いまクルマはいくらで買える? 新車のスタート価格を知る
2024.02.05 デイリーコラムその値段ならなんとかなる(かも)
「すっかり高止まり」「これでは若者は買えない」などと言われているのが、昨今販売されている新車の価格である。確かに、ちょっとしたSUVの新車を買おうとすれば総額300万円を軽く超え、いわゆるコンパクトカーであっても、中間グレードのハイブリッド車にいくつかのオプション装備を付ければ、300万円に迫ろうかという支払総額になる。それを、手取り月収20万円そこそこの若衆に「さあ、お買いなさい!」と迫るのはいささか無理があるだろう。
だがしかし! 世の中には「安価な車種」または「安価なグレード」というのもあるわけで、そういったカテゴリーに入るクルマであれば、その支払総額は、世間がなんとなくイメージしているよりは安い可能性もあるのではないか?
まぁ「ではないか?」と言っていても意味がないので、具体的な安値を調べてみることにしよう。まずは軽自動車である。
軽自動車でとにかく安いクルマといえば75万2400円から買える「スズキ・キャリイ」であり、次点として86万0200円からの「ダイハツ・ミラ イース」ならびにそのOEM供給車である「トヨタ・ピクシス エポック」が思い当たるのだが、軽トラをふだん使いにするのもアレであり、ミラ イース系は2024年2月1日現在出荷停止となっているので(関連記事)、軽乗用車の最安は106万4800円の「スズキ・アルトA」(FF車)としたい。
まずはこれの「ダスクブルーメタリック」というシックなボディーカラーを無償で選び、標準はオーディオレス仕様なので、オプションの「バックアイカメラ付きディスプレイオーディオ」を5万5000円で装着する。で、一番安いフロアマット(6820円)を付けた際の、諸費用コミの支払総額は123万2580円だ。この金額であれば、若手サラリーマンだった頃の自分でも何とかなりそうである。ナビはスマホを接続して代用し、ETC車載器はオートバックスかどこかで安いやつを付けてもらうことにしよう。
コンパクトカーなら「200万」を切る
お次はいわゆるコンパクトカー。スズキの「イグニス」(161万1500円~)が最安なのかな? となんとなく思っていたが、実際は「トヨタ・ヤリスX」(1リッターのガソリン車でFF/CVT)のほうが150万1000円と安かった。ヤリスに乗るなら本当はハイブリッドにしたいところだが、背に腹は代えられないので、取りあえず1リッターガソリンでよしとしたい。
で、これのボディーカラーには鮮やかな「ブラック×コーラルクリスタルシャイン」というバイトーンを選びたいのだが、それだと7万7000円も余計にかかってしまうため、ここはひとつ無償カラーの「ブラック」でシブくまとめることにしよう。そして一番安い「フロアマット(ベーシック)」を1万4300円で付け、これもまた標準だとオーディオレスであるため、なるべく安いオプション装備である「パノラミックビューモニター+ETC車載器+ディスプレイオーディオ(コネクティッドナビ対応)」を14万8500円で装着。
とすると、諸費用を合わせた総額は180万5050円と出た。オートバックスなどでドラレコを付けても190万円でお釣りがくるだろう。「遅いけど、1リッターガソリンエンジンのほうが踏めて楽しい! 装備もシンプルなほうがフランス車っぽくてすてき!」と思い込めるなら、コンパクトカーの新車は意外と高くはない。
SUVは“本格派”も狙える
現代の大人気カテゴリーであるSUVはどうか? 軽以外のSUVでは、本来なら「ダイハツ・ロッキー」ならびに「トヨタ・ライズ」が最安圏なのだが、これまたダイハツの不正問題の関係で今は買うことができないため、差し当たっては186万3400円の「スズキ・ジムニーシエラJL」(5段MT)を、直近の最安新車SUVとしよう。おおっシエラ! すてきやんけ!
で、ジムニーシエラJLに用意されているボディーカラー(単色)はどれを選んでも0円なのだが、筆者としては「ミディアムグレー」をぜひ選びたい。で、例によってフロアマットは一番安い「フロアマット・ジュータン ノーブル」というやつを1万1880円で装着し、またこれもオーディオレスであるため、一番安いディーラーオプションである「スタンダード8インチ+オーディオ交換ガーニッシュ+アンテナセット+アンテナ変換ケーブル」を22万1100円にて装着。
すると、諸費用を合わせた支払総額は226万5725円であるとのこと。オートバックスかイエローハットでETC車載器とドラレコを付けてもらって、本当の総額は「230万円ちょい」になるだろうか。今の世にあってはなかなかお安い乗り出し価格であるように思える。ただしジムニーシエラの場合は「納期」がちょっと心配だが。
ガイシャも無縁のものではない
ふと、いまや国内市場でシェア半数以上を占める“トヨタ車”ではどうか? という考えが頭をよぎるも、その答えは前述のとおり「ヤリス」だった。では、海外からやってくる輸入車の価格についてはどうだろうか。
人気の輸入車をいま新車で買うとなると、「ポルシェ911カレラ」の場合でおおむね総額1800万円は必要であり、はるかに価格の低い、例えば「BMW 116i」であっても総額は軽く400万円を超える。若衆にはちょっと難しい金額であり、おっさんである筆者だって、正直、厳しい。
だが車両価格250万円也の「ルノー・トゥインゴ インテンスEDC」であればなんとかなる! ……と思ったのだが、残念ながら2023年末で生産終了となったため、まだ買えるかどうかは微妙。ということで、現実的な線としては273万9000円の「フォルクスワーゲン・ポロTSIアクティブ ベーシック」を狙うことになるだろうか。
で、これもボディーカラーは無償な割にカッコいい「ディープブラックPE」を選び、フロアマットは一番安い「フロアマット(チェック)」というやつを3万3000円で装着。純正インフォテインメントシステムである“Ready 2 Discover”は標準装備ということで「ほかに付けるものはなし! ナビはスマホをApp-Connectで接続して代用するぜ!」という方針で臨めば、諸費用を合わせた支払総額は294万7050円でおさまるもよう。ギリギリ300万円以下だ。
まぁ実際には「もっといいグレードが欲しい(せめて中間グレードにしたい……)」とか、「あのオプション装備も付けたい!」となるだろうため、筆者もこのシミュレーションどおりにいくとは思っていない。だが「シンプルな車種&グレード+最低限の装備でよし」と考えるのであれば、新車もさほどバカ高くはないのだ。いや正確には、「スタート価格が高くない新車もあるのだ」ということである。
(文=玉川ニコ/写真=スズキ、ダイハツ工業、トヨタ自動車、フォルクスワーゲン ジャパン/編集=関 顕也)

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
-
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代NEW 2025.9.17 トランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。
-
スズキが未来の技術戦略を発表! “身近なクルマ”にこだわるメーカーが示した問題提起 2025.9.15 スズキが、劇的な車両の軽量化をかなえる「Sライト」や、次世代パワートレインなどの開発状況を発表。未来の自動車はどうあるべきか? どうすれば、生活に寄りそうクルマを提供し続けられるのか? 彼らの示した問題提起と、“身近なクルマ”の未来を考える。
-
新型スーパーカー「フェノメノ」に見る“ランボルギーニの今とこれから” 2025.9.12 新型スーパーカー「フェノメノ」の発表会で、旧知の仲でもあるランボルギーニのトップ4とモータージャーナリスト西川 淳が会談。特別な場だからこそ聞けた、“つくり手の思い”や同ブランドの今後の商品戦略を報告する。
-
オヤジ世代は感涙!? 新型「ホンダ・プレリュード」にまつわるアレやコレ 2025.9.11 何かと話題の新型「ホンダ・プレリュード」。24年の時を経た登場までには、ホンダの社内でもアレやコレやがあったもよう。ここではクルマの本筋からは少し離れて、開発時のこぼれ話や正式リリースにあたって耳にしたエピソードをいくつか。
-
「日産GT-R」が生産終了 18年のモデルライフを支えた“人の力” 2025.9.10 2025年8月26日に「日産GT-R」の最後の一台が栃木工場を後にした。圧倒的な速さや独自のメカニズム、デビュー当初の異例の低価格など、18年ものモデルライフでありながら、話題には事欠かなかった。GT-Rを支えた人々の物語をお届けする。
-
NEW
第844回:「ホンダらしさ」はここで生まれる ホンダの四輪開発拠点を見学
2025.9.17エディターから一言栃木県にあるホンダの四輪開発センターに潜入。屋内全天候型全方位衝突実験施設と四輪ダイナミクス性能評価用のドライビングシミュレーターで、現代の自動車開発の最先端と、ホンダらしいクルマが生まれる現場を体験した。 -
NEW
アウディSQ6 e-tron(4WD)【試乗記】
2025.9.17試乗記最高出力517PSの、電気で走るハイパフォーマンスSUV「アウディSQ6 e-tron」に試乗。電気自動車(BEV)版のアウディSモデルは、どのようなマシンに仕上がっており、また既存のSとはどう違うのか? 電動時代の高性能スポーツモデルの在り方に思いをはせた。 -
NEW
第85回:ステランティスの3兄弟を総括する(その3) ―「ジープ・アベンジャー」にただよう“コレジャナイ感”の正体―
2025.9.17カーデザイン曼荼羅ステランティスの将来を占う、コンパクトSUV 3兄弟のデザインを大考察! 最終回のお題は「ジープ・アベンジャー」だ。3兄弟のなかでもとくに影が薄いと言わざるを得ない一台だが、それはなぜか? ただよう“コレジャナイ感”の正体とは? 有識者と考えた。 -
NEW
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代
2025.9.17デイリーコラムトランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。 -
内燃機関を持たないEVに必要な「冷やす技術」とは何か?
2025.9.16あの多田哲哉のクルマQ&Aエンジンが搭載されていない電気自動車でも、冷却のメカニズムが必要なのはなぜか? どんなところをどのような仕組みで冷やすのか、元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんに聞いた。 -
トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】
2025.9.16試乗記人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。