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スズキGSX-8R(6MT)

“旅バイク”の新しい選択肢 2024.09.23 試乗記 青木 禎之 スズキがリリースした新型のロードスポーツモデル「GSX-8R」。このマシンが体現する「スポーツバイクの新しいカタチ」とは? 見てカッコよく、ツーリングも快適にこなし、そしてもちろん文句なしに速い! 新時代の万能スポーツツアラーの魅力に触れた。
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どうしたスズキ!

早朝の東京を出て約100km離れた静岡県裾野市へ向かう。現地で合流したwebCG編集部のHさんが、開口一番、「乗ってきたバイクが、スズキGSX-8Rだったんで楽ちんでした!」。

「なにを大げさな」とそのときは思ったけれど、実際に8Rを試乗してみて納得しました。なるほど。このバイク、究極の「ハイスピード安楽ツアラー」ですね!

スズキGSX-8Rは、今年(2024年)の初頭に発売されたスポーツバイク(参照)。言うまでもなく、先行して市場に投入されたネイキッド版「GSX-8S」にフルカウルを与え、ハンドルをセパレート化したモデルだ。サスペンションは、KYBからショーワに変えられている。価格は、GSX-8Sの106万7000円より7万7000円高い114万4000円。

ネイキッドの8Sとフルカウルの8Rの間で、基本的なフレームやエンジンに違いはない。特徴的な縦型2灯のLEDヘッドランプも共通だ。装備面も同様で、両者とも電子制御スロットルシステムを採用し、3種類のドライブモード(SDMS)、トラクションコントロール(STCS)、そしてシフトアップ/ダウンどちらにも対応する双方向クイックシフトを備える。過不足ない装備といえる。

それにしても、GSX-8Rを目にした多くのスズキファンの人たちは、先の8Sが登場したときと同じ感情を抱いたことでしょう。「どうしたスズキ! こんなに誰が見てもカッコいいバイクを出すなんて!!」

スズキがリリースした、新しいフルカウルのロードスポーツ「GSX-8R」。「GSX-8S」から導入が開始された、新世代プラットフォームをもとに開発されたモデルで、縦2灯のヘッドランプなど、各所にスズキのスポーツバイクに共通する意匠が取り入れられている。
スズキがリリースした、新しいフルカウルのロードスポーツ「GSX-8R」。「GSX-8S」から導入が開始された、新世代プラットフォームをもとに開発されたモデルで、縦2灯のヘッドランプなど、各所にスズキのスポーツバイクに共通する意匠が取り入れられている。拡大
メーターに代えて装備される5インチのTFTカラーディスプレイ。エンジン回転計はシフトインジケーターの機能も併せ持っており、点灯のタイミングは4000rpmから9750rpmの間で、250rpm刻みで調整できる。
メーターに代えて装備される5インチのTFTカラーディスプレイ。エンジン回転計はシフトインジケーターの機能も併せ持っており、点灯のタイミングは4000rpmから9750rpmの間で、250rpm刻みで調整できる。拡大
空力性能を高めるフェアリングを装備しつつ、機械類を大きく露出させることでメカニカルなイメージを強調。リアフェンダーは非常にスリムかつコンパクトで、軽快でスポーティーな走りを想起させる。
空力性能を高めるフェアリングを装備しつつ、機械類を大きく露出させることでメカニカルなイメージを強調。リアフェンダーは非常にスリムかつコンパクトで、軽快でスポーティーな走りを想起させる。拡大
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快適かつ文句ナシに速い

シート高は810mmと、最近のスポーツバイクとして標準的なもの。身長165cmの自分の場合、地面に伸ばした足と重なる位置にステップがあるのが少々気になるが、走りだしてしまえば足もとは窮屈さとは無縁。加えて、セパハンとはいえ左右に適度な幅がとられ、イメージほど低くないグリップ位置のおかげで、アグレッシブな外観とはうらはらに、ライダーは無理のない程度の前傾姿勢で走行できる。サーキットを本領とするSSことスーパースポーツが、頭を下げ体全体を縮こませるようなライディングポジションを強制してくるのとは対照的に、8Rのそれは安楽姿勢といっていい。

もしかすると、ここまで読んでGSX-8Rをして「ぬるいバイク」のように感じる人がいるかもしれないが、もちろんそんなことはない。最新の775cc水冷並列2気筒ユニットは、ツインカム4バルブのヘッドメカニズムを持ち、80PS/8500rpmの最高出力と、76N・m/6800rpmの最大トルクを発生。205kgのボディーを力強く運んでいく。

1万rpmに届こうかという勢いでフルスケール回せば、1速で約85km/h、2速ですでに100km/hを超えてしまうが、このバイクの場合、パワーを絞り出してカッ飛ぶより、低・中回転域からの豊かなトルクと、2軸のバランサーシャフトがもたらすスムーズさを生かして、余裕を持ってシフトしていくのがふさわしい。ストップ&ゴーの多い街なかでは6000rpmも回していれば十分速い。いや、速すぎる! GSX-8Rは、スペック以上に実質的かつ実用的に速いバイクだ。ナナハンプラスの排気量ゆえ、高速道路でのハイスピードクルージングも楽々こなす。

最新のモデルらしく電子制御も充実。3種類の設定からなるライディングモードセレクターや、介入の度合いを4段階(OFFも含む)から選べるトラクションコントロールなどが標準で装備される。
最新のモデルらしく電子制御も充実。3種類の設定からなるライディングモードセレクターや、介入の度合いを4段階(OFFも含む)から選べるトラクションコントロールなどが標準で装備される。拡大
エンジンは排気量775ccの並列2気筒DOHC。2軸1次バランサーの採用によって振動を低減しており、低回転域での粘り強さと高回転域までスムーズに吹け上がる回転フィールを実現している。
エンジンは排気量775ccの並列2気筒DOHC。2軸1次バランサーの採用によって振動を低減しており、低回転域での粘り強さと高回転域までスムーズに吹け上がる回転フィールを実現している。拡大
フロントサスペンションは日立アステモ製の「ショーワSFF-BP」倒立フォーク。左右のフォークに異なる機能(右:ダンパーとスプリング、左:スプリング)を担わせることで内部構造の簡素化と軽量化を実現。ピストン径の大きなダンパーにより、高い減衰力を発揮する。いっぽうリアには、プリロード調整機能を備えたリンク式モノショックを採用している。
フロントサスペンションは日立アステモ製の「ショーワSFF-BP」倒立フォーク。左右のフォークに異なる機能(右:ダンパーとスプリング、左:スプリング)を担わせることで内部構造の簡素化と軽量化を実現。ピストン径の大きなダンパーにより、高い減衰力を発揮する。いっぽうリアには、プリロード調整機能を備えたリンク式モノショックを採用している。拡大
タイヤサイズは前が120/70ZR17、後ろが180/55ZR17。「GSX-8R」に合わせて内部構造を最適化した「ダンロップ・スポーツマックス ロードスポーツ2」を装着している。
タイヤサイズは前が120/70ZR17、後ろが180/55ZR17。「GSX-8R」に合わせて内部構造を最適化した「ダンロップ・スポーツマックス ロードスポーツ2」を装着している。拡大
シート高は810mm。スリムな車体、スリムなシートレールとも相まって、フルカウルのスポーツモデルとしては足つき性は良好だ。
シート高は810mm。スリムな車体、スリムなシートレールとも相まって、フルカウルのスポーツモデルとしては足つき性は良好だ。拡大
カラーリングは「トリトンブルーメタリック」「マットソードシルバーメタリック」「マットブラックメタリックNo.2」の3種類。訴求色はブルーのようだが、シルバーの試乗車も濃緑に映えて非常にカッコよかった。
カラーリングは「トリトンブルーメタリック」「マットソードシルバーメタリック」「マットブラックメタリックNo.2」の3種類。訴求色はブルーのようだが、シルバーの試乗車も濃緑に映えて非常にカッコよかった。拡大

いうなれば万能スポーツツアラー

ハンドリングは素直そのもので、山道峠道では八分の気持ちで走るのが心地いい。滑らかな動力系を愛(め)で、まわりの景色にも目をやって、ときにカーブ直前でクイックシフトを活用して、パン、パン! と素早くギアを落としてその気になる。そんなところが8Rツーリングの醍醐味(だいごみ)だ。

ちなみに8Rのシート地は、オシリを左右に動かすには滑り止めが利きすぎるきらいあり。腰を落ち着けて乗れということか。そのうえ調子に乗ってタイトカーブで速度を上げるとステップを擦りがちだから、“曲がり”でボディーを傾けることに情熱を燃やすタイプの人は、バックステップを検討したほうが……などと考えるのは無粋なことである。スズキのサイトでは、GSX-8Rを「幅広いライディングを楽しめるスポーツバイクの新しいカタチ」と紹介しているが、要は「公道の万能スポーツ」なのだ。

蛇足ながら、もう一言。メディアとしてはスズキGSX-8Rのライバルは「ヤマハYZF-R7」(688cc/105万4900円)ということになろうが、個人的には(ややクラスが異なるが)「カワサキ・ニンジャ650」(649cc/104万5000円)を挙げたい。見た目のキャラは違うが、カッコよく、スポーツもこなし、長距離がラク。乗り手に優しい、そして楽しい“旅バイク”として選択に迷いそうだ。

(文=青木禎之/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)

スズキGSX-8R
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スズキGSX-8R(6MT)【レビュー】の画像拡大
 
スズキGSX-8R(6MT)【レビュー】の画像拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2115×770×1135mm
ホイールベース:1465mm
シート高:810mm
重量:205kg
エンジン:775cc 水冷4ストローク直列2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:80PS(59kW)/8500rpm
最大トルク:76N・m(7.7kgf・m)/6800rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:23.4km/リッター(WMTCモード)
価格:114万4000円

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青木 禎之

青木 禎之

15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。

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