ハーレーダビッドソン・ローライダーST(6MT)
極めつけに面白い! 2025.08.26 試乗記 ハーレーダビッドソンのクルーザーモデルのなかでも、特に“走り”にこだわったとされる「ローライダーST」。軽装の車体にパワフルでトルクフルなエンジン、そして完成度の高い足まわりがかなえる、極めつけのファン・トゥ・ライドを報告する。軽い(?)車体にマッチョなエンジン
ローライダーSTって、いいところを突いているモデルだと思う。ツーリングモデルのようなカウルとサイドバックを装着していて、クラシカルな雰囲気を醸し出しているけれど、ベースになっているのは「ローライダーS」だ。フレームは“ソフテイル”(リアショックがシート下に隠れており、リジッドフレームのように見える外観が特徴)で、装備もツーリングモデルに比べたらシンプル。車重だって軽い(っても323kgはあるが)。しかも、搭載されるのは排気量1923ccのVツインエンジン「ミルウォーキーエイト117」のなかでも、最もパフォーマンスの高い“ハイアウトプット”仕様だ。このスタイルが好きで、走りを楽しみたいって考えたら、ローライダーSTが最適解だと思う。
跨(またが)って車体を起こした瞬間「おお、軽いじゃん」と声が出た。足つきがいいことや重心の低さなどによって、数値よりも3割くらい軽く感じる。ポジションも自然で、シートの座り心地も良好。でっかいカウルのなかにアナログメーターがポツンとひとつというのが素っ気ない気もするが、そうしたシンプルな雰囲気も悪くない。
ミルウォーキーエイト117ハイアウトプットは今回が初体験なのだが、このエンジンが実によくできている。全回転域で非常にスムーズ。排気量は2リッター近くあるのにレブリミットまでスッと回ってしまうし、振動も少ない。Vツインのドコドコ感があるのは3000rpmくらいまで。そこから上の回転域では鼓動感は少しずつ減っていき、滑らかに回転が上がっていく。排気音は静かだけれど、全開にすると吸気音が勇ましく響き渡る。
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「スポーツ」モードは油断禁物
もちろん、どの回転域でもトルクは猛烈。スロットルを開ければ大きなバイクが自由自在に加速する。「スポーツ」モードにするとパワー自体も上がるのだけれど、それよりもレスポンスの鋭さが感動的。右手の動きひとつで大トルクを瞬時に引き出して走るのが痛快だ。ゼロ発進はそれほどでもないのだが、追い越し加速は相当なもの。楽しくて意味もなく加減速を繰り返してしまったほどである。
ただし油断は禁物。このモードは全閉からの開け始めこそおだやかに調教されているが、そこからスロットルをひねっていくとドカンと加速する。うっかり大きく開けようものなら腕が伸びきることだってある。スポーツバイクのような前傾姿勢と違い、上体が起きたライディングポジションだから、だらけたところに予想外の加速をくらうと、体を置いていかれやすいのだ。スポーツモードで走るときは、この点に注意しておくべきだろう。
ミドルクラスやマルチエンジンのバイクから乗り換えるのであれば、最初は「レイン」モードでパワー感などをつかみ、順番にモードを変えていくことをオススメする。大トルクのエンジンではスロットルのツキが非常に重要だから、走行シーンやライダーのレベルに応じて、モードを正しく使い分けるのがポイント。レインモードでも十分なトルクがあるので、ストリートを普通に走るのであれば、晴天だろうとレインモードをメインに使うのでもいいかもしれない。
ここまで走りを楽しめるとは
そんなわけでミルウォーキーエイト117ハイアウトプットにベタぼれしてしまったのだが、エンジン以上に感心したのが車体と足まわりだった。サスペンションが前後とも非常にしなやかで、ダンピングもよい感じで利いている。素晴らしい利きのブレーキをハードに使ってコーナーに進入していっても、姿勢変化はおだやかで、ABSの作動もスムーズ。コーナーを攻めたときも車体はシッカリしている。スポーティーに走ることも十分に考慮されているのである。
安定感は強いけれどハンドリングは素直でクセはない。倒し込みは軽く、一度バンクさせてしまえば、後はバイクの安定感に任せて旋回していける。バンク角もこの手のバイクとしては深く、コーナリングを楽しむレベルであれば十分。大きな車体だからこまごました走りが苦手なイメージを持たれそうだが、実は交差点を曲がるだけでも、実に軽快で楽しいバイクなのである。
跨った第一印象を「軽く感じた」と書いたが、走ってみれば自由自在に加速するエンジンとこのハンドリングによって、軽快なフィーリングは5割増。スロットルのマネジメントがいいからUターンだって苦労しない。このスタイルで、ここまで走りを楽しめるとは思っていなかった。たぶん、ハーレー初体験のライダーが乗っても、相当に楽しめるはずである。
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同じクルーザーでも全然違う
気になる点を挙げるとしたら、「ブレイクアウト」の記事でも書いたが、クラッチの操作にちょっと力がいる。国産はこのあたりがメッチャ進化しているから、乗り換えたときは「重っ」と感じるはずである。でもまあ、それとて普通の人ならすぐに慣れてしまうくらいのレベルだから、致命的なマイナスポイントというわけではないが。
ハーレーダビッドソンのなかでは、ブレイクアウトとローライダーSTが人気を二分しているそうなのだが、ハーレーの関係者から「どちらが好きか?」と問われて、ゴトーは答えが出せなかった。同じミルウォーキーエイト117を搭載していても、別なバイクだからである。ブレイクアウトはロー&ロングなスタイルによる直進安定性と、低中回転域が元気なエンジンを楽しむバイクだ。いっぽうローライダーSTは、スポーティーに走ることもできて、マシン全体の完成度が高い。どちらがいいかは、ライダーの好みによって変わってしまう。ただ間違いないのは、どちらも極めつけに面白いバイクだということである。
(文=後藤 武/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2360×890×--mm
ホイールベース:1615mm
シート高:715mm
重量:323kg
エンジン:1923cc 空油冷4ストロークV型2気筒OHV 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:114HP(85kW)/5020rpm
最大トルク:173N・m(17.6kgf・m)/4000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.6リッター/100km(約17.9km/リッター、EU 134/2014)
価格:322万0800円~350万6800円
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後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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