トヨタ・クラウン エステートZ プロトタイプ(4WD/CVT)/クラウン エステートRS プロトタイプ(4WD/CVT)
無敵の4枚看板 2025.03.13 試乗記 2022年の「クロスオーバー」で始まった「トヨタ・クラウン」の16代目へのモデルチェンジがついに完結。シリーズの大トリを務めるのは久しぶりにその名が復活した「クラウン エステート」だ。プロトタイプモデルをドライブした印象をリポートする。大成功の方針転換
試行錯誤を繰り返してきたそれまでのセダン一筋戦略から、車型を増やした面構成でユーザーニーズに応える策へとシフトした16代目のクラウン。ちなみに2024年の年間販売台数は約6万3000台。登録車販売ランキングでは15位に入っている。15代目はモデル末期がコロナ禍というイレギュラーな状況だったが、その2022年の年間販売台数が約1万8000台と知れば、大胆な方針変更はきっちりと結果を出しているといえるだろう。気づけば丸の内や霞ヶ関のかいわいでも、クロスオーバーがショーファードリブンとして用いられる光景がごく普通のものになった。変わるまでは大変だが、変わってしまえばどうということはない。世の中そういうものなんだと思う。
そんな16代目クラウンの、4つのバリエーションの最後となったのがエステートだ。認証問題の関係もあって発売時期が後ろ倒しになっていたが、いよいよこの3月に正式発表を迎えるという。ちなみにウェブサイトでは2024年年央以降の発売予定とされている。
それにしてもクロスオーバーに「スポーツ」に「セダン」に……と、すでにバリエーションが3つもあるところに、エステートの居場所はあるのだろうかという疑問は湧く。が、開発担当のエンジニアに話を聞けば、最後の直6となった11代目のエステートを今も愛用する既納ユーザーも少なくなく、なかには次なるモデルを心待ちにしていてくれた方もいるという。
クロスオーバー×スポーツ=エステート?
今回は正式発表前のカスタマーイベントに相乗りするかたちでの試乗だったため、スペックやグレード構成、価格といったところの正式情報もない状態での取材となった。パワートレイン的にはハイブリッドとプラグインハイブリッドの2種類が用意されていたが、こちらの出力や燃費、航続距離などの情報も現時点では手元にない。
が、その成り立ちからある程度の推測はできる。まずサイズだが、当初発表のとおり全長は4930mm、全高は1880mm、全高のみ1625mmと5mm高くなるもようだ。そしてホイールベースは2850mmと、こちらも当初発表と同じだ。1880mmの全幅はスポーツに同じ。そして2850mmのホイールベースはクロスオーバーに同じ……と、同じ「GA-K」プラットフォームのファミリーにおいて、両モデルの混成的な車台となっていることが想定される。最低地上高は160mmと、こちらもスポーツと数値を同じくしている。
ならばスポーツでもその用途は賄えるのでは……と思うところだが、クラウン的区分においてスポーツはスタイリッシュであることを第一義としている。そのため、後席にも大人がゆったり座って、そのうえでしっかり積みたいというニーズには不足を感じる場面もあるかもしれない。エステートの登場はそこを補完する意味もあるのだろう。ちなみに後席使用時の荷室容量はトノカバーよりも低いスペースで570リッターだという。スポーツが同条件で397リッターだから、4割以上は大きいことになる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ハイブリッドがパワーアップ
そして後席フォールダウン時の荷室容量は1470リッター。これもトノカバーレベルまでゆえ、積載力は相当なものだ。実際、荷室の活用例を示したサンプルのなかには、大きなタイヤのスポーツサイクルやチェロのケースなども余裕で飲み込むシーンもあった。また、積み荷が安定して収められるよう、後席背もたれの背面にはフォールダウン時に荷室床面を拡張する折り畳み式のエクステンションが配されている。耐荷重20kgのそれを用いれば、フラットな状態のまま荷室長を2m超えまで伸ばすことが可能だ。自己責任ながら、車中泊などでも使えそうな機能ではある。
パワートレインはハイブリッドとプラグインハイブリッドの2種類のみ、そして駆動方式も四駆の「E-Four」のみとなる。ダイナミックフォースユニットのA25A-FXS型2.5リッター4気筒をベースとするそれは、お察しのとおりスポーツと同じだ……と思いきや、実はハイブリッドについては高荷重を想定し、スポーツよりも少しパワーを上げているという。燃費や航続距離についてはスポーツのそれからちょっと差し引いて考えておけば、著しく異なるようなことはないだろう。ちなみにプラグインハイブリッドの取材車はCHAdeMOポートを装備していたから、出先での充電やVtoHへの対応も期待できそうだ。
今回の試乗はおのおののパワートレインで2周ずつ。しかもプラグインハイブリッドはバッテリー残量が乏しい状態ということでお触り程度の印象ということにはなるが、パワートレイン的にはハイブリッドでも積極的に後輪を使って運動性能を高めるようなセットアップがなされていることが伝わってきた。加えてエンジン稼働時の、高速燃焼ならではのバリバリと割れるような爆発打音が抑えられたように感じられたが、その点は特に手は加えていないということなので、これはエステートならではの遮音や音響の効果によるものかもしれない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
懐かしい味わい
走ってのエステートらしさという点で挙げておきたいのは、操作に対する応答性が他モデルよりもいい意味で少しルーズに感じられることだ。後輪操舵の「DRS」を用いながらも操舵初期の動きは少しゆったりしていて、そこから切ったぶんだけきれいにゲインを高めていく。車格やディメンションの大きさも手伝ってだろうが、いたずらにスポーティーさを演出することなく、操作の量に比してリニアな動きはクルマの性格とよく合っている。特筆すべきはブレーキで、減速時のGコントロールから停止直前の抜きに至るまで、足先と完璧に呼応した動きをみせてくれた。無論一日の長もあるのだろうが、電動パワートレインの制動性能についてはトヨタのそれは一頭地抜けていると思う。
これをもってクラウンシリーズはラインナップの完成をみるが、エステートはセダンとともに、スポーツやクロスオーバーとは一線を画する動的なキャラクターを与えられたようだ。最もティピカルなクラウンは間違いなくセダンだが、昔からのおうような乗り味のDNAを、エステートは色濃く受け継いでいる。ともあれこの4モデル、よくも器用につくり分けたものだ。結果的に、水も漏らさぬ布陣として機能しているところが、なんともトヨタである。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
拡大 |
テスト車のデータ
トヨタ・クラウン エステートZ プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1880×1625mm
ホイールベース:2850mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:--PS(--kW)/--rpm
エンジン最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:--PS(--kW)
タイヤ:(前)235/45R21 97W XL/(後)235/45R21 97W XL(ミシュランeプライマシー)
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
トヨタ・クラウン エステートRS プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1880×1625mm
ホイールベース:2850mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:--PS(--kW)/--rpm
エンジン最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:--PS(--kW)
タイヤ:(前)235/45R21 97W XL/(後)235/45R21 97W XL(ミシュランeプライマシー)
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
BYDラッコ300プレミアム(FWD)【試乗記】 2026.9.16 中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。価格の安さや装備の充実度はすでに報じられているとおりだが、やはり自動車の仕上がりは実際に動かしてみなければ分からない。高速道路やワインディングロードでの印象をリポートする。
-
マツダ・ロードスターPS/ロードスターS/ロードスターRF VS【試乗記】 2026.9.15 デビュー以来、不断の進化を続ける「マツダ・ロードスター」。2026年の改良は、“走り”の特別仕様車「PS」の設定が話題だが、試乗すると、ほかにも多くの変化が見てとれた。日本を代表するライトウェイトオープンスポーツの、最新モデルの仕上がりを報告する。
-
スズキ・ジムニー ノマドFC(4WD/5MT)【試乗記】 2026.9.14 「スズキ・ジムニー ノマド」でロングドライブ。本格クロカンとして悪路での走りに定評あるジムニーの5ドア・ロングボディー版は、カジュアルなSUVとしても使えるのか。多くの人が多くの時間を過ごすであろうオンロードにおける日常的シーンで、その実力を確かめた。
-
BMW X3 20 xDriveオリジナル(4WD/8AT)/X3 20d xDriveオリジナル(4WD/8AT)【試乗記】 2026.9.12 「BMW X3」に新たなエントリーグレードの「オリジナル」が登場。装備の厳選によって価格抑制を図ったとのことだが、人気のディーゼルエンジン搭載車では、なんと基準車から100万円近く引き下げたというから見逃せない。安かろう悪かろうのはずはないと思いつつも、その仕上がりをチェックした。
-
日産キックスG(FF)【試乗記】 2026.9.9 日産が満を持して投入したコンパクトSUVの新型「キックス」。Cセグメントに迫るサイズとなったこのモデルは、競合ひしめくマーケットで存在感を示せるのか? 上級グレード「G」の試乗を通し、ライバルに対するアドバンテージを探った。
-
NEW
「レースの技術を生かしています」は本当か? スバルのモータースポーツ関係者に問う
2026.9.18デイリーコラムスポーツカーの広告などで目にする「レースで鍛えられた~」という文句。あれはいったい、どこまでホントなの? スーパー耐久や全日本ラリーに参戦するスバルの関係者に、市販モデルの開発とモータースポーツの関係について語ってもらった。 -
NEW
たまには撮影現場に来てみませんか? 試乗記取材の見学&プロカメラマンによる愛車撮影会を開催します
2026.9.17From Our Staff皆さまからの強い要望にお応えして、試乗記の取材に立ち会える機会をご用意いたしました。いつもの記事がどのようにできているのかをじっくりご確認いただけるまたとない機会です。さらに今回はプロカメラマンがあなたの愛車の走行シーンを撮影します。奮ってご参加ください。 -
100万円台で購入できるカーマニア納得の“素うどん的名作ハッチバック”を探す
2026.9.17デイリーコラム豪華な装備や使いきれないパワーはもういらない。多くの経験を積み、もしもクルマの基本である「走る・曲がる・止まる」の純粋な手応えにこだわった「素うどん的なクルマ」が気になるのなら、おススメしたいのはこの3モデルだ。 -
BYDラッコ300プレミアム(FWD)【試乗記】
2026.9.16試乗記中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。価格の安さや装備の充実度はすでに報じられているとおりだが、やはり自動車の仕上がりは実際に動かしてみなければ分からない。高速道路やワインディングロードでの印象をリポートする。 -
新型「パジェロ」も該当 タイ生産にはどんなメリットがあるのか?
2026.9.16デイリーコラム国内メーカーが取り扱うタイ生産車のラインナップが増えている。話題の新型「三菱パジェロ」も同様だ。東南アジアに限ったとしてもさまざまな国が存在するなかで、多くのメーカーがタイを拠点とするのはなぜなのか。そのメリットを解説する。 -
第128回:日本のカーデザインに足りないもの・欠けているもの(前編) ―厳しい制約が鍛えた独創の美と創造性―
2026.9.16カーデザイン曼荼羅日本の地に自動車産業が芽生えて幾星霜。今やすっかり自動車大国となったわが国だが、ことカーデザインの質については、世界的に見てどれほどのレベルにあるのだろうか? 日本車の“美”がさらに進化していくうえで必要なものを、カーデザインの識者と考えた。















































