第416回:いつになく迷った日本カー・オブ・ザ・イヤー 小沢コージ的COTYはこれだ!
2010.11.12 小沢コージの勢いまかせ!第416回:いつになく迷った日本カー・オブ・ザ・イヤー 小沢コージ的COTYはこれだ!
本命不在の年
今年も恒例の年男ならぬ“年グルマ”を選ぶ年いちイベント、COTYこと日本カー・オブ・ザ・イヤーの季節がやってきてしまいました。「しまいました」ってのは、懲りずに選考委員を務めさせていただく不肖オザワの偽らざる心境で、晴れがましくもそれなりにプレッシャーなのでございます。
「しょせん販売に無関係」「結局はお祭りでしょ!」と最近イヤミを言われるイベントですが、そうはいっても受賞車はニュースとして取り上げられるわけだし、なにより製品はメーカーにとっての努力の結晶! 評価を受けることに必死になるのもわかるし、大事な仕事として扱われているわけです。ハタから見るより真剣なわけですよ。
「不出来」と言われることの多い悪ガキでも、親からすれば「可愛いわが子」というのが、モノ作り産業の面白さであり、深み。COTYにはCOTYなりのドラマと悩みと駆け引きがあるのでございます。
でも正直、普段の付き合いがツライんですわ。たとえば広報車を借りに行って、たまたま広報部の人に会ったとしましょう。この時期だと決まって「ああ、小沢さん! せっかくですからお茶でも」ってなるわけですよ。
とはいえ、みなさんが思うほどオイシイ話はなく、コーヒーを飲み飲み「手応えはどうですか?」という話になり、「ウチも大変ですよ」となり、さらに「ウチの○×は結構売れていて……」あーだこーだとなる。子供の進路相談というか、級長選挙のようなもので、なおかつ自分が決定者の一員。となると結局は人と人の付き合いだから、「前向きにご検討を……」となって終わる。その心の触れ合いがどうにも……疲れる……あ〜(苦笑)。
今年は……荒れるぜ!
さて今年、あるジャーナリストはポツリと言いました「今年は……荒れるぜ」と。
なぜなら本命がいそうでいなかったから。今年世間的にバカ売れしたのは相変わらず「トヨタ・プリウス」であり、物議を巻き起こしたのも同車。だけど去年出たクルマだから、COTYの俎上(そじょう)には上らない。というか、社会的には「エコカー減税&補助金」が一番の話題であり、他はあまり記憶に残っていない。
となると正直、どれでもいい。たとえば予選ならぬ10ベストに選ばれたのは、ざっとトヨタが“最後のハイソカー”こと「マークX」、日産が“初のオンリー海外生産メジャー国産”の「マーチ」、BMWが“高級車なのにエコ”な「5シリーズ」、メルセデスが“日本初のクリーン高級ディーゼル”「E350ブルーテック」、ジャガーが“過去を捨てた高級車”「XJ」、マツダが“あり得ないミニバンデザイン&アイドルストップ”の「プレマシー」、フォルクスワーゲンが“初代ゴルフの再来”「ポロ」、ホンダが“初のハイブリッドスポーツ”「CR-Z」、スズキが“熟成コンパクト”の「スイフト」、最後に“コンセプト画から飛び出してきたフレンチクーペ”「プジョーRCZ」という具合。
どれもそれなりに理由がつくクルマだけど、あらためて見回すと……つくづく本命がございません。あえて言うなら、今はエコカーの時代なので、燃費のいいコンパクトカー系が有利で高級車が不利。マーチ、ポロ、CR-Z、スイフトの4台が抜け出すと、小沢的にはそういう見立てでありました。
これが去年はすごく分かり易かったわけですよ。低価格を武器に登場した「ホンダ・インサイト」と、今も快進撃を続ける3代目「トヨタ・プリウス」というハイブリッド2台巨頭のイッキ討ち。個人的には電気自動車元年だと思ったので、去年は「三菱i-MiEV」1本だったけど、今年は迷ったな。ホント、どれが大賞取っても理由付けできるもん。
実際、11月9日に行われた投票発表によると、最初はフォルクスワーゲン・ポロがリードして「初の輸入車受賞?」と思いきや、最後の3〜4人でホンダCR-Zが逆転して、そのまま受賞!! ただし、COTYは60人の選考委員の配点で争われるわけだけど、1位のCR-Zと2位のポロの得点差は過去最少差の9点。まさに今年のF1よろしく荒れた試合(?)になったわけ。
個人的には、いまハイブリッド信仰が強すぎる日本で、一番その存在を訴えるべきだと思ったヨーロッパ流ダウンサイジングカーの象徴、ポロに10点。あとはスイフト、マーチを順に並べました。でも残念ながらダメだったね。俺が応援すると大賞は取れない? ってか(苦笑)。
オザワ的COTYは「日産ジューク」!!
でもね。ぶっちゃけ一番入れたかったのは、「日産ジューク」なんだよね。本戦の前に10台を選ぶ時点で消えちゃったけど、話題性、革新性共に文句無し。売れ行きも悪くないし、デザインもユニーク。あれこそ日本車の行く先を示していたようにも思う。
だからこの場で発表してしまいます。小沢的COTYは日産ジュークだ! と。
とはいえ本当の大賞を言っちゃうと、実はメーカーの、特に広報担当者かな。この自動車&メディア不況の最中、いわゆる“祭り”はどんどん縮小する傾向にあり、特に販売に直結するとみなされにくいイベントはその傾向が強い。広告費や広報予算がバンバン削られていく時代にあるのに、ホント私なぞにマメにお声がけしていただき、本当にありがとうございました。
でもみなさまからの声は基本無視して、勝手に選ばせていただきましたのであしからず(笑)。
(文と写真=小沢コージ)
![]() |

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。