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キーワードはUXデザイン! 新型「MINIクーパー3ドア/カントリーマン」はここがスゴい

2024.03.08 デイリーコラム 渕野 健太郎
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「UXデザイン」こそ新世代「MINI」の真骨頂

今回、新型「MINI」の発表会(その1その2)で、デザイン部門の責任者であるオリバー・ハイルマー氏のプレゼンテーションを聞く機会を得ました。興味深い内容でしたので、2台の新型MINIのデザイン解説とともにお伝えします。

私が今回のプレゼンで一番興味深かったことは、実はデザインを説明する「順番」なんです。今までなら慣習的に、コンセプト→エクステリア→インテリア→CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)→UI(ユーザーインターフェイス)という流れが一般的だったと思います。時代とともに追加されていったデザイン分野の順番、ともいえますね。

それが今回は、コンセプト→UI→サウンド→CMF→インテリア→エクステリアの順番でした。

ハイルマー氏は社内での役員提案の際、クルマそのもののデザインではなく「ストーリー」から提案したとも語っていましたが、いわゆる「UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイン」を重視したんですね。

UXデザインとは「顧客体験のデザイン」ということで、アプリやwebデザインの世界でよく使われる言葉ですが、近年はカーデザイン業界でもUXデザインが重要視されています。専門のチームをつくっているメーカーも多いと思いますよ。

クルマでいうUXデザインは、単にインターフェイスだけでなく、収納スペースなど物理的なものも含めていわれることが多いです。しかし、クルマというプロダクトの性質上、UXで差別化をすることは容易ではないんですよ。だからあまりピンとこない場合が多いんですよね。

そのなかで、新型MINIのUXは非常にしっくりきました。「没入感」という言葉を使っていましたが、大変魅力的な円形ディスプレイを中心としたUIデザイン、色の切り替えが可能なLEDの間接照明、ダッシュボードに複数の色やパターンを表示できるプロジェクターなどに加え、切り替えも可能なサウンドデザイン(サウンド専門のデザイナーがいるそうです)により、さまざまなキャラクターを「体験」できることが、新型MINIの一番のウリではないでしょうか。

このあたりの詳細は、実際に体験しないと分からない部分ですので、また機会があればお話しできればと思います。

いっぽう、カーデザインの花形であった「エクステリアデザイン」の順位が下がったのも、時代だなとあらためて感じました。

「MINIクーパーSE 3ドア」とMINIブランドのデザイン責任者 オリバー・ハイルマー氏。
「MINIクーパーSE 3ドア」とMINIブランドのデザイン責任者 オリバー・ハイルマー氏。拡大
丸いセンタークラスターを持つ「MINI」のインテリアが、センターモニター時代の「Mini」をオマージュしたものであることは有名な話だ。新型ではインストゥルメントパネルまわりが大幅にシンプルになったことで、より原典のイメージに近づいた。
丸いセンタークラスターを持つ「MINI」のインテリアが、センターモニター時代の「Mini」をオマージュしたものであることは有名な話だ。新型ではインストゥルメントパネルまわりが大幅にシンプルになったことで、より原典のイメージに近づいた。拡大
「MINIクーパー3ドア」には複数の「MINIエクスペリエンスモード」が設定されていて、モードに応じてUIのデザインや照明の色、ダッシュボードに投影される光の色・模様などが変化。各種操作音や走行時のサウンドなども切り替わる。
「MINIクーパー3ドア」には複数の「MINIエクスペリエンスモード」が設定されていて、モードに応じてUIのデザインや照明の色、ダッシュボードに投影される光の色・模様などが変化。各種操作音や走行時のサウンドなども切り替わる。拡大
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MINIクーパー3ドア
よりシンプルに、かつ新しく

そんななかですが、発表会場に展示されていた新型「MINIクーパーSE 3ドア」のエクステリアデザインは、非常にシンプルでありながら、存在感があるものに仕上がっていました。先代より全長は短く、タイヤ外形は大きくなったということで、軽快さが増したように思います。

MINI特有の「ゴーカートフィール」の表現として、低重心を印象づけるピークをドアにつけたということでしたが、これがすごく効いてましたね。またシンプルなのですが、リフレクション(反射や映り込み)の動きがあり、表情豊かなデザインだと思います。

従来の印象に近いフロントデザインに対し、リアデザインは変えてきました。リアコンビランプの、“ユニオンジャック”のグラフィックが起点になったと思うのですが、非常にまとまりがよく、一目で新型だと分かるのもいいと思います。やはりフロントは、オリジナルのアイコンが強すぎてデザインを変えられないですからね(笑)。

フロントは正面から見てもタイヤがしっかり見えるくらい下回りを絞り込んでいるのですが、リアは台形感が強いんですね。ややフロントとリアで「造形感」が違う印象も受けましたが、このあたりは、外で見るとデザイナーの真意が分かるかもしれません。

インテリアは、前述のとおり円形のディスプレイがすごく魅力的でした。これまでのMINIのインテリアは円形モチーフが多すぎて、少し落ち着かない印象を持っていたのですが、新型は非常にスッキリまとまっています。エクステリアと同様、“オリジナルMini”を尊重したデザインになっていますね。

またシフトスイッチやスターターなど、物理スイッチ類はシンプルにひとまとめにされており、「没入感」がウリのUXデザインを空間全体で構築している印象です。パイピングが施された、ややクラシカルなシートが従来のMINIらしさをうまく演出していました。

「MINIクーパー3ドア」はエンジン車と電気自動車(写真)とで寸法もデザインも違うので、今回は、会場に展示されていた電気自動車版のみを解説する。
「MINIクーパー3ドア」はエンジン車と電気自動車(写真)とで寸法もデザインも違うので、今回は、会場に展示されていた電気自動車版のみを解説する。拡大
丸い大きなヘッドランプなど、端々に“オリジナルMini”や過去3世代の「MINI」へのオマージュを感じさせるフロントまわり。前から見てもタイヤがのぞくぐらい、バンパーの左右が削り込まれている。
丸い大きなヘッドランプなど、端々に“オリジナルMini”や過去3世代の「MINI」へのオマージュを感じさせるフロントまわり。前から見てもタイヤがのぞくぐらい、バンパーの左右が削り込まれている。拡大
リアまわりは三角形のテールランプなどでイメージを刷新。前後のランプには3種類の光り方が設定されていて、その日の気分によって変えられる。
リアまわりは三角形のテールランプなどでイメージを刷新。前後のランプには3種類の光り方が設定されていて、その日の気分によって変えられる。拡大
UIの中核をなす巨大な円形の有機ELディスプレイ。画面は高精細で操作性も良好。表示のデザインやレイアウトもきれいで分かりやすい。
UIの中核をなす巨大な円形の有機ELディスプレイ。画面は高精細で操作性も良好。表示のデザインやレイアウトもきれいで分かりやすい。拡大
「MINIクロスオーバー」の後継を担う「MINIカントリーマン」。顔まわりは厚みがあるうえに各所の面が広く取られており、ボリューム感、押し出し感が強い。
「MINIクロスオーバー」の後継を担う「MINIカントリーマン」。顔まわりは厚みがあるうえに各所の面が広く取られており、ボリューム感、押し出し感が強い。拡大
新旧2モデルの横顔を見ると、旧型の「MINIクロスオーバー」がバンパーのみを出っ張らせているのに対し、新型の「MINIカントリーマン」は顔全体が前にせり出している。
新旧2モデルの横顔を見ると、旧型の「MINIクロスオーバー」がバンパーのみを出っ張らせているのに対し、新型の「MINIカントリーマン」は顔全体が前にせり出している。拡大
リアまわりでは、空力性能の向上とラゲッジスペースの容量アップをねらってルーフラインを後ろに延長。SUVらしさが増した。
リアまわりでは、空力性能の向上とラゲッジスペースの容量アップをねらってルーフラインを後ろに延長。SUVらしさが増した。拡大
厚みのあるダッシュボードを除くと、インストゥルメントパネルまわりのコンセプトは「MINIクーパー3ドア」と共通。各部の質感の高さは、さすがMINIだ。
厚みのあるダッシュボードを除くと、インストゥルメントパネルまわりのコンセプトは「MINIクーパー3ドア」と共通。各部の質感の高さは、さすがMINIだ。拡大
よりシンプルに、アイコニックにな「MINIクーパー3ドア」と、“伝統のデザイン”から大きく一歩を踏み出した「MINIカントリーマン」。MINIには「コンバーチブル」も「5ドア」も「クラブマン」もあるわけで、新時代のデザインコンセプトがブランド内でどう展開されていくのかも、非常に楽しみだ。  
よりシンプルに、アイコニックにな「MINIクーパー3ドア」と、“伝統のデザイン”から大きく一歩を踏み出した「MINIカントリーマン」。MINIには「コンバーチブル」も「5ドア」も「クラブマン」もあるわけで、新時代のデザインコンセプトがブランド内でどう展開されていくのかも、非常に楽しみだ。拡大

MINIカントリーマン
新しいデザインで新しい顧客層を取り込めるか

さて、MINIクーパー3ドアがオリジナルを尊重したデザインになったのに対し、SUVの「MINIカントリーマン」は、これまでのMINIが手を届かせられなかったファミリー層に訴求できるよう、旧型にあたる「MINIクロスオーバー」よりかなり大型化されました。もう見た目は本格SUVですね。寸法的なものだけでなく、きちんとSUVのデザイン手法が取り入られています。

一番それが表れているのは顔まわりですね。旧型ではバンパーが出っ張っていました。衝突安全性を確保するビーム部は削れないのでバンパーとして残し、比較的自由度があるヘッドランプとフロントグリルをできるだけ後方に下げて、オーバーハングを軽く見せたかったからだと思います。これで、軽快な「MINIらしさ」を担保していたんですね。いっぽうの新型は、「MINIらしさ」よりも「SUVらしさ」を取ったデザインという印象です。大きなグリルが上から下まで一体になっており、周辺の面も大きく、強いです。

またルーフラインは荷室の容積と空力を意識して後ろに伸ばした、ということですが、これでリアオーバーハングが長くなり、Dピラーが立ったので、ここでもSUVらしさが出ていますね。細部の造形処理はMINIらしいユニークさもあり、さすがに質感も高いです。

MINIというブランドなので、初見では少し違和感があったのですが、私のように子供がいる家族には大きさ的にピッタリなので、新たな顧客層に訴求できるのではないでしょうか。

今回、MINIカントリーマンは8年ぶり、MINIクーパー3ドアは実に10年ぶりのモデルチェンジということでしたが、もともとタイムレスなアイコンなので、デザインの印象を変えるだけのモデルチェンジは難しいと思います。

しかし、今回UXデザインを新たな「MINIらしさ」とし、それを統一することでカントリーマンは大幅なデザイン変更に出られたのではないでしょうか。いっぽう、クーパーのほうは従来のMINIらしさをデザインでもしっかり踏襲しているので、ラインナップ全体の戦略が見事だと思いました。私は新型MINIクーパー、欲しいです!

(文=渕野健太郎/写真=BMW、webCG/編集=堀田剛資)

 
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渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

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