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新型BEVをぞくぞく発表 名門アルピーヌはどこに向かうのか?

2025.06.23 デイリーコラム 工藤 貴宏
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BEVでも走りはアルピーヌ

ニッチなブランド。だけど日本でもマニアックなクルマ好きにはしっかりと浸透している。

フランスの「アルピーヌ」といえば、そんなポジションじゃないですかね。モータースポーツ好きなら「F1とWEC(世界耐久選手権)の両方に挑戦しているブランド」というイメージかもしれない。

現在はルノー傘下となっているアルピーヌだけれど、歴史をたどれば独立したチューナー/自動車メーカーだった時代もあった。ここしばらくは「ルノー・スポール(R.S.)」として活動した後、現行型の「A110」から“ブランドとしてのアルピーヌ”が復活したことを理解している読者諸兄も多いのではないだろうか。イメージとしてはメルセデス・ベンツの「AMG」やBMWの「M」に近い存在といっていいだろう。

そんなアルピーヌの動きが、何やら活発だ。ルノー・スポールからの移行期であったためか、2017年のデビュー以来A110一筋でほそぼそと(!?)やってきたアルピーヌだが、2024年には「A290」という「ルノー5 E-Techエレクトリック」をベースとした全く新しい小型2ボックスのスポーツモデルを世に送り出した。

筆者も「アルピーヌの新車がBEV(バッテリー式電気自動車)」であることに驚いた一人だが、幸運にもテストドライブする機会に恵まれた。その印象をいえば、運転の楽しさが凝縮されたかのように気持ちよく走る感覚はさすがアルピーヌ。ガチガチのスポーツモデルではないけれど、「ライトウェイト」「ドライビングプレジャー」そして「フレンチタッチ」というアルピーヌのこだわりはしっかり貫かれていた。日本とは計測方法が異なる欧州値とはいえ、BEVで1.5tを切る車両重量は「軽い」と判断していいだろう。

アルピーヌ復活以来、そのブランドイメージをけん引してきたピュアスポーツカー「A110」。そのモデルライフも、いままさに終わろうとしている。
アルピーヌ復活以来、そのブランドイメージをけん引してきたピュアスポーツカー「A110」。そのモデルライフも、いままさに終わろうとしている。拡大
新生アルピーヌ第2のモデルは、「ルノー5 E-Techエレクトリック」をベースとしたフル電動のハッチバック「A290」だった。ルノーにしろアルピーヌにしろ、これらのモデルは業界の不可逆的な電動化の流れをファンに意識させた。
新生アルピーヌ第2のモデルは、「ルノー5 E-Techエレクトリック」をベースとしたフル電動のハッチバック「A290」だった。ルノーにしろアルピーヌにしろ、これらのモデルは業界の不可逆的な電動化の流れをファンに意識させた。拡大
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“年イチ”ペースで続々登場

そんな新生アルピーヌは「次」もスタンバイ中。それが日本導入のアナウンスもされた、ファストバックフォルムのクロスオーバーSUVである「A390」だ。

フロントに1基、リアにはトルクベクタリングを可能とする2基のモーターを組み込んだ3モーターのBEVで、「ファミリー層」というアルピーヌにおける新しいマーケットを開拓していくことになるだろう。

そして筆者のようなアルピーヌ好きにとって朗報なのは、アルピーヌはこの先ニューモデルラッシュとなる気配があることだ。同社は2年ほど前に公表した“将来の商品計画”で「2030年までに7つのモデルを市場投入する」ことを明言。姿を現したA290とA390の後には、まだ5台も控えていることになる。毎年1台というペースは、アルピーヌのような小さな所帯にとってはとんでもないスケジュールといっていい。

A390の次に続くのは“次世代のA110”となるようだ。パワートレインは現行のガソリンからバッテリー&モーターへと大きく変わるというのは少し複雑な気分だが、走りを楽しむストイックなモデルということに変わりはないはず。それをベースとしたロードスターモデルや4シータースポーツクーペも登場する計画というから楽しみだ。

さらにDセグメントやEセグメントのモデルも用意され、これまで販売されていなかった北米市場にも進出する計画なのだとか。A110のようなピュアなモデルはさらに走りが磨き込まれる一方で、4シーターやクロスオーバーモデルに関しては、スポーティーブランドらしい仕立てとするものの、日常での乗り心地などを含めたトータル性能を重視していくのだろう。

「ルノー・スポール時代は、マニアックすぎた。サーキットを楽しむ人にはとても喜んでもらえたが、ストイックすぎると感じていた人も少なくないだろう。一方アルピーヌはもっと気軽にスポーティーな走りを楽しんでもらえるブランドとしたい」

1年ほど前に筆者はアルピーヌのフィリップ・クリーフCEOにインタビューしている。その際、彼はこれからのブランドづくりについて、そう説明してくれた。

アルピーヌの新型電気自動車「A390」。「『A110』のような爽快なドライブフィールに加えて実用性も備えたスポーツファストバックモデル」と説明され、日本市場への導入も決定している。
アルピーヌの新型電気自動車「A390」。「『A110』のような爽快なドライブフィールに加えて実用性も備えたスポーツファストバックモデル」と説明され、日本市場への導入も決定している。拡大
「A390」のパワートレインは、計3基(フロント1基、リア2基)のモーターで構成される4WD。アルピーヌが独自に開発したトルクベクタリングシステムを搭載する。
「A390」のパワートレインは、計3基(フロント1基、リア2基)のモーターで構成される4WD。アルピーヌが独自に開発したトルクベクタリングシステムを搭載する。拡大
2023年7月からアルピーヌのCEOを務めているフィリップ・クリーフ氏。筆者がインタビューした際、「これまでアルピーヌはマニアックすぎた面があり、今後はもっと気軽にスポーティーな走りを楽しんでもらえるブランドにしていきたい」などとコメントしている。
2023年7月からアルピーヌのCEOを務めているフィリップ・クリーフ氏。筆者がインタビューした際、「これまでアルピーヌはマニアックすぎた面があり、今後はもっと気軽にスポーティーな走りを楽しんでもらえるブランドにしていきたい」などとコメントしている。拡大

変わりつつも変わらないもの

さて、ここまで読んで勘のいい読者ならお気づきに違いない。今後のアルピーヌの商品は(商品計画が公表された後に予定変更されていなければ)BEVが基本となる。時代の流れといってしまえばそれまでだが、A110のようなストイックなクルマばかりではなくなるラインナップも含めて、従来と違う方向へ向かっていることは明らかだ。(BEV化の話を抜きにすれば)より多くの消費者に愛されるブランドとなるのだろう。

また、アルピーヌは水素時代のWECを視野に入れて水素エンジンのレーシングカーである「アルペングロー」を製作してデモラン的に走らせている。ルマン24時間耐久レースを含むWECに水素エンジンのレーシングカーを走らせ、そのイメージで水素エンジンハイブリッドのハイパーカーを市販するといううわさもあるのだ。アルピーヌが「BEVだけになる」のか否かは、今後の状況次第といえるかもしれない。

ただ、残念な話題もあって、それは現行型A110の生産が2025年で終了するということ。逆にいえば、ガソリンエンジン搭載のA110が欲しいなら、そろそろ新車で手に入れるラストチャンスが迫っているというわけだ。

ちなみにA110の販売実績は、本国フランスが最多である。次いでドイツだが、日本はイギリスと3番手を争っている状況。実は日本にはアルピーヌのファンが多いのである。

ところで、ルノー・スポールといえば、ドイツにある過酷なサーキット、ニュルブルクリンクの北コースで、「ホンダ・シビック タイプR」とFF市販車最速の座を争ってきたことでも、よく知られている。

筆者は昨年インタビューした際に「これからのアルピーヌもニュルブルクリンクでタイムアタックするのか?」とCEOに尋ねてみた。返ってきた答えは「もちろん」だった。ラインナップが増えてBEV化されていく(予定の)これからのアルピーヌでも「ニュル育ち」というクルマづくりは変わることがなさそうだ。

(文=工藤貴宏/写真=アルピーヌ/編集=関 顕也)

アルピーヌの水素レーシングカー「アルペングロー」。2022年10月のパリモーターショーで世界初公開された。
アルピーヌの水素レーシングカー「アルペングロー」。2022年10月のパリモーターショーで世界初公開された。拡大
現行型「アルピーヌA110」の最後を飾る一台と目される「アルピーヌA110 Rウルティム ラ・ブルー」。軽量化を含め、走行性能の向上が徹底追求された限定車で、国内価格はなんと5200万円。
現行型「アルピーヌA110」の最後を飾る一台と目される「アルピーヌA110 Rウルティム ラ・ブルー」。軽量化を含め、走行性能の向上が徹底追求された限定車で、国内価格はなんと5200万円。拡大
「アルピーヌA110 Rウルティム ラ・ブルー」のインテリア。カーボンパーツのほか、特別なブルーレザーを用いて仕立てられている。
「アルピーヌA110 Rウルティム ラ・ブルー」のインテリア。カーボンパーツのほか、特別なブルーレザーを用いて仕立てられている。拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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