第169回:追突で、恋の花咲くこともある!? イタリアのトンデモ調査結果
2010.11.20 マッキナ あらモーダ!第169回:追突で、恋の花咲くこともある!?イタリアのトンデモ調査結果
交通事故と恋愛
イタリアでも近年は、高齢ドライバーの進入路間違いによるアウトストラーダの逆走事故がたびたび問題になっている。そのため、インターチェンジやサービスエリアには、進入禁止のマークとともに「ALT(止まれ)」と大きく書かれた蛍光イエローの警告が付け加えられるようになった。
そうした背景もあり、2010年にイタリア国会では、下院運輸委員長から道路交通法の改正案として「80歳になったと同時に、運転免許返納を義務化する」という大胆な法案が出された。結果としては7月に廃案となったのだが、日本と1、2を争う高齢者国家イタリアならではの悩みといえる。
いっぽう、事故関連でも「アモーレの国 イタリアは、まだ健在だった!」と、ボクを唸らせたのが今週の話題である。
もちろん事故は事故。たとえ小さなものでも、真剣に当事者同士で解決の道を探るべきものであることは事実だ。したがって、以下は現代イタリアの一事象としてお読みいただきたい。
何の話題か? というと、イタリアのインターネット自動車保険比較サイト「Assicurazion.it」が発表した、一風変わったアンケート結果だ。
ずばり内容は「イタリア人の交通事故と恋愛に関するアンケート」である。
それによると、「追突などの軽い交通事故がきっかけで、事故相手と恋愛関係が始まった経験がある」と答えたドライバーは、回答者全体の7%にのぼり、うち13%は現在もその相手と交際中であるという。このパーセンテージをイタリアの全ドライバー数に当てはめると「600万人が自動車事故の相手と交際にいたった経験あり」ということになる、というのだ。
伝説のお見合い番組「パンチDEデート」の名キャッチ「ひと目合ったその日から、恋の花咲くこともある」になぞらえれば、「追突で、恋の花咲くこともある」といったところだ。
さらに、同様に調査結果から割り出すと、イタリアの全ドライバー中約50万人が、「事故をきっかけに出会った相手と結婚にいたっている」計算になるという。
イタリアでのこの種の調査によくあることだが、実際の回答者数は明らかにされていない。しかし、千葉県民約620万人(2010年9月1日現在)の多くが交通事故の相手と恋におち、宇都宮市民約51万人(2010年11月1日現在)の大半が、交通事故の相手と結婚していると勝手に仮定すると、なかなかなインパクトある数字である。
誰に追突されたい?
アンケートは、そのうえで「異性有名人の誰と事故に巻き込まれたいか?」という質問も実施している。
男性回答者が選んだ「理想の事故相手」1位は、目下イタリアで大人気のアルゼンチン人ショーガール、ベーレン・ロドリゲス(25歳)の19%だった。彼女は最近、携帯通信会社「TIM」のイメージキャラクターを務めている。つまりKDDIの仲間由紀恵さんのような仕事であるが、艶(つや)っぽさではその数段上である。テレビや街頭広告でロドリゲスの姿を頻繁に目にすることも、今回のナンバーワンにつながった要因と思われる。
2位以下もイタリアで活躍する美人タレントや女優が並んだが、9位にはマーラ・カルファーニャ機会均等大臣(34歳)も4%を獲得して入っているのが面白い。
カルファーニャ大臣は大学の法学部を卒業後、テレビのショーガールとなり、2008年に第4次ベルルスコーニ内閣発足で入閣した。ドイツの「ビルト」誌によって、「世界で最も美しい大臣」に選ばれたこともある。「小沢ガールズ」のイタリア版と考えていただければ近い。元ショーガールゆえ写真は豊富なので、どんな方か、ご覧になりたい方は「Mara Carfagna」で検索してください。
いっぽう、女性回答者が選んだ「理想の事故相手」では、イタリア人俳優ラウル・ボーヴァ(39歳)が圧倒的ともいえる42%を獲得して1位となった。3位にはサッカーW杯南ア大会でイタリア代表主将を務めたファビオ・カンナヴァーロ(37歳)が8%で入った。続く4位には、あのモトGPライダー、ヴァレンティーノ・ロッシ(31歳)が、他2名のイタリア著名人とともに7%を獲得して選ばれた。
いやはや、イタリア女性は気軽に回答するが、ボクだったら事故相手がロッシだったと判明した段階で、一生「マッキナあらモーダ!」を書き続けても到達しないであろう彼の高額年俸が頭に浮かび、身がすくむだろう。
結果の陰に、ヒット映画あり
ところで、前述のイタリア人俳優ラウル・ボーヴァが1位になったのには、ちょっとした背景がある。彼は2008年1月『Scusa ma ti chiamo amore』という映画で主演を果たした。日本語にすれば、「ごめん、でも君は恋人」といったところか。
劇中で、彼はアレックスという、三十路後半の広告マンを演じている。舞台はローマ。婚約者と別れたばかりのアレックスは黒の「メルセデス・ベンツML」を運転中、脇見運転が原因でスクーター「アプリリア・スカラベオ」に乗った18歳の女子高校生ニキと接触事故を起こしてしまう。それを機会に彼女と恋におちてゆく、というラブストーリーだ。
映画はイタリアで大ヒットし、タイトルと同名の主題歌も人気を呼んだ。これが多くの女性回答者のイメージをかき立てたと思われる。
とはいえ、繰り返しになるが、やはり事故は事故。ギプスやコルセットを装着したままデートしたり、教会の聖壇に立つのはカッコいいものではないということを、イタリア人ドライバーにはぜひとも認識していただきたいところだ。
(文=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA/写真=大矢アキオ、FIAT)
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大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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