プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)
電気は万能にあらず 2026.01.20 試乗記 「プジョー208」にマイルドハイブリッド車(MHEV)の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は?ステランティスでは最新のマイルドハイブリッド
多くの欧州メーカーが“BEVシフト”の修正に迫られるなか、いち早くハイブリッド車(HEV)やMHEVに着手していたのがルノーやステランティスだ。商圏が東西に広く商品の主力帯が小型&低価格なところにきて、無理繰りBEVをつくったところでデマンドがない。EU側のもくろみと現実の乖離(かいり)をいち早く肌感として察していたのだろう。
その予見の成果ともいえるMHEVが、日本の市場にも続々と投入されたのがこの1、2年のことだ。ルノーは「アルカナ」と「キャプチャー」に独自のマイルドハイブリッドグレードを展開。そしてステランティスはプジョーのラインナップの過半、そして「シトロエンC4」「フィアット600」「アルファ・ロメオ・ジュニア」などを一気にMHEV化し、グレードの一部として展開している。
そんななか、2025年10月末に発売された最新のステランティス版MHEVとなるのがBセグメントど真ん中の208に設定されたGTハイブリッドだ。その基本コンポーネンツは前述の幾多のモデルと同じく、6段DCT内に組み込まれた48V駆動モーターと、旧グループPSA時代からの看板ユニットともいえる1.2リッター3気筒直噴ターボとを組み合わせている。このEB2型エンジンは可変バルブタイミングによる簡易ミラーサイクル化とバリアブルタービンジオメトリー化が図られており、さらにエンジン本体側には始動時の振動エネルギー吸収役も担うBSG型のモーターが据えられる。駆動モーターとトランスミッションを組み合わせたeDCTはベルギーのパンチパワートレインが開発したものだが、現在は合弁会社をステランティス側が完全子会社化するなど、内製化を進めている。
いまだ色あせない内外装の輝き
駆動用モーターは最高出力20PS/最大トルク51N・m、1.2リッターユニットは100PS/205N・m、システム出力は110PSと、208 GTハイブリッド用のパワートレインは、日本で既出のものとはアウトプットを違えている。これは車格等に応じていくつか用意されるバリエーションのうち、よりベーシックなものに適合するようチューニングされたもので、実際208 GTハイブリッドの重量は1230kgと、システム出力145PSの「408 GTハイブリッド」に比べれば270kgも軽い。一方で燃費はWLTCモードで22.4km/リッターと、こちらは408 GTハイブリッドの1割増しといったところだ。
2020年に日本上陸した現行208は、2024年秋に大きなマイナーチェンジが施されている。バンパー形状変更を含むデイタイムランニングライトやテールランプの3ストライプ化や、タッチパネルディスプレイの大型化、パーキングアシスト映像の高精細化など内外装の両面でアップデートを受けている。一方で車体色が白・青・黄の3つに絞られるなど、低価格化のための合理化も進められた(208 GTハイブリッドには赤も加わる)。
現状のBセグメントはパワートレインの方向性が曖昧なこともあってか、ライバル銘柄も含めてフルモデルチェンジの端境期に入っている……という状況に鑑みても、208のそれはクラストップレベルの質感を保ち続けている。後席の居住性は中庸だが、MHEV化による使い勝手のネガもみられない。ただし小さなステアリングの上縁から計器をのぞくことになる「iコックピット」は着座姿勢、特に着座高が規制されるため、やっぱり非SUV的な車型には合わないように思う。
コンパクトという美点
個人的にはマイナーチェンジ版の208自体が初乗りだったのだが、感心したのは以前にも増してフットワークにプジョーらしいしっとり感が宿っていたことだった。中高速域でのフラットライドぶりも、ねちっと深く踏ん張りながらバウンドをすっと収めるコーナリングの足さばきも、その心地よさはこれまたBセグメント離れしていた。サスペンションの形式や装着タイヤのサイズに変化はないが、これもまた経年的な熟成のたまものだろうか。
208のマイルドハイブリッドシステムは、総合的にみればパワー的には車格に対して可もなく不可もなくといった印象だ。が、同じシステムを搭載する他のMHEVに比べると、最大30km/hまではモーターのみで自律走行ができるなど、条件次第でのモーターリッチな走行が一番実感しやすいのは小さく軽い208 GTハイブリッドかもしれない。特に走りだしから40km/hくらいまでのタウンスピード領域では、モーターのアシスト感がしっかり伝わってくる。おそらくは回生減速で拾ったエネルギーをこの域でしっかり使いつつ、モーターを生かして走るのが燃費を高めるコツなのだろう。が、その踏み分けは日本のHEVに比べるとシビアだ。
非電動化グレードという選択肢も
ちなみにWLTCモードの詳細をみると、内燃機モデルに対するMHEVの燃費の伸び率としては、郊外>市街地>高速道路モードの順となっている。つまり、208 GTハイブリッドは日々の通勤や買い物などで一定距離を走るような使い方で最大効率が得られる一方で、休日に高速巡航を多用するような使い方では内燃機モデルとの燃費差がそれほど出ないということになるのだろう。それは今までにステランティスの他のMHEVを試乗した際にもうすうす感じられたことだ。
そこでぐっと注目が高まるのは、プジョーではおなじみのグレードである208の「アリュール」だ。ADASやインフォテインメントなどの機能装備に決定的な見劣りはなく、GT系より小径な16インチタイヤを履くとなると、熟成されたフットワークがどのくらい丸く柔らかなのかも想像するに興味深い。価格も現時点で328万円と、装備内容に鑑みればライバルに対する競争力は高そうだ。そして週末遠出系という向きには8段ATの恩恵も燃費面で期待できる。ミイラ取りが……的な話になってしまって208 GTハイブリッドには申し訳ないが、要は電動化とて万能ではなく、生かすも殺すも得するも損するも使い方次第ということだ。それは「ヤリス」や「フィット」だって同じことである。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=ステランティス ジャパン)
テスト車のデータ
プジョー208 GTハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4115×1745×1465mm
ホイールベース:2540mm
車重:1230kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:100PS(74kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)/4264rpm
モーター最大トルク:51N・m(5.2kgf・m)/750-2499rpm
システム最高出力:110PS(81kW)
タイヤ:(前)205/45R17 88H XL(後)205/45R17 88H XL(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:22.4km/リッター(WLTCモード)
価格:389万円/テスト車=396万7520円
オプション装備:ドライブレコーダー(5万9950円)/ETC車載器(1万5510円)/ETC取り付けキット(2060円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1663km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:276.0km
使用燃料:22.1リッター(ハイオク)
参考燃費:12.5km/リッター(満タン法)/12.8km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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