「ホンダ・ヴェゼル」がマイナーチェンジ その注目ポイントは?
2024.05.02 デイリーコラム「WR-V」の登場に続き「ヴェゼル」も改良
ホンダが2024年3月22日に発売した新たなSUV「WR-V」が好調だ。発売から約1カ月後となる4月22日時点で、販売計画として掲げられた月販3000台の4倍以上となる1万3000台の受注実績が報告されている。
ホンダによると、軽自動車やコンパクトカー、SUV、ミニバンなどからの乗り換えを中心に、幅広い年代のユーザーの獲得に成功。SUVらしい個性的でラギッドなデザイン、見晴らしがよく距離感のつかみやすい運転視界や取り回しの良さ、クラストップレベルとなる荷室空間、エントリーグレードが209万8800円からというリーズナブルな価格設定などが人気の秘密だという。
もっとも、発売こそ3月ではあったが、価格やグレードの詳細発表は2023年12月21日に行われており、多少のリードタイムがあったことは勘案されなければならない。ただ、それを踏まえたとしても、最近のSUVのなかでは、ヒット作といえるモデルであることは間違いない。
WR-Vに注目が集まるなか、振り返れば、ホンダのSUVとして屋台骨を支えてきたのは2013年12月に登場したコンパクトSUV「ヴェゼル」だった。初代ヴェゼルは全長×全幅×全高=4295×1770×1605mm、ホイールベース2610mmのコンパクトなクロスオーバーモデルで、SUVの持つ力強さと安心感、クーペのあでやかさとパーソナル感、ミニバンの使いやすさと快適性の融合を目指して開発された。
日本の環境下で使いやすいサイズ感やスタイリッシュなフォルム、ホンダ独自のハイブリッドパワートレインなどが評価され、人気を集めたのはご存じのとおりである。
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マイチェンモデルの見どころは?
フルモデルチェンジによって2代目となったヴェゼルは、2021年4月に登場した。初代から継承されるスポーティーなデザインと上質で爽快な走り、使い勝手の良さを兼ね備えたアーバンSUVとして進化した。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4330×1790×1590mmで、先代モデルと比べると35mm長く20mm幅広く15mm低い。ただ、2610mmのホイールベースは変わっていない。
ボディー同色のスリットデザインとされたフロントグリルには賛否があったようだが、磨きをかけた都会的でスタイリッシュなエクステリアデザインや、リッチな雰囲気にまとめられたインテリアは多くのユーザーに刺さった。そのチャレンジングなフロントグリルは、2024年4月25日に発表されたマイナーチェンジモデルでも継続されている。
マイチェンモデルの見どころは、内外装のブラッシュアップと新グレード(正しくはパッケージモデル)の登場だろう。詳しくは、発表時のニュース(参照)に明るいので割愛するが、エクステリアでは、フロントグリルとフロントバンパー、リアコンビネーションランプのデザイン変更、インテリアではセンターコンソール形状の変更が目を引く。
フロントグリルは、グリルの面積が広がり長方形に近い形状に変わった。バンパーはキャラクターラインを減らし、どちらかといえばシンプルなデザインを目指したといえるかもしれない。リアコンビランプはオールLED化され、水平基調となった新意匠である。いずれも小変更といえるレベルだが、ボディーの塊感が強調され、洗練されたと紹介できそうだ。
センターコンソールは、運転席・助手席の双方からアクセスしやすい左右対称の2段形状に改められた。従来型がいわゆるドライバーオリエンテッドを強調したデザインだったのに対して、マイチェンモデルでは使いやすさを優先したともいえる。前席用にUSB Type-Aポートを2口備えていた従来型に対し、最新モデルでは助手席側のポートがUSB Type-Cに変更されたのもアップデートポイントだ。
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3台のSUVが出そろった
試乗前なので断言はできないが、走行パフォーマンスに関して驚くような変化はないだろう。それよりもハイブリッドシステム「e:HEV」搭載車では、ダッシュボードやルーフ、フロアの各遮音材と防音材の厚み、配置を最適化し、静粛性を高めたという快適性の向上に期待したい。エネルギーマネジメント制御を見直し、エンジン始動回数や停止頻度を従来型よりも大幅に低減したこともうたわれている。よりスムーズな走りが味わえそうだ。
既報のとおりモデルラインナップは、最高出力118PSの1.5リッター直4ガソリン車の「G」と、最高出力106PSの1.5リッター直4エンジンに最高出力113PSのモーターを組み合わせたハイブリッド車の「e:HEV X」と「e:HEV Z」の3種類。ハイブリッド車には、オフロードテイストを盛り込んだ「e:HEV X HuNT(ハント)パッケージ」と、都会的なコーディネートを特徴とする「e:HEV Z PLaY(プレイ)パッケージ」が設定された。
従来モデルでは最上級グレードのZとPLaYのすみ分けが少々複雑で、PLaYのほうが車両価格が高いにもかかわらず、Zでは採用されているのにPLaYには備わらない装備がいくつかあった。そこがどちらを選ぶかの悩みにもなっていたようだが、今回のマイチェンでPLaYはZの上級互換モデルに位置づけられており、設定がシンプルになった。
そうしたマイチェンモデルで最も注目したいのが、300万円を切る価格で登場したe:HEV X HuNTパッケージだ。「都市も自然もアクティブに楽しむ」をテーマに、ルーフレールや専用アルミホイール、カッパーメタリック塗装のフォグランプガーニッシュなどが採用されたエクステリアには、控えめながらはっきりとした自己主張がうかがえる。
個人的に注目しているのはプライムスムース×ファブリックにカーキ&ネイビーのカラーを用いた同モデル専用のシートである。はっ水・はつ油機能のある表皮素材「FABTECT(ファブテクト)」が用いられ、アウトドア趣味の方や、小さなお子さんやペットがいる方にもおすすめだ。こうした地味ではあるが、日常使いを想定した装備へのバージョンアップは、毎日使う人にとってはありがたいプチストレスの解消アイテムとなる。
ヴェゼル、WR-V、そして「ZR-V」と3本の矢ならぬ3台のSUVが出そろったホンダ。ヴェゼルについては近々お届けする試乗リポートも、期待してお待ちいただきたい。
(文=櫻井健一/写真=webCG/編集=櫻井健一)
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櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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