大きなホイールの長所・短所は?
2024.01.16 あの多田哲哉のクルマQ&Aスーパースポーツやドレスアップ車に限らず、クルマのホイールは、むかしに比べてずいぶん大きくなったように思います。その要因は、やはり見た目なのでしょうか。機能のうえで、大きいホイールにどんなメリット/デメリットがあるのか知りたいです。
ホイールが大きくていいことなんて、ひとつもありません(笑)。
……というのは極端な言い方ですが、あるとしたらひとつだけ。「大きなブレーキシステムが入れられる」ということです。
世の中で大径化がはやっているのは「見た目がよくなるから」。しかし、ホイールが大きくなるということは、タイヤのハイトが低くなることにもつながります。
ローハイトタイヤにどんなメリットがあるかといえば……これが、なにもない。乗り心地は悪いですし、バーストの危険は高まります。「横方向の剛性を高められるので操縦安定性が向上する」という意見もありますが、いまの技術であれば、もっとハイトがあっても剛性は得られます。
スーパースポーツモデルが大径ホイールを採用するのは、先に触れたとおり、大きなブレーキキャリパー/ブレーキローターを組み込むため。制動性能(と、やはり見た目)が理由なんです。
F1マシンのホイールがさほど大きくない(長年にわたり13インチで、2022年からは18インチになり、2026年にはインチダウンがうわさされている)のを見てもらえばわかるとおり、単純に「大径であれば、総じて走行性能は上がる」ということはありません。
身もふたもないことですが、機能のうえではデメリットばかりといえるでしょう。

多田 哲哉
1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。