いまからデビューが気になっているクルマは?

2024.10.22 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

さまざまなブランドと車種があるなかで、多田さんが“次に出る新型”に最も期待を寄せるモデルは何ですか? その理由も、ぜひお聞かせください。

いま興味があるのは、出るぞ出るぞとうわさされている、小さなサイズの「ランドクルーザー」です。モデルチェンジによる新型ではなく新規車種ということになりますが。ちまたで仮に“ランクル ミニ”“ミニランクル”などの名で語られているクルマですね。

きっと発売されるだろうという前提でいうと、まず、どういう仕立てでくるのかが気になります。新たにフレームを開発して、本格的なクロカンとして売り出すのか。それとも、“なんちゃってランクル”みたいなキャラクターで、例えば「ヤリス クロス」をベースに見た目だけそれっぽく、という路線でいくのか……。

商売上プラスになるのは、明らかに後者です。本格クロカン路線で突き進んでも、このジャンルではスズキの「ジムニー/ジムニーシエラ」が限られたパイを押さえていて、その実力の高さでプロユースを含むドライバーの厳しい要求を満たし、国内外で支持されている。それを食い合ってもしかたないのです。

本格的なクロカンは買えない、あるいは買う必要のない人に、お手軽な値段でその雰囲気が楽しめる製品を提供すれば――それは極めてトヨタらしい手なのですが――大いに売れるはずです。そこに、これまでクロカン・オフローダーで鳴らしてきた三菱がどう絡んでくるのかも気になる。三菱はこのところ経営的にも余裕が出てきて、かの「パジェロ」ブランド復活のうわさもあります。そんな三菱をも交えた争いがどうなるのか、興味深いところです。

もちろん、世の中的にはSUVブームが長く続いていて、ボディータイプのうえでこれに代わるものがすぐさま出てくる気配がない、というのもあります。

ランクルに関していうなら、“ミスター・ランクル”といわれた名物エンジニアである小鑓貞嘉さんの思いやこだわりがファンに広く知られてきましたが、最近のトヨタはどうかといえば、クルマの向こうに開発者の顔が見えるほどの信念の強さ、キャラクターの濃さが感じられません。クロカンやスポーツカーなど、趣味性の高いクルマのユーザーは、そういうところにも期待すると思うのですが……。

一体どれほどつくり手のこだわりが生かされたクルマが出てくるのか、あるいはそうではないお手軽商品でくるのか。コンパクトなクロカンというのは、このところトヨタにはラインナップされていなかっただけに、どう対応するのか関心があります。「ランクルの次の一手に、トヨタの将来が見えてくる」とでもいいましょうか。

→連載記事リスト「あの多田哲哉のクルマQ&A」

多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。