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トライアンフ・スピードツイン900(5MT)

伝統と革新のロードスター 2025.01.11 試乗記 佐川 健太郎(ケニー佐川) クラシックなスタイルが魅力の、トライアンフのロードスター「スピードツイン900」。その大幅改良モデルの国際試乗会がスペインで開催された。モダンな走りと伝統の味を両立した新型の魅力を、モーターサイクルジャーナリストのケニー佐川がリポートする。
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足まわりの強化でスポーティーな走りを追求

古きよき時代のトライアンフの姿を今に伝えるモダンクラシックファミリーのなかでも、最もベーシックなモデルがスピードツイン900である。

出自をざっと説明しておくと、もともとは水冷エンジンを搭載した新生「ボンネビル」シリーズが登場した2016年に「ストリートツイン」としてデビュー。シリーズ中で最もシンプルでモダンな雰囲気を持ったエントリーモデルとして、長らく親しまれてきた。何度かのマイナーチェンジによりエンジン出力向上などのアップグレードを受け、2023年にスピードツイン900へと名称を変更。同じタイミングで兄貴分の「スピードツイン」も「スピードツイン1200」を名乗ることになり、リブランディングされて現在に至っている。そして今回、2025年モデルとして1200とともに900にも大幅なアップデートが施された(参照)。

エンジンは従来どおり、899ccの排気量を持つ水冷並列2気筒SOHCの高トルク型ユニットを搭載。スロットル制御はライド・バイ・ワイヤで、最高出力65PS/7500rpm、最大トルク80N・m/3800rpmのスペックも変わっていない。

いっぽう、大幅に進化したのが足まわりで、前後ともにマルゾッキ製となるサスペンションは、フロントに倒立フォーク、リアにピギーバック式ツインショックを新採用。新型の軽量ホイールにはフロントにφ320mmの大型ブレーキディスクを装備しており、トライアンフ銘柄の4ピストンラジアルキャリパーとの組み合わせで制動性能を強化している。フレームも新設計となり、リアフレーム部をスリム化しつつ若干テールアップした形状へと変更された。

開発スタッフによると、かねてよりの素性であるフロント18インチホイールの安定感を生かしつつ、新型ではキャスター角を若干立てながらトレール量を増やし、俊敏かつ安心感のあるハンドリングを実現。さらにスイングアームも、材質を従来のスチールからアルミ鋳造としつつ長さを15mm短くすることで、しっかりとした剛性感を出しながら旋回力も高めたという。

トライアンフが擁するモダンクラシックファミリーのエントリーモデル「スピードツイン900」。従来型はベーシックなネイキッドバイクという趣だったが、今回の改良でスポーティーなキャラクターが付与された。
トライアンフが擁するモダンクラシックファミリーのエントリーモデル「スピードツイン900」。従来型はベーシックなネイキッドバイクという趣だったが、今回の改良でスポーティーなキャラクターが付与された。拡大
排気量899ccの並列2気筒SOHCエンジン。改良型では下部のエンジンケーシングなどが、やや引き締まった意匠に変更された。
排気量899ccの並列2気筒SOHCエンジン。改良型では下部のエンジンケーシングなどが、やや引き締まった意匠に変更された。拡大
大幅に強化されたサスペンション。前後ともにマルゾッキ製で、前はφ43mmの倒立フォークでホイールトラベルは120mm。後ろはピギーバックタイプのプリロード調整機能付きツインショックで、ホイールトラベルは116mmだ。
大幅に強化されたサスペンション。前後ともにマルゾッキ製で、前はφ43mmの倒立フォークでホイールトラベルは120mm。後ろはピギーバックタイプのプリロード調整機能付きツインショックで、ホイールトラベルは116mmだ。拡大
足まわりは、軽快なハンドリングと走行安定性を両立するべく、ジオメトリーを変更。具体的には、ホイールベースを従来の1450mmから1435mmに縮小。フロントのキャスター角も25.1°から24.9°へとわずかに狭めたいっぽうで、トレール量は102.4mmから103mmへと拡大した。
足まわりは、軽快なハンドリングと走行安定性を両立するべく、ジオメトリーを変更。具体的には、ホイールベースを従来の1450mmから1435mmに縮小。フロントのキャスター角も25.1°から24.9°へとわずかに狭めたいっぽうで、トレール量は102.4mmから103mmへと拡大した。拡大
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クラシカルな味わいと現代的な走りが同居

デザインも一新された。スリム化された燃料タンクから続くスロットルボディーとサイドパネルは一体化のあるデザインへと洗練され、シートにはクラシカルなベンチシートを採用。エンジンカバー類もスリム化され、サイレンサーもコンパクトにおさめられている。小径薄型のフルLEDヘッドランプを装備し、前後フェンダーもショート化されるなど、全体的にスポーティーで躍動感のある現代的なデザインへと昇華された。

機能面でも、多彩な情報を表示できるTFTディスプレイ内蔵のLCDメーターを新採用。ライディングモードは従来の「ロード」と「レイン」の2種類だが、新たにリーンセンサー付きのコーナリングABSとトラクションコントロールが標準装備とされ、安全性も向上している。

訴求色が白地に鮮やかなオレンジとスカイブルーという派手なカラーリングとなったせいもあるかと思うが、だいぶスポーティーで軽快感のあるスタイルになった。従来はダーク系のイメージが強かったが、大胆なイメチェンだ。

車格は、先月に試乗した新型スピードツイン1200(参照)に比べるとひと回りコンパクト。シートは780mmと従来よりも15mm高めだが、シートまわりがスリムになったおかげで足つきはむしろよくなった気もする。ハンドルも高めでヒザの曲がりも緩い自然なライディングポジションとなるなど、街乗りでの扱いやすさを求めた元祖ストリートツインの面影はちゃんと残っている。

走りだしても、フロント18インチとオーソドックスな車体構成によるクラシカルな乗り味は健在。いい意味でちょっと昔のバイク的で、フロントをあまりプッシュせずに自由に泳がせながら、ややシート後方にどっかり座りリーンウィズのまま体重移動で操っていくタイプだ。右に曲がりたいときはシート右端に、左に曲がりたいときはシート左端に、座面を意識して体重を載せていくとハンドルが切れてスムーズに曲がる。リアステア的な乗り方が合っていると思う。

ただし、フレームと前後サス、スイングアームもアップグレードされているので、乗り味がだいぶ現代的になっていることは確か。リアサスのストローク量を少し減らしつつスイングアームも短くして、リアまわりをコンパクトにまとめることで、スロットルに対する車体の応答性を上げて旋回力を高めているようだ。見た目の雰囲気以上によく曲がってくれる。もちろん、従来モデルのねっちりとしたフロントの手応えとおおらかなハンドリングも捨てがたいが、新型はより軽快でスポーティーな乗り味でありながら、ちょっとアグレッシブに走りたい要求にも応えてくれる。安心してライディングできる走りのキャパシティーが増したと思う。

軽快感を重視して燃料タンクはスリム化。シートやサイドパネルの形状も見直され、より一体感のある意匠となった。
軽快感を重視して燃料タンクはスリム化。シートやサイドパネルの形状も見直され、より一体感のある意匠となった。拡大
メーターパネルは車速やエンジン回転数、ギアポジションなどを表示するLCDディスプレイと、走行モードなどの情報を映すTFTインフォメーションディスプレイの組み合わせ。Bluetoothで携帯端末と接続すれば、ターンバイターンナビゲーションの道案内なども表示できる。メーターカバーの側面には、USB Type-Cソケットが備わっている。
メーターパネルは車速やエンジン回転数、ギアポジションなどを表示するLCDディスプレイと、走行モードなどの情報を映すTFTインフォメーションディスプレイの組み合わせ。Bluetoothで携帯端末と接続すれば、ターンバイターンナビゲーションの道案内なども表示できる。メーターカバーの側面には、USB Type-Cソケットが備わっている。拡大
スリムな新形状のリアフレームに、薄型のシート、コンパクトなLEDテールランプにより、軽快な意匠となったリアまわり。シート高は780mmで、アクセサリーのローシートを選ぶと760mmに下げられる。
スリムな新形状のリアフレームに、薄型のシート、コンパクトなLEDテールランプにより、軽快な意匠となったリアまわり。シート高は780mmで、アクセサリーのローシートを選ぶと760mmに下げられる。拡大
カラーリングは、試乗車にも採用されていた訴求色の「ピュアホワイト」(写真右)と、「ファントムブラック」(中央)、「アルミニウムシルバー」(写真左)の3種類だ。
カラーリングは、試乗車にも採用されていた訴求色の「ピュアホワイト」(写真右)と、「ファントムブラック」(中央)、「アルミニウムシルバー」(写真左)の3種類だ。拡大
軽快な見た目にたがわず、走りもよりスポーティーなものに進化。どっかり座ってのおおらかな走りに加え、ややアグレッシブなライディングにも応えてくれるようになった。
軽快な見た目にたがわず、走りもよりスポーティーなものに進化。どっかり座ってのおおらかな走りに加え、ややアグレッシブなライディングにも応えてくれるようになった。拡大

日本のスケール感にぴったりな一台

バーチカルツインが紡ぐ270°クランクの不等間隔パルスは、高めのギアで流していてもずぶといトルクで路面を蹴り出していく。兄貴分の新型スピードツイン1200を上回る、エモーショナルな鼓動感を持っているかもしれない。

標準装着されている「ミシュラン・ロードクラシック」もかなり好印象だった。しっかりとした剛性感のあるタッチで、荷重をかけたコーナリングでも安心して身を預けることができる。マルゾッキの新型サスペンションの威力もあって、ことコーナリング性能に関していえば、従来モデルから大きく進化したと感じた。走り始めからほどなくして、前日の大雨によって泥で薄くコーティングされた、見るからに滑りそうな路面に遭遇したが、恐る恐る寝かし込んでいっても意外なほどグリップしてくれた。

出力が穏やかになるレインモードの効果に加え、ABSやトラクションコントロールがリーンアングル対応型になったことも大きなメリットだ。あくまでも保険ではあるが、どんな路面が待っているかわからないかの地でのツーリングでは、大層心強かった。トランスミッションは5段なので高速道路はつらいかと思っていたが、実際には120km/h巡行も楽々こなせるレベル。さすがに風圧はきつくなるが、ネオクラシックとしては十二分だろう。

思い起こせば、スピードツイン900は従来モデルもよかった。よりクラシカルな雰囲気と穏やかな乗り味を求めるなら、従来型もいまだにありだ。いっぽうで、スタイリッシュで現代的な走りを求めるなら、新型をおすすめしたい。いずれにしても、軽快で扱いやすく、普段着でも気軽に乗りまわせるということで、日本のライフスタイルやスケール感にはぴったりな一台といえよう。

(文=佐川健太郎<ケニー佐川>/写真=トライアンフ モーターサイクルズ/編集=堀田剛資)

ツブの大きな鼓動感と蹴り出しの強さは、大排気量の2気筒エンジンならでは。トルクは全回転域にわたって力強く、レスポンスも良好だ。
ツブの大きな鼓動感と蹴り出しの強さは、大排気量の2気筒エンジンならでは。トルクは全回転域にわたって力強く、レスポンスも良好だ。拡大
ステンレス鋼が用いられた左右2本出しのアップサイレンサー。改良型では長さが切り詰められた。
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タイヤサイズは前が100/90R18、後ろが150/70R17。純正タイヤは、ミシュランがクラシックモデルやスタンダードなネイキッドモデル向けに開発した「ロードクラシック」で、高い操縦安定性とウエットグリップ性能を備えている。
タイヤサイズは前が100/90R18、後ろが150/70R17。純正タイヤは、ミシュランがクラシックモデルやスタンダードなネイキッドモデル向けに開発した「ロードクラシック」で、高い操縦安定性とウエットグリップ性能を備えている。拡大
日本で乗るにも好適なバイクに感じられた「トライアンフ・スピードツイン900」。日本では、この2025年1月より改良モデルが販売される。
日本で乗るにも好適なバイクに感じられた「トライアンフ・スピードツイン900」。日本では、この2025年1月より改良モデルが販売される。拡大

テスト車のデータ

トライアンフ・スピードツイン900

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2090×777×1115mm
ホイールベース:1435mm
シート高:780mm
重量:216kg
エンジン:899cc 水冷4ストローク直列2気筒SOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:65PS(47.8kW)/7500rpm
最大トルク:80N・m(8.16kgf・m)/3800rpm
トランスミッション:5段MT
燃費:--km/リッター
価格:119万9000円~123万4000円

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佐川 健太郎(ケニー佐川)

佐川 健太郎(ケニー佐川)

モーターサイクルジャーナリスト。広告出版会社、雑誌編集者を経て現在は二輪専門誌やウェブメディアで活躍。そのかたわら、ライディングスクールの講師を務めるなど安全運転普及にも注力する。国内外でのニューモデル試乗のほか、メーカーやディーラーのアドバイザーとしても活動中。(株)モト・マニアックス代表。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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