのアイコンであることをやめ、典型的なSUVになってしまったのだ。

大げさな見た目だが、それほど悪くはない。新型エスパスの全長は4.7m超と堂々としており、メルセデスの「Rクラス」を思わせる、ツアラーのような細長いルーフを持っている。つまり、決して退屈なクルマではないのだ!

これはマーケティングコンセプトやテクノロジーにも当てはまる。エスパスのパワートレインはハイブリッドしかなく、「7人乗り」のオプションがあって、3つのラインといくつかのパッケージを選ぶことができる。

おかげで物事がシンプルになるほか、さらに良いことに、トップモデルの「E-TECHフルハイブリッド200アイコニック」(われわれのテスト車)は、基本的に現代のクルマに求められるすべてを備えている。5万ユーロ(約800万円)をはるかに下回る価格でだ。さまざまな技術が生かされ、高水準の装備をそろえたこのようなトップモデルが、どの程度その仕事をこなせるかが、最初のテストの主題である。

6代目となる「ルノー・エスパス」。これまでミニバンとして知られてきた同モデルだが、最新型はSUVへと生まれ変わった。
6代目となる「ルノー・エスパス」。これまでミニバンとして知られてきた同モデルだが、最新型はSUVへと生まれ変わった。拡大
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スペースコンセプトは失敗

まずスペックを見てみよう。3気筒ガソリンターボエンジンに2つのモーター、複雑な動力分配システム(ルノーはクラッチなしのトランスミッションをマルチモードオートマチックと呼ぶ)からなる特別なハイブリッド駆動は、最高の燃費値を約束する。

後輪操舵を含む精巧なシャシー設計は、運転操作に対する俊敏な走りを実現する。空間を巧みに利用すべく、ロングホイールベースであるとともに、3列目のベンチシートも用意される。しかし、忘れてはならないことがある。約800平方cmものディスプレイスペースで、エスパスは乗員に情報を提供し、楽しませてくれるのだ。

実際には、その効果はかなりまちまちである。例えばエスパスは、スペースコンセプトで重要なポイントを満たせていない。このゆったりとしたサイズのクルマは前席と2列目シートの乗員に十分なスペースを提供しているが、窓のラインが高いため、そのことが非常にわかりにくい。

一方、3列目は子供しか使えない。大人にとってはヘッドルームが狭すぎて、乗り込むのも難しく、2列目シートの折りたたみ式背もたれとドアフレームの間にある狭い“切り欠き”から(威厳を保ちながら)車外に出るのは不可能だ。前席も、もっと輪郭をはっきりさせたほうがいい。膨らんだシート表皮のせいでシートの沈み込みが少なすぎて、サイドボルスターの恩恵を十分に受けることができない。

操作についてのコンセプトは、はるかに優れている。クライメートコントロールの固定ボタンはドライバーへの風向きを保つのに役立ち、ドライバー用ディスプレイには機能がシンプルかつ明確に表示される。タッチスクリーンには、通常は無数のメニュー・機能が表示されていて、慣れが必要だ。中央のディスプレイ自体がドライバーから遠い位置にあり、アイコンにタッチするには座席から身を乗り出さなければならない。

パワートレインは2つのモーターを備えるハイブリッドのみ。今回のテストでは約15.4km/リッターの燃費を記録した。
パワートレインは2つのモーターを備えるハイブリッドのみ。今回のテストでは約15.4km/リッターの燃費を記録した。拡大

燃費はなかなかのもの

いざ運転すると、新型ルノー・エスパスは魅力的だ。サスペンションは快適で、大きな段差でも、このSUVはスポンジのようにバウンドすることなく、長いサスペンショントラベルを生かして走り抜けていく。20インチタイヤは軽快な転がり感で、走行ノイズは小さい。そして、かなりフラットな235タイヤは、このフランス車の優れた制動力に寄与する。

ルノーはドライビングセーフティーに細心の注意を払っている。微妙なアンダーステアをはじめコーナリングでの荷重変化に対してはESPが制御してくれ、気持ちのいいほど厳格にスピードを抑制する。

市街地では、車重1754kgのこのクルマはとても機敏で、伸びやかで、操舵しやすく感じられる(リアアクスルステアリングの働きも大きい)。最小回転直径10.8mという小回りの良さは長所であり、高速走行においてステアリングの修正に敏感に反応してしまう点はマイナスといえる。

ガソリンエンジンは、アクセルペダルの操作次第で興奮気味に鳴いたり、ゆったりとハミングしたりする。それは、バッテリーの充電レベルによっても変化する。というのも、運転モードの特性は常に「勝手に」呼び出せるものではないからだ。リニアに発進し、穏やかな電気の力だけで伸びやかに加速するときもあれば、(1.2リッターエンジンの力を借りて)うなるような振動とともに動き出すときもある。

(全負荷時の)120km/h走行中にギアチェンジする際、永遠に続くかのような長い休止があったり、(軽負荷時の)130km/h以上でトランスミッションのレシオがギクシャクと変化したりすることもあった。しかし重要なのは、マルチモードトランスミッション、電動モーター、3気筒エンジンの複雑な相互作用が機能していることだ。テストでは、最高出力およそ200PSのこのルノーが走行100kmあたり必要とした燃料はわずか6.5リッター(つまり約15.4km/リッター)だった。SUVとしても、MPVとして考えても、なかなかの燃費でないだろうか。

結論

比較的リーズナブルな価格と豊富な装備、最新技術、経済的な走り、そして優れた安全性。エスパスは、優れた資質を兼ね備えた特別なモデルである。要するに、エスパスは(残念ながら)もはやミニバンではないが、SUVとして合格なのだ。

(Text=Berend Sanders and Jan Horn/Photos=Renault and Michael Nehrmann and Roman Rätzke)

記事提供:AUTO BILD JAPAN Web(アウトビルトジャパン)

コックピット周辺部の様子。大きなディスプレイが目を引く。
コックピット周辺部の様子。大きなディスプレイが目を引く。拡大
「エスパス」のショルダーラインはやや高め。前席と2列目のスペースはゆったりしているが、外観からはそのことは伝わりにくい。
「エスパス」のショルダーラインはやや高め。前席と2列目のスペースはゆったりしているが、外観からはそのことは伝わりにくい。拡大
AUTO BILD 編集部

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