レクサスRZ450e“Fスポーツ パフォーマンス”(4WD)
電動エクストリーム系 2024.05.29 試乗記 レクサスの電気自動車「RZ」に、台数100台の限定車「RZ450e“Fスポーツ パフォーマンス”」が登場。ただ者ではない特別なオーラを放つエクステリアデザインは、かのエアレーサー室屋義秀選手のアイデアがもとになっているという。その走りやいかに。エアレーサーの室屋義秀選手が開発に携わる
このクルマは“Fスポーツ パフォーマンス”を名乗る3例目のレクサスだ。2023年1月の東京オートサロンでコンセプトカーを公開して、翌年の同イベントに合わせて正式発表された。100台限定の抽選販売で、すでに抽選の申し込みは終わっている。
末尾にパフォーマンスのつかない素の“Fスポーツ”は、通常モデルのシャシーや車体、内外装をライトチューンしたトリムグレードというべき存在だが、そこに“パフォーマンス”がつくと、より本格的なスポーツモデルとなる。たとえば、先に発売された「RX」と「IS」のそれは、ともにラインナップ随一の高出力を誇る専用パワートレインを搭載する。
いっぽう、このRZ450e“Fスポーツ パフォーマンス”は、通常モデルともいえる「RZ450e“バージョンL”」と、その2モーター4WDパワートレインにちがいはない。RZのような100%電気自動車(BEV)の場合、モーターだけをパワーアップしても明確に体感できるパフォーマンスの増強にはならないからかもしれない。
そのかわり、今回はまずフロントタイヤを“バージョンL”比で2セクション、リアタイヤを同じく4セクションもワイド化。そのせいでハミ出したタイヤをカバーすべく、オーバーフェンダーを後づけしている。さらには、全身を計17点のエアロパーツで武装。プレスリリースによると、そのエアロパーツはダウンフォースを増加させる効果があるという。もちろん、バネやショックもワイドタイヤや空力に合わせて専用チューンとなっており、地上高も10mmローダウンしている。
今回のキモとなるエアロパーツの開発には、レクサスのロゴが描かれた航空機で戦う、エアレースパイロットの室屋義秀選手のアイデアがもとになっているという。室屋選手がかかわったレクサス車には、ほかに2020年の特別仕様車「LC500“アビエーション”」、2023年の同じく「LC500“エッジ”」がある。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
300万円のエクストラは妥当か
というわけで、RZ450e“Fスポーツ パフォーマンス”は、なにより、そのエクステリアにウンチクが満載である。
なかでもリアのダブルウイングが最大の特徴といっていいが、実際にダウンフォースを発生するのはリアエンドのアイテムのみ。上段のルーフウイングはリアエンドのウイングに空気を導くガイド役に徹しており、それ自体はダウンフォースを発していない。このあたりも室屋選手によるノウハウのひとつらしい。また、4つのホイールアーチの後端にあるコの字のカーボンパーツは、ターニングベインと呼ばれるもので、ホイールハウス周辺の乱れがちな空気をきれいに流す整流板の役目を果たす。
いっぽうで、フロントフードに新設された通気口は、見たところ、空力や冷却用ではなさそうだ。また、インテリアも内装色やブルーアクセントは今回専用というが、シート表皮などには大きなちがいはない。
そんなBEVとして初、そして“Fスポーツ パフォーマンス”としても初の限定車でもあるこのクルマの本体価格は1180万円。ただ、繰り返すが、もう注文はできない。
ベースモデルともいえる“バージョンL”の300万円高だが、2枚のリアウイングやターニングベインに加えて、フロントフード、ルーフ、前後ロアスポイラーなど、大物エアロパーツがことごとく高価なカーボンコンポジット製で、専用のワイドタイヤとホイールも備わる。さらにいうと、おなじみのマークレビンソンのオーディオに、デジタルインナーミラー、デジタルキー、おくだけ充電、ドライブレコーダー、寒冷地仕様など、本来ならオプションあつかいの約35万円相当の装備も、今回は特別に標準となる。
こうした装備内容に加えて、100台というレアな限定台数を考えると、300万円というエクストラは、このご時世では妥当か。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
低速域からしなやかなフットワーク
今回の開発でキーマンになった人物は、前出の室屋選手に加えて、もうひとりいる。トヨタ/レクサスではすっかりおなじみのレーシングドライバーの佐々木雅弘選手だ。ベースのRZや「LBX」の味つけにもたずさわった佐々木選手による、レクサス/トヨタの新聖地「トヨタテクニカルセンター下山」での徹底的な走り込みが運動性能の土台になっているとか。
エアレーサーとレーシングドライバーという2人のキーマンに加えて、見るからに武闘派のイデタチのRZ450e“Fスポーツ パフォーマンス”からすると、その走りは望外に快適で落ち着いている。この悪乗りしすぎない寸止め感はレクサスというか、“Fスポーツ パフォーマンス”の思想だろうか。これなら、100人という幸せなオーナーの方々も、まったく気兼ねなく日常生活で使えそうだ。
ミシリともいわない高いフロア剛性感は、床下電池を強固に守るBEVならではで、これはRZそのものの美点だろう。で、この“Fスポーツ パフォーマンス”もベースに劣らず、低速域から常にしなやかなフットワークだ。
それだけではない。ステアリングレスポンスは明らかに俊敏になっているが、過敏さはまるでない。水平姿勢を保つミズスマシ感も強めつつ、耐ワンダリング性が悪化したような形跡もほとんどない。シンプルな手法でのワイドトレッド化にありがちな弱点が、まったく感じ取れないのは、素直に感心だ。
パワートレインに特別な仕立ては施されていない。旋回中にアクセルペダルを踏み込むほどに絶妙にニュートラル感が醸成されるあたりは、前後トルクを100:0~0:100で自在に配分する「DIRECT4」の恩恵だろう。ただ、車載のリアルタイム表示を見るかぎり、重量配分やサスペンションなどFFベースの設計に合わせてか、実際にはフロント配分をメインにしつつ、リア優勢配分になるのは瞬間的な場合にかぎられるようだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
パワーフィールにもひと工夫ほしかった
“Fスポーツ パフォーマンス”でダウンフォースが増したとはいえ、そのダウンフォース量や前後のバランスは、数値としては公表されていない。高速で上下動がちょっと多めとなるRZ特有のクセに、大きな変化は感じないので、ダウンフォースは増えたとはいえ、絶対に多いというわけではないのかもしれない。
ただ、コーナーからアクセルオンで脱出するときに、リアから蹴り出されるように旋回していく感覚が、ベースの“バージョンL”より強まっているのも明らかだ。公開されている開発秘話動画によると、こうしたリアからのキック力は、自慢のダブルリアウイングのダウンフォースで得られたものらしい。
この小さからず軽からずのSUVが、ここまでの旋回性能を見せるのは、低重心かつ緻密なトルク配分が実現できるBEVならではだろう。そこにワイドタイヤによって強まったステアリングゲインと、ダウンフォースによるリアのキック力が、もともと俊敏な回頭性が身上のRZ450eにさらなるスポーツカーテイストを加えている。
標準のRZ450eと同様というパワートレインのしつけは、トヨタの「bZ4X」にも似て、アクセル操作と実際の加速の立ち上がりに、わずかな不感帯が設けられている。ギアのバックラッシュによるショックを回避するためだ。
しかし、シャシーや空力をここまで仕上げて、しかも筋金入りの好事家100人だけに向けたスペシャルモデルなら、パワーフィールにもひと工夫ほしかった気もする。出力やトルクは変えられなくても、多少のショックは許容してもラグを感じさせないアクセルレスポンスを実現したモードがあれば、もっと楽しめそうな気がする。
……なんてことを思うのも、空力でハンドリングをつくるという新時代の手法や、トルク配分やパワーフィールに無限の可能性を感じさせるBEVだからだ。トヨタグループのなかでも先がけをうたうレクサスブランドだけに、次なる一手も早く見てみたいところだ。このクルマはもはや新規注文できないわけだし……。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
レクサスRZ450e“Fスポーツ パフォーマンス”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4860×1965×1625mm
ホイールベース:2850mm
車重:2110kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:204PS(150kW)
フロントモーター最大トルク:266N・m(27.1kgf・m)
リアモーター最高出力:109PS(80kW)
リアモーター最大トルク:169N・m(17.2kgf・m)
システム最高出力:313PS(230kW)
タイヤ:(前)255/40R21 102Y XL/(後)295/35R21 107Y XL(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電走行距離:--km
交流電力量消費率:--Wh/km
価格:1180万円/テスト車=1180万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:282km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:354.1km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:4.4km/kWh(車載電費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】 2026.10.31 ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。
-
日産フェアレディZ NISMO(FR/9AT)【試乗記】 2026.10.28 「日産フェアレディZ」のマイナーチェンジモデルが登場。改良の主眼はZが受け継いできたヘリテージのさらなる深化と性能の強化だという。もはやお値段1000万円(!)に迫らんとする「NISMO」の9段ATモデルを試す。
-
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】 2026.10.27 ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。
-
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.26 1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。
-
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.24 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
-
NEW
いま軽自動車を選ぶなら、エンジン車とEVのどちらが得か? リアルな数値でコスパを比較・検証する
2026.11.2デイリーコラム海外ブランドまで参入するなど、近年活況をみせる軽EV。従来型の軽自動車と比べた場合の、コスト面の良しあしは? ホンダの2車種を例にとり、そのコストパフォーマンスを考えよう。 -
NEW
トヨタ・アクアGRスポーツ(FF/CVT)【試乗記】
2026.11.2試乗記「アクア」のビッグマイナーチェンジに遅れること10カ月。“最新のトヨタ顔”に変身したスポーツコンバージョンモデル「アクアGRスポーツ」が登場した。専用チューニングが施されたボディーや足まわりの仕上がりを、ワインディングロードに連れ出して確かめた。 -
ホンダ・スーパーONE(前編)
2026.11.1ミスター・スバル 辰己英治の目利き辰己英治さんが今回試すのは、ヤンチャないでたちの「ホンダ・スーパーONE」。軽規格の電気自動車(EV)「N-ONE e:」をベースに走りを鍛えた、電気で走るスポーツコンパクトだ。見た目にも楽しさがあふれる一台の魅力に、“ミスター・スバル”が迫る。 -
思わずなでたくなってくる 丸いデザインのクルマ特集
2026.11.1日刊!名車列伝最近のクルマのデザインは、シャープなラインが特徴だったり、造形そのものが複雑だったり……。今月は、つるりと丸い、シンプルなエクステリアが印象的な世界の名車を日替わりで紹介します。 -
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】
2026.10.31試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。 -
「BYDラッコ」がアジアにはばたく!? ニッポンの軽自動車規格が海外勢に奪われる日
2026.10.30デイリーコラム中国のBYDが、軽BEVの「ラッコ」を日本以外でも販売すると発表! 日本独自のスモールカー規格は、はたして海外でも受け入れられるのか? 本家・日本のメーカーが、海外展開に及び腰だった理由とは? BYDが食指を動かす、軽自動車の秘めた可能性を探る。


















