電気自動車の「Gクラス」が日本上陸! 「G580」は「AMG G63」を超えたのか!?
2024.10.30 デイリーコラムBEVならではの走破能力
新しい電気のゲレンデヴァーゲン「メルセデス・ベンツG580 with EQテクノロジー」は「メルセデスAMG G63」を超えたのか? というお題を編集部からいただいた。へ? そんなことあるわけないじゃん。G63はメルセベス・ベンツのアイコン、究極のオフローダーなのだからして。
だが、G580の新機軸を確認して驚嘆した。その場でグルグル回っている!? 「G-TURN(ジーターン)」なる新用語はこれであったか……とハタと理解した。いわゆるタンクターン。戦車のようにその場での自転ができる。それもG580の場合は360°ターンを2回連続で720°。目が回っちゃうかも。
かたちは1979年発表のゲレンデヴァーゲン、すなわち現在のGクラスとほとんど同じ。なのに中身はラダーフレームからして新設計。前後左右それぞれに独立制御のモーターを持っている。左右の車輪を逆回転できるからG-TURNなんて荒技ができるのだ。「G-STEERING(ジーステアリング)」という、25km/hまでの低速で、内輪と外輪で回転数を変えることにより、小さく曲がる能力も持っている。どちらもオフロード以外での使用をメーカーは禁じているけれど、SNS映えすること疑いなし。
モーターにはそれぞれローレンジが付いていて、「オフロードクロールファンクション」なる、大きな凸凹路面もなんのその、という踏破力を備えている。4つのタイヤを自在に動かすことができるから1輪や2輪、接地していなくてもヘイチャラである。水深850mmの渡河能力もある。これは内燃機関版の「G450d」を150mm上回っている。
モーター1基の最高出力と最大トルクはそれぞれ147PSと291N・m。4基合わせて587PS! 最大トルクは1164N・mもある。G63の4リッターV8ツインターボは580PS、850N・mで、ISGのモーターが20PSと208N・m。G580の4つのモーターは、4リッターV8以上の最高出力を誇り、最大トルクは、ISGと単純に足したG63の1058N・mを100N・m以上超えている!
0-100km/hはケイマンより速い
車重は3t超えだ。「G63ローンチエディション」の2570kgなんて軽いものである。日本仕様の「G580エディション1」は3120kgもある。それでいて、0-100km/は4.7秒の俊足を誇る。G63ときたら、550kgも軽いくせに4.4秒と、コンマ3秒速いだけだ。G580は3t超えにして、「ポルシェ718ケイマン」の5.1秒より速く、「ケイマンS」の4.6秒に迫る。アニメ『ダンダダン』に出てくるターボババアより速いかも……。少なくとも、そのエネルギーの巨大さたるや、G63を確実に超えている。
サウンドの面でも、「G-ROAR(ジーロア)」なる仕掛けを備えて抜かりない。V8を思わせる低いバスのサウンドで、G580はほえるらしい。電気自動車(BEV)なのに……。
サスペンションはフロントが独立のダブルウイッシュボーン、リアはリジッドだけれど、ド・ディオンを採用している。G63はフロントは同じ、リアは同じくリジッドだけど、ド・ディオンアクスルではない。でも、可変ダンピングを備えている。G580の場合、独立の4モーターの4WDだから、前後をつなぐプロペラシャフトも機械的なディファレンシャルもない。そのことと、550kg増しの重量ボディーがもしかしてG580に内燃機関のGクラスを超える乗り心地を実現している……かもしれない。それでなくても、筆者がかつて試乗したG63ローンチエディションのタイヤは21インチの285/45、G580エディション1は20インチの275/50で、スポーティー度とかワイルド度はさておき、BEVの振動のなさ、静粛性から想像しても快適度では超えていることだろう。
ただ、それがSUVとして魅力的であるかどうか。いかにオフロードの踏破能力が高かろうと、それとはまた別の話だ。
なお、一充電走行距離はWLTCモードで530km。G63の場合、燃費がWLTCモードで6.8km/リッターで燃料タンクが100リッター、単純計算で680km。ではあるけれど、G580も東京都心と箱根を無充電で往復できそうである。
もしものときはG-TURNで
G580がG63を超えているとすれば、新しいものを創造しようとするメルセデス・ベンツのチャレンジスピリットであろう。オンリーエレクトリック戦略を棚上げしたとしても、向かうべき方向は変わらない。CO2の排出による地球温暖化を止める方策としてはBEVしかない。というのが現段階における合理的な選択である。BEVを普及させるためにはどうすればよいのか? 自動車界の盟主、メルセデス・ベンツは自社のために全方位政策をとるのではなくて、人類の未来を考えている……ように見える。自動車を発明したメーカーの責任、自負がそこにはある。
電気ですか~。電気があれば、なんでもできる。というアントニオ猪木のセリフのもじりを筆者がつい書いてしまうのは、そこに闘魂の名残を感じるからで、あの『炎のファイター』のイントロ、イノキ・ボンバイエ♪が聴こえてくるからなのですけれど、メルセデス・ベンツにはこう言ってあげたい。
この道をゆけばどうなるものか。危ぶむなかれ。迷わずいけよ。いけばわかるさ。ありがと~。
G-TURNもできるしね。そんときは引き返そう。
(文=今尾直樹/写真=メルセデス・ベンツ日本/編集=藤沢 勝)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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