ドゥカティ・スクランブラー フルスロットル(6MT)
多芸多才な伊達男 2024.09.07 試乗記 人気を博す新世代「ドゥカティ・スクランブラー」シリーズのなかから、ダートトラッカーを思わせるカスタムスタイルが魅力の「フルスロットル」に試乗。元気な空冷Lツインで軽量ボディーを振り回す楽しさを、存分に味わった。ただのオシャレバイクにあらず
ドゥカティ・スクランブラーが2023年にフルモデルチェンジを受け、この2024年から日本での販売が始まった。とはいえ同車が持つイメージはそのままで、ワイルド風味の装いとは裏腹にメインステージはもっぱら都会。パートナーと一緒ににぎやかなストリートを回遊しながら、ライディングウエアやオリジナルのカスタマイズを披露して自らの趣味のよさをアピールする。そんなオシャレバイクが、イタリアから来た新型スクランブラーである。
……てな具合に、勝手にニューモデルを結論づけていた自分をしかりつけたい。スイマセンでした。スクランブラー フルスロットルのシートにまたがって箱根のカーブをこなしながら、おのれの不明を恥じるばかり。ナンパ志向の先入観をブッ飛ばして、フルスロットルはファン・トゥ・ライドを強烈に印象づけるニューフェイスだった。軟弱ライダー(←ワタシです)は、「やっぱり峠に来てみてヨカッタなァ」と思うわけです。
モデルチェンジされたとはいえ、パワーソースとしてこれまでどおり「モンスター769」由来の空冷Lツインを、スチール製のトレリスフレームにつる。新たに軽量化された2バルブの“デスモドゥエ”ユニットは、803ccの排気量から73PS/8250rpmの最高出力と65.2N・m/7000rpmの最大トルクを発生。旧型のスペックと比較すると、カタログ上はやや高回転型に振られたが、実際には3000rpmも回せばズンと腹に響くパンチ力を見せ、4000rpm、5000rpmとスムーズに回っていく。
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ライダーを楽しませるエンジンとハンドリング
2気筒の豊かな駆動力と併せてすばらしいのがレスポンスのよさで、ライディングモードを「Sport」に設定しておけば、右手のわずかな動きに間髪入れず反応し、先代より4kg軽くなったという185kgのボディーを軽々と運んでいく。スロットルを多めに開けてやると、「待ってました!」とばかりに頼もしく飛び出していき、その加速力に驚かされる。
街なかライドではなんだか落ち着きが足りなくて、「もう少しキャスター角をとったほうがいいんじゃね?」と感じさせた立ち気味フロントフォークが、細かい“曲がり”が続くつづら折りではドンピシャ。ほどほどのペースで走っていてもバイクがグイグイ曲がっていって乗り手を喜ばせる。「オレ、乗りこなせてる!?」と、いささか自意識過剰気味に勘違いさせる。
シフトアップとダウン、双方に対応するクイックシフターはレーシーな気分を盛り上げるだけでなく、状況によっては左手のクラッチ操作を省いてライディングに専念する実益も提供してくれる。ニュースクランブラーには、調整可能なトラクションコントロールはじめ、車体の傾きに応じて制御を変えるデュアルチャンネル・コーナリングABSも標準で装備されるから、ガチ系の走り好きライダーでも操りがいがあるのではないかと思う。
先代より格段に進化した電子制御
さて、順序が逆になってしまったが、新しいスクランブラーには大別して3種類が用意される。最もベーシックなモデルが「アイコン」(129万9000円)。ややハンドル位置を下げて、走り好きが最初に手がけるであろうカスタマイズを前もってやってくれているのが今回の「フルスロットル」(149万9000円)。テルミニョーニのマフラー(サイレンサー)がおごられ、アイコンではオプション装備となるクイックシフターを標準で備える。
また、「夜」をモチーフにしたという「ナイトシフト」(
三者に共通する一番のトピックは、いわゆるライド・バイ・ワイヤが採用されたこと。スロットルがグリップと電子的につなげられ、細かな制御で排ガス規制に対応するだけでなく、「Road」と「Sport」からライディングモードを選べるようになった。加えて新採用の4.3インチカラー液晶の画面上で、出力特性も2段階(ハイとミディアム)から、トラクションコントロールの介入度合いも4段階(OFFも含めると5段階)から選択できる。
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街乗りも遠出もこなす度量の深さ
編集部でフルスロットルを受け取った後、まずは「Road」で走り始める。「Lツイン、ずいぶんおとなしくなったね」とやや寂しいが、パワーの出方が優しくて、ストップ&ゴーの多い都市部でもストレスがかかりにくい。渋滞時の、低回転域での扱いやすさも特記事項。アイドリング付近でもよく粘り、過不足なくバイクを動かしてくれる。自慢のテルミニョーニのサウンドは控えめで、言うまでもなく社会適合型のメーカーカスタムだ。
803ccのキャパシティーを持つので、高速巡航も難なくこなす。トップギア100km/hでのエンジン回転数は約4400rpm。まだまだ余裕だ。たまには都会の雑踏から離れて、山や峠を目指すのもいい。シティー派を気取ってすてきなヒトとスタイリッシュなスクランブラーで街を流すだけなんて……。いや、うーん。それはそれで、ちょっとウラヤマシイかも。
(文=青木禎之/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1449mm
シート高:795mm
重量:176kg(燃料を除く)
エンジン:803cc 空冷4ストロークV型2気筒SOHC 2バルブ(1気筒あたり)
最高出力:73PS(53.6kW)/8250rpm
最大トルク:65.2N・m(6.7kgf・m)/7000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.2リッター/100km(約19.2km/リッター)
価格:149万9000円

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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