レクサスIS350 Fスポーツ(FR/6AT)【試乗記】
わかりやすいスポーティ 2010.11.17 試乗記 レクサスIS350 Fスポーツ(FR/6AT)……590万5000円
レクサス「F」シリーズの一員として「IS」に設定された「Fスポーツ」。新しいスポーティグレードはどんな走りを見せるのか?
デビュー時の記憶
「レクサスIS」に初めて乗ったときのことはよく憶えている。適度なカーブが続く山道を、木漏れ日というにはいささか強い日差しを浴びながら、デビューしたての「IS」で行く。
スポーティに締まった足まわりもさることながら、新しいV6エンジンに感心した。学術的(!?)には走行状態によって筒内と吸気管内へと燃料の噴射方法を切り替える新機構が興味深かったが、なによりフィールがいい。快音を発して涼やかに回る。
「レクサスブランド日本上陸!」というニュースに興奮気味だったせいもあるが、ハンドルを握りながら、ISシリーズをして「若武者のようなスポーツセダン」と、少々時代がかった表現が頭に浮かんだ記憶がある。「アルテッツァ」が「BMW」になったようでうれしかった。
「あれからはや5年……」と遠い目をするヒマもなく、最近のISはなんだか“ちょいワル”(死語)になっていた。ブラックのボディペイントで塗られたISが、道ばたにうずくまっている。アルミホイールをギラリと輝かしてすごみを利かせている。今回の試乗車は「IS350 Fスポーツ」。
「Fスポーツ」は、2010年8月に発表されたISシリーズのマイナーチェンジに伴って設定されたスポーティグレードである。スーパースポーツ「LFA」を頂点とする「F」シリーズの一員で、2.5リッターV6(215ps、26.5kgm)の「IS250」、3.5リッターV6(318ps、38.7kgm)の「IS350」、いずれにも用意される。価格はそれぞれ450万円と538万円。どちらも6段ATを介して後輪を駆動するFRモデルである。
イメージが大事?
レクサスISの「Fスポーツ」には、ノーズに専用のメッシュグリルが与えられる。「性能向上=熱量増加」という古典的な表現だが、フロントに搭載される3456ccV6DOHCのアウトプット(318ps/6400rpm、38.7kgm/4800rpm)は、他グレートと変わらない。とはいえ、レクサスの「F」はニッポンのイメージを背負う「富士」の「F」にして、富士スピードウェイをも暗示することを忘れてはいけない。「エンジンルーム内の温度上昇を抑制するイメージが大事」なのかもしれない。
フロントバンパー下部左右にはスポイラーが付けられ、フェンダーに「F」のエンブレム、そしてトランクリッドに装着されたリアスポイラーがFスポーツの証である。もうひとつ、クルマ好きの目をひくのがFスポーツ専用アルミホイールで、対になったスポークが5方向に伸びるスポーティなデザインを採る。高い剛性が自慢の一品で、ホイールに合わせてサスペンションのチューニングをやりなおしたというエピソードが、レクサスのウェブサイトに掲載される。18インチホイールに巻かれるタイヤサイズは、フロントが225/40R18、リアが255/40R18となる。
ドアを開け、サイドシルに貼られたステンレス製専用スカッフプレートをまたいでドライバーズシートへ。これまたFスポーツ専用の、ヌバック調ファブリックと本革のコンビネーションシートがおごられる。シートポジションの記憶はもちろん、ヒーターまで備えたぜいたくないすだ。クッション厚め。パドルシフトを備えた本革が巻かれたハンドルを握って走り始める。
硬くて速い
「IS350 Fスポーツ」のキモは、足まわりのセッティングである。スプリングレートが上げられ、一方、リアアンチロールバーのバネ定数は下げられた。凝っているのがショックアブソーバーで、伸び圧独立オリフィスを採用、「伸び」と「縮み」を個別にコントロールする。フロントは圧側の減衰力を高く、リアは逆に低くして乗り心地に配慮したという。ロール速度を抑えたフロントでがっちり回頭させ、リアは柔軟に追従するというイメージだろうか。
ただ、こうした開発陣のご苦労を一般道で評価するのは難しく、公道を普通にドライブする限り、IS350 Fスポーツの運転感覚は、「硬い」「速い」の2語。一般道では上下に揺すられがちで、高速道路に入ると「速度を上げるに従ってスムーズになる」予感はあるのだが、日本の法定速度内ではスムーズになりきらず、260km/hまで刻まれたスピードメーターを恨めしく眺めるだけ。
とはいえ、ことさら乗り心地が悪いわけではない。100km/h巡航でのエンジン回転数は2000rpmを割るから、室内は静かで、それなりに快適だ。アクセルを踏むとただちに怒濤(どとう)の加速を開始する。100km/hを超えると、速度計のリングがオレンジ色に光って警告してくれるのがありがたい。
国内のセダン市場は、かつてのノンポリ層がミニバン系へ流れてしまったため、特に高価格帯のセグメントは相対的に輸入車が強くなっている。IS350 Fスポーツは、同ブランドのイメージブースター「LFA」の流れをくむとうたわれるモデル。個性を打ち出すために、ドライブフィールはこれくらいハードにしたほうがいいのだろう。内・外・走りとも、わかりやすいスポーティモデルである。国内随一のハイスピードコースに魅せられた「Fなヒト」は、ぜひFスポーツを。
そのほか、「F」にこだわらずとも常にサーキットを感じていたい方には、同様の18インチ用スポーツサスペンションが組まれた「version T」という選択肢もある。装備はすこし質素になるが、30万円ほど廉価だ。
(文=青木禎之/写真=荒川正幸)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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