ディフェンダー130アウトバウンド(4WD/8AT)/フィアット・ドブロ(FF/8AT)/アバルト500eツーリスモ カブリオレ(FWD)
最高のエンターテイナー 2024.02.25 JAIA輸入車試乗会2024 いま新車で買える輸入車のなかから、家族みんなでハッピーになれる一台を選ぶとしたら? 早春恒例、旬のクルマがずらりと並ぶプレス向け試乗会から、webCGスタッフが一押しの3モデルを紹介する。プレミアムファミリーカー
ディフェンダー130アウトバウンド
筆者は現在4人家族。幼子2人に妻、そして時折ジジババや友人が加わることを想定すると、クルマ選びはまず「3列シートのヤツ」となる。しかし! 現実的に、乗り降りが楽でみんながちゃんと座れる多人数車なんて、そこそこ大きなミニバンくらいのもの。それも満乗車となれば、今度は荷物の置き場が気になってくる。ならいっそのこと、5人乗りのクルマと付き合おう。積載性にも優れた一台と……。
そんな思いで出かけたJAIA輸入車試乗会の会場に、「ディフェンダー130アウトバウンド」はいた。人気の本格オフローダー、ディフェンダーの3列シート車をベースに、その3列目をあえて外した5人乗り仕様だ。さて、理想のファミリーカーとなるか?
小山のように大きく、そして長い130アウトバウンドだが、3020mmのホイールベースはディフェンダーのスタンダードモデル「110」と変わらない。つまり、110の後輪より後ろが伸びている。それだけに荷室の広さは圧倒的で、5人乗車時のフロアは実測で幅120cm×奥行き128cm~145cm(後席の位置で変わる)。ダイニングテーブルを飲み込みそうな……といえば、サイズ感が伝わるだろうか。わが家の場合、後席はチャイルドシート固定になるけれど、いざ2列目を倒したなら荷室の奥行きは2mを超える。
子どもを含め、後席の乗員はどう感じるのか? 広いのはもちろん、大きなサンルーフもあって開放的なのがいい。おまけに運転席と助手席との間隔が広いから、前後席間でのコミュニケーションもとりやすい。その点このクルマは、ファミリーカー向きだなぁと思う。
ドライバーも驚くほどストレスフリーだ。ずうたいがデカいとはいえ、よじ登るように運転席に乗り込むなんてことはないし、いざおさまってみると適度なタイト感があって、操作系も使いやすい。見晴らしヨシ。見切りもヨシ。自車周辺の様子を3D映像で見せてくれる機能まであって、大きくても扱いにくいなんてことはない。
走りだせば、2.5tの重量を感じさせない余裕のピックアップに驚かされる。同乗した誰もが「これ、本当にディーゼル?」と言うほど静かで洗練されてもいる。タフなヤツだとばかり思っていたら、ため息が出るほどのプレミアムSUVだ。プレミアムなお値段にも、ため息が出てしまうけれど。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5275×1995×1970mm/ホイールベース:3020mm/車重:2610kg/駆動方式:4WD/エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ(エンジン最高出力:300PS/4000rpm、エンジン最大トルク:650N・m/1500-2500rpm、モーター最高出力:18PS/5000rpm、モーター最大トルク:42N・m/2000rpm)/トランスミッション:8段AT/燃費:9.9km/リッター(WLTCモード)/価格:1196万円
SUVブームの次はコレ
フィアット・ドブロ
ディフェンダーは、置き場と価格で人を選ぶ。そこで、もうちょい身の丈に合ったクルマはないものか……と試乗会の会場を見回していて「フィアット・ドブロ」と目が合った。
車体はディフェンダー130に対してふた回りほど小さくて(全長×全幅×全高=4405×1850×1800mm)、価格は約3分の1(399万円)。しかしこのクルマ、知れば知るほどデキるファミリーカーなのだ。
小さな子どもを後席に座らせる前提だと、やっぱりスライドドアが安心&便利で、その点ドブロは合格点。しかもシートは独立3座で、それぞれがISOFIX対応だ。つまりチャイルドシートを2つ付けても、しっかり座れるスペースが残っている。お子さん1人の3人家族なら、リアのセンターに子どもを乗せて両サイドを荷物スペースに充てる、な~んて変則的な使い方も楽しい。ピクニックテーブルもお出かけ気分を盛り上げてくれる。
荷室の広さも好印象だ。幅118cm×奥行き92cmのフロアは、後席を倒すことで奥行き178cmまで拡大可能。助手席も倒せばかなりの長尺物にも対応できる。荷室は天地方向のゆとりもあって、ベビーカーは立てたまま丸飲み。トノカバーを使って空間を上下2段に仕切れるという収納上手なワザもある。
バックドアには荷物の出し入れに便利なガラスハッチが付いているし、バックドア自体が大きいから(長さ120cm)、全開時は日よけ・雨よけとして使える。低めのフロア(地上58cm)に腰かけて何かの作業をするもよし。ただぼーっとするもよし。……とまぁ、ユーティリティーに関してはテレビショッピング並みに「へぇ~」「ほぉ~」が止まらない。
さすが商用ベースというべきか、前席についてもドアポケットやセンターコンソールはもちろん、メーターバイザー上のふた付きトレー、フロントウィンドウより上のオーバーヘッドコンソールと、とにかく収納が多い。ギア感満点。子どもにとっては、走る遊具。インポーターの「ドブロのユーザーには、SUVに満足できず乗り換えてくるファミリーも多いです」という説明にも納得がいく。
1.5リッターのディーゼルは、前出のディフェンダーとは対照的に、加速時は騒がしい。でも排気量の割に力強さは十分で、巡行状態になってしまえば静かで平和。Aピラーやミラーまわりの視認性がいいことにも気がついて、「家族ぐるみで長く付き合えそうだなぁ」と思えてくる。長きにわたるSUVブームの次にくるのは、こういうMPVなのかもしれない。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4405×1850×1850mm/ホイールベース:2785mm/車重:1560kg/駆動方式:FF/エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ(最高出力:130PS/3750rpm、最大トルク:300N・m/1750rpm)/トランスミッション:8段AT/燃費:18.1km/リッター(WLTCモード)/価格:399万円
全身エンターテインメント
アバルト500eツーリスモ カブリオレ
今回もう一台、とっても気になったのが、アバルトのフル電動モデル「500eツーリスモ カブリオレ」だ。
「おいおい、ファミリーカーの話じゃなかったのか」って? そう、4人家族の理想の一台……。アバルト500eは、一応4人乗りなんですよ。よほど長距離のドライブはラージサイズのレンタカー(or電車)に頼るとして、日ごろはスペシャルティーカーのようなEVで、というのもアリなのでは? インポーターが言うには、アバルト500eのユーザーはセカンドカー、サードカーとして購入する人が多いそうな。
蛍光カラーが目にまぶしい、500eの「チョロQ」みたいなルックスは、クルマ好きのわが子もとりこにするに違いない。ドアを開けると車内は一部スエード調のスポーツ仕立てで、不健康なのに健やかでいたいオトーサンの顔もほころぶ。ヘッドレスト一体型のスポーツシートは立派すぎて、チャイルドシートが付く後席へのアクセスが気になるけれど、そこは“カブリオレ”なのがミソ。いざとなったらルーフを開け放って、ちびっ子のお世話に応じられる。
ディフェンダーやドブロと比べりゃミニカーみたいな500eだけれど、空間的には決してあなどれない。後席は子ども限定、なんてことはなくて、(筆者は身長163cmと小柄ではあるが)ひざ前に5~6cmのスペースを残して座れる。
荷室の間口は、くしくもEVではない「アバルト500C」と同サイズ(78×35cm)で、中も1泊旅行ならいける広さ。さっそく積むものを積んで始動すると、EVなのに「ブロロロ……」と音がした。車体後部のスピーカーが奏でる疑似排気音だ。でも“いかにもつくりもの”なのはアイドリングのときだけで、速度を上げていくと「パォォーン!」という快音に変化する。アクセル操作に対する微妙な音ズレも内燃機関車そのもので、EVに乗っていることを忘れてしまう。
それに、速い。スペックを調べてみると、0-100km/h加速は7秒で、ガソリンエンジン車の「アバルト695」と同等。ただし、中間加速はエンジン車よりも強力になっている。さらなる速さを求めるなら? 疑似音を切るのが一番だ。皮肉なことに、無音でスゥーーーッ! と行くほうが、加速“感”は強烈なのだ。
もっとも、アバルトサウンドがなくたって、500eの運転の楽しさは変わらない。むしろ、会話が楽しめていい。窮屈そうに見えるキャビンだって、家族の距離を近づけてくれる。ミニバンと違ってリアのエンタメはないけれど、このクルマがエンターテインメントそのもの。これで、いいのだ。
(文=関 顕也/写真=田村 弥、峰 昌宏/編集=関 顕也)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3675×1685×1520mm/ホイールベース:2320mm/車重:1380kg/駆動方式:FWD/モーター:交流同期電動機(最高出力:155PS/5000rpm、最大トルク:235N・m/2000rpm)/一充電走行距離:294km(WLTCモード)/交流電力量消費率:158Wh/km(WLTCモード)/価格:645万円

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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