インディアン・チーフテン パワープラス リミテッド(6MT)
スケールがデカすぎる 2025.03.29 試乗記 アメリカンモーターサイクルの名門、インディアンが、自慢の水冷Vツインエンジンをさらに排気量アップ! 新エンジンを得たビッグクルーザー「チーフテン パワープラス」の豪快な走りを、米ラスベガスからリポートする。これほどまでの大トルクが必要とされる理由
世界的な潮流なぞ意にも介さず、いまもマッチョなエンジン競争にいそしむアメリカのモーターサイクル。1901年からの歴史を誇るインディアンも、フラッグシップモデルに搭載する挟角60°の水冷V型2気筒エンジン「Powerplus(パワープラス)」をバージョンアップ。ボアを2mm広げて、排気量を112ci(1834cc)に拡大した。そして、それまでパワープラスを搭載していた「チャレンジャー」やプラットフォームを共有する「パースート」、加えて2025年モデルのチーフテンと「ロードマスター」にこの「パワープラス112」を搭載(参照)し、その動力源をアップデートしたのだ。
これらのモデルはじつに先進的なクルーザーだ。その心臓部であるパワープラスエンジンは、水冷化によって高出力&大トルクを実現している。かの地では、巨体を翻してワインディングロードやサーキットでスポーツライディングに興じるため、あるいは極端に短い助走区間で高速道路に合流するため、あるいは大きく重い荷物とパッセンジャーを乗せて長距離を淡々と走るために、強力なパワーと分厚いトルクが必要なのだ。
このアメリカンクルーザーに不可欠なトルクの発生には、ロングストローク化が必須だといわれていた。しかしパワープラスエンジンは、ビッグボア/ショートストロークだ。しかも新しくなったパワープラス112エンジンはボアを広げたことで、ボアストローク比ではさらにショートストローク化が進行したことになる(ボア×ストローク=110×96.5mm)。
そのことについてエンジニアに話を振ると、「それは迷信のようなモノだ」という答えが返ってきた。V8エンジンを積む最新のアメリカンマッスルカーを見てもわかるとおり、ビッグボア/ショートストロークのエンジンでも強大なトルクを発生することはできる。パワープラスエンジンは水冷化によってあらゆる効率が高まり、高出力&大トルクが可能になっただけでなく、その出力およびトルクの調律も容易になった。パワープラス112はボアのみを拡大して、その他の主要エンジンパーツはパワープラスから引き継いでいるが、このメニューは「King of the Baggers」レースの現場で、仕様の異なるあらゆるパーツを試した帰結なのだ。そしてそれにより、「イメージしたとおりのパワーとトルクを得ることができた」と。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
病みつきになる5000rpmから先の加速
しかも開発陣が求めたのは、圧倒的なピークトルクではなくフラットなトルク特性。わかりやすく言うと、幅広い回転域で力強いトルクを出力し続け、そこに大きな山や谷がないエンジンだった。したがって、パワープラス112のトルクカーブを見ると、最大トルクを発生する3800rpmまでなだらかにトルクが上昇し、その後5000rpm後半までなだらかに下降する。加えて、3800rpmという最大トルク発生回転数の付近は、アクセルのオン/オフを繰り返す街なかやワインディングロードでの常用回転域である。
仮に極低速で走っていても、分厚いトルクを生かしてさっさとシフトアップしてしまえば、渋滞のなか前走車に合わせて走るときも、交差点での右左折時にも、アクセル操作だけでスムーズに対応できる。このフラットトルクによる扱いやすさこそ、開発陣が求めたパワープラス112の特性なのだ。そして一気に加速したいときは、各ギアでレブリミットである6250rpm付近までエンジンを回してシフトアップしていけばいい。
パワープラス112を搭載する各モデルには、昨今のモーターサイクルではおなじみのライディングモードセレクターが備わっており、出力特性とそれに連動するトラクションコントロール、前後ブレーキ配分を最適化するエレクトリックコンバインドブレーキシステムなどのライダーアシスト機能の制御が、「レイン」「スタンダード」「スポーツ」の走行モードに応じて切り替わる。しかし、いずれのモードでも5000rpmを超えてからのエンジンのビート感と加速感は爽快そのもの。「スポーツ」モードでの走行は、爽快を通り越して痛快だ。
今回メインで試乗したチーフテン パワープラスは、パワープラス112エンジン搭載モデルのなかで最軽量だが、それでも車重は366kgもある。その巨体をあっという間に加速させる気持ちよさは、スポーツモデルのそれとはまったく異なる体験である。惜しむらくは、これがラスベガス郊外の砂漠のだだっ広い道だからなんとか試せたものであること。日本で同様のトライをするのは、難しいかもしれない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
かの地のバイクの楽しさが詰まっている
加えて厄介なのが、新しいチーフテン パワープラスには、豪快なその加速を何度も試したくなる体験にしてしまう、高いシャシー性能が備わっていることだ。チャレンジャーやパースートと同じアルミフレームや、モノショックのリアサスペンションを組み合わせたモダンなプラットフォームが、巨体と強力なエンジンパワーをしっかりと支えてくれていたからだ。
わかりやすく言えば、新しくなったチーフテン パワープラスは、チャレンジャーの車体にフロントフォークマウントのカウルを装着したモデルということになる。燃料タンクやリアケースなどの外装類、フレームも共有している。そのフォークマウントのカウルは新たにデザインした新作で、よりコンパクトに、そしてできるだけ車体に近づけてセットアップされている。
クルーザーカテゴリーにおいて、フォークマウントのカウルを装着する車両は、フレームマウントのカウル装着車よりもクラシカルなスタイルに分類される。しかし同時に、そのスクリーンを低くカットしたり、カウルをシェイプして筋肉質に仕上げたり、低くセットしてロー&ロングなスタイルを強調したりすることで、コンパクトで若々しいスタイルを構築できる点も、フォークマウントカウルを装着するクルーザーの特徴なのだ。
チーフテン パワープラスは、そこに排気量を拡大したモダンな水冷エンジンとアルミフレーム、さらには6軸IMUから抽出したデータをもとに、トラクションコントロールや前後連動ブレーキなどをコントロールする電子制御デバイス、BOSCH製リアレーダーによって車体後方の視界を補助するライダーアシスト機能も追加。よりモダンなクルーザーへと進化した。
自らの伝統と、新しい技術、そして開発哲学でアメリカンクルーザーを進化させてきたインディアン。クラシカルなスタイルと最新のテクノロジーで開発されたプラットフォームが組み合わさったチーフテン パワープラスは、いまのインディアンを象徴するモデルだ。そこには、かの地のバイクならではの楽しさが濃密に詰まっている。
(文=河野正士/写真=インディアン・モーターサイクル/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
インディアン・チーフテン パワープラス リミテッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2503×--×--mm
ホイールベース:1668mm
シート高:672mm
重量:366kg(燃料非搭載時)/382kg(燃料搭載時)
エンジン:1834cc水冷4ストロークV型2気筒SOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:126HP(94kW)
最大トルク:181.4N・m(18.5kgf・m)/3800rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:453万円~458万円
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇

河野 正士
フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。
-
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】 2026.7.18 ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
NEW
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
NEW
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。














