今どきのクルマの寿命はどれくらい?

2023.11.28 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
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かつては、クルマの買い替え時期、クルマの寿命として「10年10万km」などといわれたものですが、クオリティーが向上したであろう今のクルマにそれは該当するのでしょうか? 乗り方にもよるでしょうが、どれくらいもつものでしょうか? もたせるためのポイントがあれば、合わせて教えてください。

それはまさに「乗り方」と「保管の仕方」、あとは「整備」によりますね。今のクルマは、それができればいくらでももつ、という感じです。

耐久性の話で皆さまが主に意識されるのは、おそらくエンジンとボディーでしょう。ではエンジンはどれだけもつのか? これは、基本的に「走行距離〇万kmでダメになる」ということはないのです。

エンジンが劣化する一番の要因は「始動」です。エンジンオイルが回っていない状況から動かすことによるダメージが、最も大きい。逆に、止まることなく回り続けるならば、どれだけ稼働しても劣化の度合いは極めて小さいといっていい。例えば、1回の始動で近所のコンビニまで往復しても、東京~大阪間を往復しても、エンジンへのダメージに走行距離の差ほどの違いは出ないと考えてかまいません。

要は、エンジンにとっては止まったり動いたりを繰り返すのが一番キツいんです。例えばプラグインハイブリッド車など、普段はエンジンを動かしていないのに、パワーが必要な状況になるといきなり始動し全開で回される! という使われ方は、非常にダメージが大きくなります。

そういうことをイメージしたうえでオイル交換などのメンテナンスに取り組まれると、クルマも長持ちするのではないかと思います。

一方のボディーについては、最大の敵は「塩気」と「湿気」です。日本は道の質がいいので、よほど変わった使い方・乗り方をしない限り、路面からの入力でクルマが劣化するなどということはありません。気にすべきは、やはり塩。具体的には海の近くや、融雪剤がまかれた冬季の道ということになりますが、そうした道を走行した後は(サスペンションのロワアームなど下まわりも含め)しっかり洗車すると効果的かと思います。

もっとも、今どきのクルマは防錆(ぼうせい)処理がしっかりしているので安心はできますね。「10年10万km」というフレーズはたしかによく聞かれたものですが、今のクルマは「20年20万km」はもって当たり前というクオリティーでしょう。

ただ残念ながら……私などは、「10年、20年も愛着を持って付き合いたくなるクルマが今はないじゃないか」とおしかりを受けることがしばしばありました。「(耐久性に劣る)昔のクルマのほうが長く乗りたい気持ちになれた」「今どきのクルマはどうせ3~4年で乗り換えてしまうから、寿命など気にならない」という意見が聞かれるのは、皮肉というか、残念でなりません。

多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。