第810回:AUTECHとNISMOが“ふる里”に大集合! 「AOG湘南里帰りミーティング2024」を取材して
2024.11.25 エディターから一言![]() |
オーテック(現日産モータースポーツ&カスタマイズ)のファンにとって、年に一度の祭典である「AOG湘南里帰りミーティング」。オーナー同士はもちろん、メーカーとオーナーも親睦を深めるおおらかなイベントを今年も取材した。
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年に一度のオーテックの祭典
秋深き2024年11月16日、湘南の海に臨む大磯プリンスホテルの駐車場にて、AOG湘南里帰りミーティング2024が開催された。「AOG」とは「オーテック・オーナーズ・グループ(AUTECH OWNERS GROUP)」の略で(Facebook内には同名のSNSグループも存在する)、つまりこのイベントは、オーテック車のオーナーズミーティングだ。旧オーテックジャパン/現日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)が手がけたカスタムカーが、その工場のある湘南に戻る、すなわち「里帰り」するというのが、このイベントだ。
特徴は、車種ごとのミーティングではなく“ブランドしばり”となっている点で、「AUTECH」の名を冠する各モデルに加え、「NISMO」の名がつく一部のハイパフォーマンスモデルもオーテックが手がけていたため(今はもちろんNMCが手がけている)、同イベントにはNISMOのオーナーも多数参加している。この日の空は花曇り、海風はまだぬるく、まさに絶好のミーティング日和。開会は午前10時だったが、夜明け前から駆けつける人もいたという。それだけファンにとって待ち遠しい、年に一度のイベントなのだろう。
「当社商品を愛用するお客さまに感謝の意を込めて開催しています。車種の垣根があっても、“by オーテック”ゆえにつながれる楽しさを大切にしていただく。主催者側が用意したものを見るイベントではなく、愛車を持ち寄ったお客さまが主役になれる場の提供を心がけています」と、同イベントの開催意図をオーテックは説明する。主催はメーカーだが、主役はあくまでオーナーなのだ。
さまざまな年代のさまざまなクルマが並ぶ
AOG湘南里帰りミーティングの初開催は2004年のこと。途中で台風やコロナ禍による中止もあったために開催はこれで17回目となるが、今年(2024年)は20年目の節目の年である。それもあってか、今回の申し込みは過去最多の405台/766人にもなったという。しかし、当日は渋滞に巻き込まれての遅刻の多発もあって、正式参加数としてカウントされたのは354台/611人。残念ながら過去最多には達しなかった。しかし、これまで何度も同イベントを取材した筆者としては、会場を見た瞬間に「おお! 参加者が多い」という言葉が飛び出た。これまででトップクラスの規模であったことは間違いない。
参加車両の内訳は、申し込みベースでいうと「セレナ」と「ノート」が最も多く、各80台ほど。それに55台で「マーチ」が続く。それ以外は「スカイライン」や「ノート オーラ」「エクストレイル」「シルビア」「エルグランド」などが、それぞれ20台ほどで並ぶといった具合だ。年式で見れば1980年代から2020年代まで幅広い世代のモデルが参加しているが、今回は新しい2023年モデルの車両が抜きん出て多いのも特徴で、最近のモデルの人気がうかがえて興味深かった。またAUTECHとNISMOの比率については、会場を見たところ拮抗(きっこう)している印象だった。
イベントは午前10時の開会式からスタート。まずはNMCの片桐隆夫CEOがあいさつし、次いでゲストであるSUPER GT 23号車「MOTUL AUTECH Z」の千代勝正選手と、後日SUPER GT引退を表明したロニー・クインタレッリ選手、そしてAUTECHレースアンバサダーの高岡みほさんが、白バイおよび貴重な4ドアの「日産スカイラインGT-Rオーテックバージョン40th Anniversary」のパトカーによる先導で登場した。地元の大磯警察も同イベントに参加・協力しているのだ。また3人でのあいさつでは、千代選手の親がオーテック車のオーナーであったことが判明。意外にも長いオーテックとの縁が明らかとなった。
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会場のそこここで盛り上がるオーナーの交流
開会式の後には、日産自動車吹奏楽団による生演奏も披露。この楽団は厚木市の日産テクニカルセンターに勤務する、日産とその関係会社の社員からなる。ポップスを中心とした軽快な音楽で、参加者を楽しませていた。
そうしてステージイベントが一段落したら、参加者は会場の各所にある展示車へと散らばっていく。今回もAUTECHとNISMOの最新モデルを筆頭に、ライフケアビークル(介護向け車両)やキャンプ向けのカスタムカー、日本未導入の海外向けのモデル、レーシングカー(「Z NISMO GT4」のホワイトボディーなんてものもあった)、そして懐かしのNISMOの名車など、彼らが手がけた車両が数多く用意されていた。
催し物も盛りだくさんで、特に申し込みの長蛇の列ができていたのが「モノづくり体験」コーナー。小さな子供から大人までが、自身で型押しを行うレザーキーホルダーづくりや、ハンドプレスと磨きを行うメダル製作などのモノづくりに挑戦していた。
いっぽう、会場を埋める参加車の間では、オーナー同士の交流が始まる。クラブ単位での参加者たちが立ち話で近況を報告し合ったり、あるいは愛車の前にイスとテーブルを置き、まったりと会話や軽食を楽しんだりする人も数多く見られた。20年も続くこのイベントなので、参加者同士の知り合いも多く、年に一度の再会と交流を楽しみにしている人もいたようだ。また子供連れ、家族連れの参加者が数多く見られたのも印象的だった。先述したモノづくり体験や、輪投げなどの「縁日コーナー」「天然もみの木リースづくり」といったプログラムが充実しているので、家族みんなで楽しめるのだろう。
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クルマは違えど気持ちは一緒
ステージのトークショーは、午前と午後にそれぞれ1回ずつ行われた。午前はNMCでカスタムカーの開発を担う、テストドライバーの高澤 仁氏と主担の成冨健一郎氏によるエンジニアのトークショーだ。「うちの会社では、クルマの変態というのは褒め言葉」との言葉が飛び出したように、開発に対するこだわりが熱く語られた。いっぽう午後のトークショーは、ゲストである千代選手とクインタレッリ選手、そして高岡みほさんが担当。SUPER GTの裏話や苦労話、勝利に懸ける強い思いなどが語られ、NISMOのアイテムを身に着けた熱心なファンが耳を傾けていた。
時間が過ぎるのは早いもので、閉会の14時が迫る。来場者を見送るために会場の出口に並ぶNMCスタッフの手には、手づくりのメッセージボードが。これを掲げて手を振る彼らの姿は、本イベントのお約束といえるだろう。
車種も年式も異なるオーナーが集うAOC湘南里帰りミーティングだが、オーナーのクルマを思う熱い気持ちは同じ。主催者も来場者もみんなが笑顔な、いつもどおりのアットホームなミーティングだった。
(文と写真=鈴木ケンイチ/編集=堀田剛資)
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鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
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