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第865回:ボルサリーノのヘルメットも! 紳士モード見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」見聞録

2024.06.27 マッキナ あらモーダ! 大矢 アキオ
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リゾート志向が止まらない?

世界屈指の紳士モード見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」が、2024年6月11日から14日までイタリアのフィレンツェで催された。同イベントは年2回の開催で、今回は第106回。主に2025年の春夏向け商品が、790以上のブランドによって市場に先駆けて紹介された。期間中に来場したバイヤーや報道関係者などは、約1万5000人を数えたという。

かつて「クラシコの本拠地」ともいわれたピッティ。だが近年の春夏メンズファッションは、良質で伝統的な仕立てを生かしつつも、より快適かつ多様な方向に傾倒していることは間違いない。

たとえばサルトリオ・ナポリは、サファリジャケットに加えてダメージデニムのシャツをそろえた。ブルネロクチネリは、出展したコレクションの特徴を「柔らかく軽やかなパステルカラーとニュートラルカラー、あるいはイングリッシュホワイトを中心にした白とオフ白のグラデーション&ダークブラウンでリゾートなムードとテーラリングが融合したコレクションです」と説明している。

靴の世界も同様だ。「スニーカーの快適性を多くの人々が知ってしまった今、トラディショナルなレザーシューズには、もう戻れない」と見るプロフェッショナルは少なくない。そのスニーカーもよりストーリー性やハイグレード性が強調される傾向にある。好例は近年日本でもファンを地道に増やしているパントフォラ・ドーロだ。元ボクサー、続いてレスラーを経験した創業者が、リングにおいて快適なシューズを自作。そうして培った技術で、一流サッカー選手たちに愛用されるようになった。彼らの次なる戦略は、PCを駆使し、自動車の世界でいうところのフルチョイスシステムを導入したス・ミズーラ(オーダーメイド)のスニーカーである。

2024年6月、「ピッティ・イマージネ・ウオモ」の会場で。レザーを得意とするカンポマッジの屋外展示。
2024年6月、「ピッティ・イマージネ・ウオモ」の会場で。レザーを得意とするカンポマッジの屋外展示。拡大
サルトリオ・ナポリの出展ブース。ジーンズ生地のシャツはダメージド加工が施されている。
サルトリオ・ナポリの出展ブース。ジーンズ生地のシャツはダメージド加工が施されている。拡大
ブルネロクチネリの出展は、「ACTS OF INSTINCT(本能的な行動)」がテーマ。
ブルネロクチネリの出展は、「ACTS OF INSTINCT(本能的な行動)」がテーマ。拡大
会場の筆者。106回を迎えた今回のテーマは「レモン」。その心は「(常に新しいものを欲している者の)喉を潤し、(ブーストを求めている人に)活力を与え、(冗舌になるのを我慢するための)収れん作用があり……」という。
会場の筆者。106回を迎えた今回のテーマは「レモン」。その心は「(常に新しいものを欲している者の)喉を潤し、(ブーストを求めている人に)活力を与え、(冗舌になるのを我慢するための)収れん作用があり……」という。拡大
創業者はボクサー/レスラーだったというパントフォラ・ドーロのシューズ。
創業者はボクサー/レスラーだったというパントフォラ・ドーロのシューズ。拡大
パントフォラ・ドーロの熟練職人であるファビオ氏(1955年生まれ)。
パントフォラ・ドーロの熟練職人であるファビオ氏(1955年生まれ)。拡大
ファビオ氏による採寸実演。
ファビオ氏による採寸実演。拡大

「ランドローバー・ディフェンダー」が発想源

ここからは四輪・二輪愛好家にとって気になるブランドを紹介しよう。

まずはドライビンググローブを展開しているミラノのレステッリ・グアンティである。1920年の創業当初は、あのミラノの大聖堂前に小さな店を開いていたという。こちらもス・ミズーラに対応している。創業3代目のラファエラ・レステッリCEOが筆者に語ったところによると、「おしゃれな方は、愛車のシート色と合わせてコーディネートなさいます」とのことである。視覚的な美しさだけでなく、はっ水性やグリップ性も怠らない。ヒストリックカーの愛好者だけでなく、都市を駆けるスクーターのライダーにも訴求する。

いっぽう屋外会場で、2009年登録の「ランドローバー・ディフェンダー」の周囲にワイルド感あふれるバッグを展示していたブランドがあったので、顔を出してみた。カンポマッジである。

ファウンダーのマルコ・カンポマッジ氏は1961年生まれ。1980年代に学費稼ぎのため、パートナーのカテリーナ氏とともに倉庫でレザー製カバンづくりを始めた。リリースには「革のこともファッションも知らなかったし、同業の人物も知らなかった」と赤裸々につづられている。さらに「顧客を獲得することは、私が直面した最も難しい試練だった」とも。最初に販売を試みたのは、アドリア海チェゼナティコの海岸沿いの歩道上だった。初めて売れた日のことを「誰かが私のバッグを買ったという事実は、私にとって半分奇跡のように思えた」という。

ブランドは成功。2016年には、日本でも展開しているバッグのブランド、ガブスを傘下に収めた。カンポマッジの製品一つひとつには彼の故郷の名とその風景が刻まれている。「一過性のものではなく、人から人へ、父から子へ受け継がれて使われていくモノづくりが理想」という。その日ブースにいたデザイナーのアレッサンドロ氏は最後に、「オーナーは愛車であるディフェンダーのイメージを、ブランドに反映させたのです」と明かしてくれた。

グローブのエキスパート、レステッリ・グアンティの3代目代表を務めるラファエッラ・レステッリ氏。
グローブのエキスパート、レステッリ・グアンティの3代目代表を務めるラファエッラ・レステッリ氏。拡大
レステッリ・グアンティのディスプレイ。
レステッリ・グアンティのディスプレイ。拡大
フィンガーレスのドライビンググローブ。はっ水性、グリップ性、そして美しさの3点を兼ね備える。(photo:Restelli Guanti)
フィンガーレスのドライビンググローブ。はっ水性、グリップ性、そして美しさの3点を兼ね備える。(photo:Restelli Guanti)拡大
バッグのブランド、カンポマッジは「ランドローバー・ディフェンダー」を屋外ディスプレイの大道具にしていた。
バッグのブランド、カンポマッジは「ランドローバー・ディフェンダー」を屋外ディスプレイの大道具にしていた。拡大
カンポマッジのアイテムから。
カンポマッジのアイテムから。拡大
エンブレムの日付と地名は、創設者の誕生日と出身地である。
エンブレムの日付と地名は、創設者の誕生日と出身地である。拡大
デザイナーのアレッサンドロ氏。
デザイナーのアレッサンドロ氏。拡大

高級ブランド再興の力となるか

イタリアを代表する帽子ブランドのひとつ、ボルサリーノのブースも訪ねた。創業は1857年にさかのぼる老舗であるが、1990年代に入って創業家の手を離れてからは、たびたび危機に見舞われてきた。2018年からは同社を取得したイタリア-スイス系企業、アレス・エクイタのもと再建途上にある。

そのボルサリーノが今回展示したのが、「モーターサイクル&スクーター用ヘルメット」である。彼らは2000年代にも他のヘルメット製造業者との協業を試みているが、今回は1972年創業のヘルメットブランド、ノーランとのコラボレーションである。

ノーランは1972年の創業以来、イタリア工場製を守り、かつ高級品に焦点を絞った商品構成で、新興国製品との差異をヘルメット市場で強調してきた。今回の商品は同社のベストセラーで、すでに33万個の販売実績があるジェット型ヘルメット「N21」をもとにしたものだ。「メタルホワイト」と「フラットブラック」の2種がある。販売はボルサリーノ、ノーラン双方の専門ブティックと、ボルサリーノの公式ウェブサイトのみで行う。

両社のライセンス契約は3年だ。近年は伝統的なソフト帽のほかに、パナマやキャップまでバリエーションを拡大し、新たな顧客層を開拓してきたボルサリーノの新たな挑戦が開花するか見守ろうではないか。

ちなみにボルサリーノの帽子といえば、日本では麻生太郎副総理が愛用していることで知られている。氏は長年アウディに乗っていることで有名だが、仮に二輪もたしなむ機会があれば、ぜひこの新製品を試していただきたい。

(文=大矢アキオ ロレンツォ<Akio Lorenzo OYA> /写真=大矢麻里 Mari OYA、Akio Lorenzo OYA、Restelli Guanti/編集=堀田剛資)

あのボルサリーノのブースには……。
あのボルサリーノのブースには……。拡大
ボルサリーノのライセンスによるノーランの二輪用ヘルメットが。
ボルサリーノのライセンスによるノーランの二輪用ヘルメットが。拡大
「Nolan」のロゴは右下に入る。
「Nolan」のロゴは右下に入る。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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