プジョー408 GTハイブリッド(FF/8AT)/マセラティ・グレカーレ トロフェオ(4WD/8AT)/ルノー・カングー ヴァリエテ(FF/7AT)
これまでとは一味違う 2024.03.17 JAIA輸入車試乗会2024 ラテンの国のブランドから「プジョー408」と「マセラティ・グレカーレ」「ルノー・カングー」をピックアップ。各車がグローバルモデルとして展開されるいま、どんな変化や進化を遂げているのだろうか?今どきのライオン
プジョー408 GTハイブリッド
なんとも不思議なかっこうだ。セダンと呼ぶにはキャラが強いし、SUVにしては背が低い。だからクロスオーバーなんだろうけど、SUVに寄せたクロスオーバーが多いなか、セダン、ハッチバック、クーペ、SUVをあんばいよくブレンドしたフォルムが新鮮だ。プジョー自身はこの408を「解き放たれた、新種。」と表現する。
「解き放たれた」とうたうだけあって、「ライオンの牙モチーフのデイライト」「かぎ爪デザインのリアLEDライト」「ライオンの耳を思わせるリアスポイラー」(いずれもオフィシャルサイトより)などなど、ライオンずくめである。ボディーと一体化したフレームレスグリルでは、新デザインのライオンエンブレムが目を引く。たしかに「新種」のライオンのような(?)躍動感がある。
408は、今のプジョーのフラッグシップだけあって、内装にも高級感がある。インパネやシートなど、基本デザインは「308」と共通しているが、レザーやスエード、ソフトパッドがうまく使い分けられたインテリアの仕上がりは、欧州のプレミアムブランドと肩を並べる。プジョー独自の「i-Cockpit(iコックピット)」も“らしさ”を演出するポイントだ。「GT」グレードのメーターは3D表示となっていて、速度などの情報を素早く認識できる。小径のステアリングがまたいい。メーターが見やすく、操舵しやすいだけでなく、乗降性にも効いている。
今回試乗したのは、プラグインハイブリッド車の408 GTハイブリッド。左のリアフェンダーに普通充電用ポートが備わっていて、出力6kWの充電器なら約2時間30分で満充電にできる。EV走行距離は66km(WLTCモード)とそこそこ長いので、近所への買い物などがメインの方なら、ほとんどガソリンを使うことなく乗れるだろう。
走りはどうか? いわゆる“ネコアシ”を期待すると、肩すかしにあうかもしれない。道路の継ぎ目などのショックはうまくいなすし、フラット感も十分だけど、あきれるほどにまろやかなわけでもなければ、印象的なほどにふわんふわんと走らせるわけでもない。いかにもグローバルモデルらしい、現代的な仕立てになっている。
プジョー408に興味を持つ人は、そのスタイルに引かれるのだろう。ラインナップは、1.2リッターガソリン搭載で受注生産の「408アリュール」、同じく1.2リッターガソリンの「408 GT」、そしてプラグインハイブリッド「408 GTハイブリッド」の3グレードで展開される。ステランティスのモデルとしては珍しく、2023年7月の発売時から値上がりしていないこともあって、429万円のアリュールは超お買い得だと思う。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4700×1850×1500mm/ホイールベース:2790mm/車重:1740kg/駆動方式:FF/エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(最高出力:180PS/6000rpm、最大トルク:250N・m/1750rpm)/モーター:交流同期電動機(最高出力:110PS/2500rpm、最大トルク:320N・m/500-2500rpm)/システム最高出力:225PS/システム最大トルク:360N・m/トランスミッション:8段AT/ハイブリッド燃料消費率:17.1km/リッター(WLTCモード)/EV走行換算距離:66km(WLTCモード)/充電電力使用時走行距離:66km(WLTCモード)/交流電力量消費率:193Wh/km(WLTCモード)/価格:629万円
エンジンがいい!
マセラティ・グレカーレ トロフェオ
「グラントゥーリズモ」よりも、もっとグラントゥーリズモなんじゃないの!? 「MC20」譲りの“ネットゥーノ”を搭載した「グレカーレ トロフェオ」に乗って、そう思った。
とにかくエンジンがいい。スターターボタンをプッシュすると、3リッターV6ツインターボはさり気なく目覚める。「グオーーン」と鳴り響いて人々の眉をひそめさせた、これまでのマセラティとは違うのだ。
グレカーレ トロフェオは、走りだしても品がいい。「ステルヴィオ」などと同じジョルジョ・プラットフォームがベースなので、やや硬めの足まわりを想像していたけれど、乗り心地は重々しくも快適で、しっかりとしたボディーに包み込まれたような安心感がある。
インテリアに定評のあるマセラティだけに、そのしつらえのよさも印象的だ。黒のレザーシートには赤いステッチがあしらわれていて、ダッシュボードに収まるデジタル時計にはGメーターなどの表示機能も備わっている。後席も前席と同じく職人の手縫いで仕立てられていて、その広くて快適なこともグレカーレの魅力のひとつだ。
ドライブモードは「COMFORT」「GT」「SPORT」「CORSA」「OFFROAD(オプション)」から選択可能で、標準となるGTモードで走っていると、エンジンの静かでスムーズな回転フィールからも上質感が伝わってくる。
だけどこのエンジンはスムーズさだけが売りじゃない。MC20のものからデチューンされてはいても最高出力530PSを誇り、2030kgの重量級ボディーを、0-100km/h加速3.8秒、最高速度285km/hで走らせるハイパフォーマンスユニットなのだから。
上質なレザーやカーボンの装飾パネルでぜいたくに仕上げられた室内におさまり、ドライブモードと速度に応じてボリュームと音質が変化するエキゾーストサウンドを味わう。グレカーレ トロフェオには、最高のGTカーと呼べる要素がそろっている。
品がいいとはいえないけれど、「一番高いの持ってきて」の世界がここにある。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4860×1980×1660mm/ホイールベース:2900mm/車重:2030kg/駆動方式:4WD/エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ(最高出力:530PS/6500rpm、最大トルク:620N・m/3000-5500rpm)/トランスミッション:8段AT/燃費:11.2リッター/100km(約8.9km/リッター、WLTCモード)/価格:1683万円
ドレスアップか ドレスダウンか
ルノー・カングー ヴァリエテ カラーバンパー
いつもカングーが気になっている。初代からずっとそうだ。このJAIAの試乗会においても、歴代のカングーを何度も取材してきた。
なにがそんなに気に入っているのか。ハードウエアの出来のよさも重要なポイントではあるのだが、一番は、その“存在のさりげなさ”なのだと思う。クラスレスな感じというか。
「趣味が多そう」とか「家族の仲がよさそう」とか「いい人そう」とか「実直そう」とか、カングーに乗っている人にそんな印象はあるけれど、「お金持ちそう」とか「高そう」とか、そんな風には決して思われない(失礼)のが、これまでのカングーだった。
そんなカングーが立派になった。ボディーも大きくなって、見た目の質感も上がって、価格も上がった。
価格はさておき、おおむね肯定すべきことだと思うのだけれど、従来のファンの気持ちを十分すぎるほど理解しているルノー・ジャポンは、樹脂バンパーにしたり、黒い鉄チンホイールを履かせたり、両開きのバックドアを特別に設定したりと、カジュアルであろう、プロギアっぽくあろうと、工夫の限りを尽くしている。いわゆるドレスダウンに徹してきたという感じだろうか。
今回の試乗車は、特別仕様車「ヴァリエテ」の第2弾。第1弾が樹脂製の黒いバンパーと「グリ アーバン」のボディーカラーだったのに対して、ボルドー地方に広がるブドウ畑の風景を思わせる深みのある赤「ルージュ カルマンM」をまとった台数150台の限定車という仕立てで、プロギアっぽい樹脂バンパー仕様と、モダンでクールなカラーバンパー仕様が選べる。マルチルーフレール、スマートフォンワイヤレスチャージャー、パーキングセンサー(フロント、サイド、リア)、イージーパーキングアシスト、17インチアロイホイール(カラーバンパー仕様に限る)が備わるのも特徴である。
で、樹脂バンパー仕様とカラーバンパー仕様のどちらを選ぶのか? ルノー・ジャポンとしてもおおいに気になるところなのではないかと思う。私は6:4で樹脂バンパー仕様かな……。まだ従来のカングーのイメージを引きずっているのかもしれない。だけど、徐々にイーブンに近づいていることは確かだ。カングーのイメージが、“モダンでクール”へと変わる日も近い! のかな?
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4490×1860×1860mm/ホイールベース:2715mm/車重:1580kg/駆動方式:FF/エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(最高出力:131PS/5000rpm、最大トルク:240N・m/1600rpm)/トランスミッション:7段AT/燃費:15.3km/リッター(WLTCモード)/価格:427万円
(文=webCG こんどー/写真=田村 弥、峰 昌宏/編集=近藤 俊)

近藤 俊
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