ポルシェ・マカン4(4WD)
なんともマニアック 2025.07.22 試乗記 脱エンジンを推し進め、電気自動車(BEV)に進化した2代目「ポルシェ・マカン4」に試乗。BEVのボリュームゾーンで勝負する最新モデルの走りや、BEV専用に新開発された「プレミアムプラットフォーム」を共用する「アウディQ6 e-tron」とのちがいを確かめた。フル電動化された主力モデル
新型マカンは「マカン エレクトリック」という正式商品名からもわかるように、完全なBEVだ。このBEV版がマカンとしては2代目となるのだが、日本ではエンジンを載せた従来型=初代マカンが今も併売される。ただ、初代マカンも欧州ではすでに販売終了。一説には、日本向けを含めた初代マカンの生産も、この2025年中に終了するとかしないとか……で、いずれにしても、初代マカンが遠からず姿を消すのは確定だ。
2代目マカンがBEVとなったのは、世界的なBEV移行の機運に歩調を合わせたからだ。欧州連合はつい最近まで“2035年までのエンジン搭載車販売禁止”を主張していたし、中国では“2035年までに半分を(BEVを主とした)新エネルギー車にする”という2020年に掲げた目標をどんどん前倒しで達成してきた。アメリカでも前バイデン政権が“2030年までに新車の半数をBEVと燃料電池車にする”という大統領令を発令していた。
そうした情勢に合わせて、ポルシェ自身も“2030年までに新車の8割をBEV化”という目標をアピール。その目標を本気で実現するには、マカンのような正真正銘の主力商品(全盛期にはポルシェの世界販売全体の5割以上、初代モデル末期の近年でも3~4割)こそBEV化するのが本筋である。
もっとも、ここ1~2年は強硬なBEV移行政策への揺り戻しもあって、“エンジン搭載版マカン復活?”と一部で報じられたりもしている。ただ、この2代目マカンが土台とするプレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)はBEV専用設計で、エンジン搭載の余地はないようだ。かりにエンジン版マカンが復活するにしても、それは「A5/S5」などの新型アウディが使うエンジン用プラットフォーム「プレミアムプラットフォームコンバッション(PPC)」を土台に、この2代目マカンとは別物として新開発されるしかない。
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アウディQ6 e-tronとの違いは?
2代目マカンは土台となるPPEを、2895mmというホイールベースを含めてアウディのQ6 e-tronと共有するが、パワートレインの設定やバリエーションは独自である。
たとえば、Q6 e-tronは2WDとなるエントリーモデルの電池に少し小さい83kWhタイプを選んでいるが、マカンは全車が大きな100kWhタイプを積む。今回試乗した「マカン4エレクトリック」のシステム出力=285kW(387PS)は、Q6 e-tronでいうと「クワトロ」のそれとほぼ同等である。ただし、アウディにはないオーバーブースト機能を作動させると、一時的に300kW(408PS)まで引き上げられる。アウディの最上級版は現時点では「SQ6 e-tronクワトロ」だが、その出力レベルはマカンでいうと「4Sエレクトリック」と「ターボ エレクトリック」の中間に位置する。
PPEの技術的特徴については、先日のQ6 e-tronの試乗記(参照)をご覧いただきたいが、出力設定以外にも、じつは両車は細かく“つくり分け”られている。そこには、ポルシェとアウディによる最初の協業BEVだった「タイカン/e-tron GT」での知見もあるのだろう。
たとえば4WDのフロントモーターも、アウディは非駆動時の抵抗が小さい非同期モーターを使って、低負荷時には2WDになる制御も加える。モーター単体のコストでも、永久磁石をもたない非同期モーターは同期モーターより低い。いっぽう、マカンのそれは前後ともに高効率な永久磁石同期モーターを使う。
このクルマではアウディと同じプラットフォームを使うポルシェだが、内外装デザインはもちろん別物。Q6 e-tronが(機能的には不要な)シングルフレームグリルを踏襲するのに対して、マカンは初代マカンとは対照的に、「911」に通じるショート&ローでグリルも目立たせないノーズデザインである。また、インテリアも、良くも悪くもいつものポルシェだ。
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確固たる思想を感じさせるつくり込み
この新しいマカン4はBEVなので出足は素晴らしいが、マカンの4WD車としてはもっともアンダーパワーということもあり、その走りはある意味で上品だ。
また、マカン エレクトリックには今のところ、Q6 e-tronのような回生≒減速セレクター役となるステアリングパドルの用意はない。上級モデルではセンターディスプレイで回生の強さを選ぶことができるが、マカン4にはその機能もない。ポルシェ初の量産BEVだったタイカンでは、2024年秋に受注開始した改良型からオプションでパドルを用意するようになったが、それまではやはりパドルの設定はなかった。世界一のスポーツカーブランドを自認するポルシェながら、BEVでは“パドル不要=回生強度はドライバーがいちいち変えるものではない”というメッセージがうかがえるのは興味深い。
ただし、パドルはなくとも、パワートレインのデキは素晴らしい。基本的に回生は強めの調律で、ワンペダル……とはいわないが、右足のわずかに動きにも吸いつくように加減速してくれる。個人的にいちばん以心伝心の一体感を得られたのはドライブモードを「ノーマル」にしたときで、かといって「スポーツ」や「スポーツプラス」にしても、激しすぎる減速度にならない点にも確固たる思想を感じさせる。どちらも標準のモードよりはレスポンスは活発だが、ギアのバックラッシュショックを出さず、しかしラグも最小限……というぎりぎりの落としどころには感心する。
また、エンジン音のかわりに“フュイィィーン”と響くアイコニックサウンドの設定も独特で、ノーマルモードでは深く踏み込んだときだけかすかに耳に届く。スポーツ以上だと、最初から聞こえるが、サウンドが最大となるスポーツプラスでも、キャビン内をアイコニックサウンドで満たすほど派手ではない。
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高速志向のスポーツカー的な味わい
いずれにしても、4WDとしては控えめなパワーとなるマカン4エレクトリックのシャシーは余裕しゃくしゃく。今回の試乗車はオプションもテンコ盛りで、その膨大な装着オプションのなかには、エアサスペンション+電子制御可変ダンパー、リアステアリングなど、ダイナミクス性能に多大な影響を及ぼす装備も追加されていた。ホイールも標準の2インチアップとなる22インチだった。
先日試乗したQ6 e-tronも同じくエアサスと可変ダンパー、後輪操舵が備わっていたが、マカンのそれはアウディより明確な引き締まり系だ。高速での絶対的な安定感やフラット感、あるいは積極的にアクセルオンするほど曲がり込む旋回特性など、そこはやはり、アウディより高速志向のスポーツカー的な味わいともいえる。
ただ、22インチの「イーグルF1スーパースポーツ」という超スポーツタイヤの影響もあって、路面によっては少し突っ張る感覚があり、そのせいかフロア振動も少し気になった。個人的には、ポルシェなら、とくに接地感などには“もうひと声!”といいたくなったのも事実。パワートレインの思慮深いセッティングと完成度はさすがだが、シャシーにはさらなる熟成があってもいい。
繰り返しになるが、新しいマカンのプラットフォームはQ6 e-tronのそれと共通だが、意外なつくり分けもある。前記のフロントモーターのちがいよりさらに象徴的なのは、リアモーターのレイアウトだ。
どちらのリアモーターもリアアクスル=後軸と一体だが、アウディのリアモーターが後軸より前置きのミドシップとなるのに対して、マカンのそれは、あの911のRRレイアウトにも通じる後ろ置き。うーん、なんともマニアック! 今回は4WDだったので、モーター位置のちがいによる走行特性差をはっきり感じ取るにはいたらなかったが、機会があれば、それぞれの2WDを乗り比べてみたいものだ。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=ポルシェジャパン)
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テスト車のデータ
ポルシェ・マカン4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4784×1938×1622mm
ホイールベース:2893mm
車重:2330kg(DIN、空車重量)
駆動方式:4WD
フロントモーター:永久磁石同期式電動モーター
リアモーター:永久磁石同期式電動モーター
システム最高出力:387PS(285kW)<オーバーブースト時:408PS(300kW)>
システム最大トルク:680N・m(69.4kgf・m)
タイヤ:(前)255/40R22 103Y XL/(後)295/35R22 108Y XL(グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツ)
一充電走行距離:516-612km(WLTPモード)
交流電力量消費率:21.1-17.9kWh/100 km(約211-179Wh/km、WLTPモード)
価格:1045万円/テスト車=1441万2000円
オプション装備:ボディーカラー<プロヴァンス>(22万9000円)/レザーパッケージ<ブラック/ブランブル>(26万6000円)/リアアクスルステアリング(27万8000円)/モデルバッジ<electricロゴ、シルバー塗装>(0円)/ポルシェアダプティブエアサスペンションマネジメントシステム<PASM、アダプティブエアサスペンション、レベルコントロール、ライドハイトコントロール付き>(39万8000円)/フルカラーポルシェクレスト付きホイールセンターキャップ(2万5000円)/エアクオリティーシステム(6万4000円)/電動充電ポートカバー(8万6000円)/パノラマルーフシステム(24万7000円)/シートヒーター<フロント&リア>(6万3000円)/22インチMacan Sportホイール(61万7000円)/サイドブレード<エクステリア同色>(8万6000円)/ルーフライニング<Race-Tex>(19万7000円)/インテリアパッケージ<オークシルバーメタリック>(7万円)/マトリクスLEDヘッドライト(16万4000円)/スポーツクロノパッケージ(12万3000円)/アドバンスドクライメートコントロール<4ゾーン>(6万5000円)/BOSEサラウンドサウンドシステム(17万7000円)/ラゲッジルーム100Vソケット(2万2000円)/ステアリングホイールヒーター(4万1000円)/サイドブレードモデル名ロゴ<シルバー>(4万円)/Personalizeカスタム車両キー&キーケース(10万4000円)/ポルシェエレクトリックスポーツサウンド(6万8000円)/パッセンジャーディスプレイ(21万4000円)/コンフォートシート<フロント14Way電動調整>(17万3000円)/サイドウィンドウトリム<シルバー>(3万1000円)/PORSCHEロゴLEDドアカーテシーライト(4万3000円)/右ハンドル仕様(0円)/プライバシーガラス(7万1000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2711km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:495.0km
参考電力消費率:4.87km/kWh(車載電費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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