最近のターボ車が“ドカン”とこないのはなぜ?

2026.01.13 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
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新車ではターボ車の割合がずいぶん高くなったように感じますが、そのマナーはどれも上品かつスムーズで、昔のようにドカンという加速フィーリングはないといっていいと思います。これは、どのようなメカニズムの変化によるものでしょうか?

ターボの歴史をちょっと振り返ってみると、日本初のターボエンジン搭載車は、1979年に日産が発売した430型「セドリック」「グロリア」でした。私自身、ワクワクしてこのクルマに試乗したのを覚えています。

アクセルペダルを踏みこむと、ものすごくドカーン! ときてビックリしたものです。と同時に、ヒューン! というターボの作動音も聞こえてきて、「ひゅーん、どかん、ひゅーん、どかん、これがターボなんだな」と感じ入った記憶があります。

しかし、“ドカンという波”があるのは乗りにくさにもつながるわけで、時がたつほど、早いタイミングでターボが利いて、低回転域からトルクが立ち上がるようにしてきた、というのがターボの開発史でした。

そのなかで、小さなターボと、より大きなターボを組み合わせたツインターボや、排気の経路を2つに分けて広い回転域で効率的に過給するツインスクロールターボが一般化されてきました。

なかでも、タービン自体がどんどん軽量化されて、慣性モーメントが抑えられるようになったというのが、最も大きな進化といえます。ターボ作動時のタービンの応答が良くなるわけですね。

今のターボは、アイドリングからほんのちょっと回転が上がっただけで、ほぼフルブースト。最大値に近いトルクを発生できるのが普通です。

私が最後に開発を担当した90型「トヨタ・スープラ」の場合でも、エンジンが1500rpmも回っていれば、ほとんど最大トルクが出てしまう。スポーツカーというものは、トルクバンドが広いほど、より速く、より扱いやすくなるわけですから、昔のように「あ、ターボが利いている」なんて意識することなく、ほぼ全域でトルクが分厚くなっている状態を理想とするものなんです。

なお、2019年5月に発売されたこのスープラの時代には、もうターボの開発も行き着くところまで行った感があり、私もそこで特に苦労したり悩んだりということはありませんでした。強いて言うなら、それでも「もうちょっとターボらしさというか、トルクの盛り上がり感があったほうがよくはないか? 面白みに欠けるのではないか?」という意見は、社内、そしてユーザーサイドからもいただきました。そのうえで、「低速から立ち上がる乗りやすいターボエンジンのほうが時代に合っているし、それをわかってもらおう」という考えで開発しましたが。

そういえば、あるユーザーから「僕のクルマにはターボが付いているそうですが、どうやって使ったらいいですか?」という質問をいただいたことがあります(笑)。それもまた、ターボを意識することがなくなって久しい、という表れなのでしょう。

自然吸気かターボかということでは、これからますますターボエンジンが支配的になるはずです。特に、軽自動車くらいの排気量でこそターボが生きてくると思いますね。排気で捨てるエネルギーを回収しているわけですから、理屈でいって、明らかに効率はいいのです。それで乗りにくいなどのネガがないとなれば、ニーズは高まるばかりです。

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多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。