レクサスRC F“ファイナルエディション”(FR/8AT)
また来る春もあるはずだ 2025.06.23 試乗記 「レクサスRC F」に“ファイナルエディション”が登場。内外装のみならずV8エンジンも特別仕立てという豪華な仕様だが、その名が示すとおりこれで打ち止めの最終モデル。どうにも悲喜こもごもな一台なのだ。最後の走りを味わうべく、西へ西へと進路を向けた。モデルチェンジなしで終了
鳴り物入りのデビューだったにもかかわらず、10年ちょっとでの退場は、ずいぶんと見切りが早い気もする。トレンドを見据えたそのビジネスライクな判断こそがトヨタの神髄ともいえるが、やはりもったいないというか、何とかならなかったのかなと残念に思う。
かつてレクサスのフラッグシップクーペだったRCは結局、本格的なモデルチェンジなしのまま姿を消すことになった。年明け早々に、2025年11月でRCおよびRC Fの生産終了と、最終章としての記念モデル“ファイナルエディション”が発表されたのである。スタンダードのRCは台数制限なしだが、自慢の自然吸気V8を積む高性能版RC Fの“ファイナルエディション”は200台の限定販売という。
いまさら言うまでもないが、RCのなかでも「F」は特別なモデルという位置づけだった。レクサスの最高性能モデルというだけでなく、一時はSUPER GT参戦車両としてその名とボディーが使用されており、さらにFIA GT3規定にのっとった「RC F GT3レーシングカー」を開発して世界中のカスタマーチームに販売する野心的な計画を進めていた。
しかし本格的に供給が始まる前にSUPER GT用は新たなフラッグシップクーペの「LC」に代わり、その後「GRスープラ」にポジションを奪われることになった。その現行型スープラも既に2026年春での生産終了が明らかにされており、同様に“ファイナルエディション”が発表されている。約7年で幕を下ろすことになったスープラに比べればまだましかもしれないが、正直言って尻すぼみになるのが多いように思う。
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最後の「F」の“ファイナルエディション”
既にリポートしているように2014年秋の発売以来、RCは約7万9000台、RC Fは1万2000台が販売されたという。高性能で豪勢なクーペとしては今どき決して悪い数字ではないようにみえるし、そもそも発売当初からそれほどのボリュームが出るとはレクサス側も考えてはいなかったはずなのだが(発売直後は大変なバックオーダーを抱えたが国内月販目標はRCが80台、RC Fは30台だった)、フルモデルチェンジして最新の排出ガスや安全規制に対応するほどには採算が見込めないということなのだろう。
もちろん、これまでに何度となく改良が加えられており、滑らかで緻密な洗練された走行性能はクルマ好きの間では評価が高かったと記憶しているが、やはりLCの登場以降はあまり顧みられることなく現在に至った印象だ。ちなみにこれで、AMGやMに比肩することを目指したFもRC Fとともにいったんは幕を閉じる。
RC F“ファイナルエディション”は、ルーフをはじめ、アクティブリアウイングやリアディフューザーなどカーボン製パーツをふんだんに投入した特別仕立ての外装と、ウルトラスエードに真っ赤なセミアニリンレザーを組み合わせたインテリアを特徴とするが、その種のコスメティックスのみならず、以前から特別なバランスとりを施されていたV8エンジン本体も今回の“ファイナルエディション”用は、さらにムービングパーツの質量合わせやシリンダーのミクロン単位での高精度チューニングを加え、またリアのトルセンデフも熟練のクラフツマンが手作業でバックラッシュを再調整するといったスペシャルなユニットだ。
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パワフルだが紳士的
ご存じヤマハとの共同開発となる5リッターの2UR-GSE型はいまや貴重な大排気量自然吸気V8エンジンである。「IS F」に搭載されていたユニットをさらに強化、481PS/7100rpmと535N・m/4800rpmを生み出す(当初は477PS/530N・mだったが2019年の改良で若干向上)。「SPDS(スピード・ダイレクトシフト)」と称する8段ATを介する後輪駆動である。
サーキットでの走行も視野に入れた高性能クーペだが、そこはラグジュアリーを旨とするレクサスだけに、普通に走っている限りは荒々しさはみじんもない。ドライブモードを最もハードな「スポーツS+」に入れれば、レスポンスもシフトプログラムも鋭く精悍(せいかん)にはなるものの、それでもとげとげしいというほどではなく、大トルクの余裕に乗っかって悠々と走るという雰囲気だ。
トップエンドまで回せば(レブリミットは7300rpm)、がぜん活気づくが、今どきの輸入高性能スポーツカーに比べれば、たけだけしさよりやはり緻密な滑らかさを重視しているように感じる。ただし“ファイナルエディション”用の高精度チューニングの効果は実感できなかった。もっとガツガツ攻撃的な手応えを求める人もいるだろうが、全体的にジェントルなV8エンジンはレクサスブランドにはふさわしいのではないかと思う。
ただし燃費は相応に良くない。直噴とポート噴射を併せ持つD-4Sを備えるエンジンは、低負荷時は効率優先で回るというが、目立った燃費向上機構を持たないためにWLTCモード燃費は8.5km/リッターにとどまる。試乗中も燃費計は良くて6km/リッター台で、66リッタータンクをもってしても都内から箱根・伊豆往復が心配になるほどの航続距離だった。
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じわじわ分かる玄人好み
カーボンパーツが多用され、専用のBBS製軽量鍛造アルミホイールと赤いキャリパー、さらにチタン製4連エキゾースト(88万円のオプション)を装備する“ファイナルエディション”はいかにも戦闘的ないでたちだが、乗ってみるとそれほど硬派でないのはパワートレインと同様だ。発売当初はコンベンショナルなサスペンションにこだわっていたRC Fだが、減衰力可変ダンパー「NAVI・AI-AVS」も2016年に標準設定されている。路面によってはロードノイズが気になる場合もあったが、それ以外はフラットで落ち着いた乗り心地に不満はない。
車重(1750kg)のせいもあって、ハンドリングは剽悍(ひょうかん)な鋭い切れ味を目指したものではなく、リニアな回頭性としっかりとしたトラクションを優先させたものだ。最初のターンインで「スゴッ」などと簡単に決めつけるのではなく、乗れば乗るほど改良を重ねてきた高いコントロール性がしみ込んでくる種類である。今どきはもっと分かりやすくしないと「タイパが悪い」などと言われてしまうのかもしれないが、少なくともRC Fはそういうビギナーを相手にしなくてもいいのではないかと思う。
だとすればインテリアの仕立てをもう少し大人っぽくしてほしい。せっかくの豪勢なシートなのにランバーサポートに高さ調節がなく、あまり実用的ではない点など、もう少し細部を詰めてほしいというのも正直な気持ちだ。古くさいインストゥルメントがオジサン世代にとってもアピールしないことは言わずもがなである。長続きする製品をつくることは難しいが、そこに挑戦してこそのレクサスではないか、と期待する。
(文=高平高輝/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
テスト車のデータ
レクサスRC F“ファイナルエディション”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1845×1390mm
ホイールベース:2730mm
車重:1750kg
駆動方式:FR
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:481PS(354kW)/7100rpm
最大トルク:535N・m(54.6kgf・m)/4800rpm
タイヤ:(前)255/35ZR19 92Y XL/(後)275/35ZR19 96Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:8.5km/リッター(WLTCモード)
価格:1360万円/テスト車=1472万8600円
オプション装備:チタン製4連エキゾーストマフラー(88万円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム<RC F専用チューニング>(24万3100円) ※以下、販売店オプション エアダム<カーボンフロントスポイラー用>(5500円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2664km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:301.5km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.7km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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