エンジンはどれくらいもつものなのか?

2024.04.09 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
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「エンジンの一番の劣化要因は始動の際のダメージ」という過去のコメント(関連記事)を読んでうかがいます。乗用車のエンジンは、ごく一般的な使い方をした場合、どれくらいもつものでしょうか? 10万km? 20万km? また、特に長寿命が期待できる形式・仕様(直4、V6、ノンターボなど)はあるのでしょうか。

エンジンについては、「メンテナンス次第でいくらでももつ」というのが結論になりますね。

オイルの管理をちゃんとやって、ピストンリングをはじめとする可動・摺動(しゅうどう)部の消耗品を交換すれば、本当にいくらでももってくれる。たいていは、マフラーその他、車体の別の部分が先にダメになります。

耐久性について具体的な数字を示すとするなら、10万kmなんてへっちゃらですし、「現代の量産車のクオリティーであれば、30万kmくらいは大丈夫」といって差し支えないでしょう。

形式のことでいうなら……例えば、皆さんのなかには「水平対向エンジンは(シリンダーが水平方向に寝ているので)内部に偏摩耗が生じるんじゃないか?」なんて思う方がいるかもしれません。

何を隠そう私自身、スバルの開発者に(しらふでは聞けないので)お酒の席で「水平対向エンジンって、そういうネガはあるんでしょうか?」などと尋ねて、「ナニを言ってるんですかっ!?」と怒られたことがあります(笑)。

もっとも、ごく初期にはそういう問題がなかったわけでもなく、今に至る長い進化の過程において、重力にも配慮したうえでエンジンの搭載角度やピストンの設計が定まってきているわけです。

水平対向エンジンに限らず、どんなエンジンも、そうした物理的な懸念点はクリアしたうえでエンジニアリングされている。要は、エンジンの形式による差は基本的にない、といっていいと思います。

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多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。