アウディA5 TDIクワトロ150kW(4WD/7AT)
ガシガシ使うが吉 2026.01.21 試乗記 「アウディA5」の2リッターディーゼルモデルが登場。ただでさえトルクフルなエンジンに高度な制御を自慢とするマイルドハイブリッドが組み合わされたリッチなパワートレインを搭載している。260km余りをドライブした印象をリポートする。内燃機系は奇数……だったはずが
アウディA5……と聞けば、いまだに「クーペ」や「スポーツバック」の残像が頭をよぎる方もいらっしゃることだろう。特に当時日産からアウディに移籍した和田 智さんがプロデュースした2ドアクーペの初代A5は、イキりのないたたずまいのなかにアウディらしい塊感があって、いい感じのさじ加減だなぁとしみじみ見つめた覚えがある。
が、現在のA5は「A4」の代替的位置づけとして、4ドアセダンではなく5ドアハッチバックと5ドアステーションワゴンの2車型で展開されている。じゃあ今までのA4はどうなるのよ……といえば、2025年の最初まではA4は電気自動車(BEV)として別途開発されると目されていた。というのも、アウディが「内燃機系は奇数、BEVは偶数」という命名の方針を公に掲げていたからだ。
が、その方針が撤回され、従来どおりの命名則に戻されたのが2025年春のこと。2025年秋に日本にも上陸したBEV版の「A6 e-tron」と並んで、「A7」を名乗ると目されていた内燃機系のEセグメント級が「A6」としてリリースされた、その際にアナウンスされている。
かつての花形選手
EUのBEVシフトを巡るエピソードとして後に語り継がれるだろうこの改変によって、仕込み中と思われるA4とこのA5との車名的関連性がどう変化するかは分からない。翻弄(ほんろう)された感は拭えないものの、これに関してはアウディが……というかフォルクスワーゲングループがお気の毒ともいえる。日本のOEMには大戦も挟みながらのさまざまな内省や高度な自治能力が生きていて政治との距離を一定に保ち続けている。要はあんまりアテにしていないところがあるからパリ協定以降も激しくテンパらなかった側面があるわけだが、EUはお役人がこの先にどういうかたちでOEMに詰め腹を切らせられるのかは気に留めておきたい。
そんな欧州のメーカーやサプライヤーにとって、直近で最も処遇が変わった対象といえばディーゼルだろう。“なんとかゲート”と散々語り尽くされているがゆえに詳細ははしょるが、10年前までは花形だったパワートレインは今やベンチの片隅、メーカーによっては戦力外の感すらある。が、こと中高速移動においてのCO2排出量でみれば、xEVを上回る効率をみせてくれるわけだ。某会長の言葉を借りれば、もし敵が炭素というならば捨て置くには惜しすぎる自動車技術である。とりわけ、クルマの性能で移動時間を短縮できるドイツの人にしてみれば、巡航速度が速く足も長いディーゼルをそうやすやすと他に置き換えることはできないだろう。
先に投入されたガソリン版の「TFSI」に遅れてようやく上陸した「TDI」、つまりディーゼル版のA5は、アウトバーンの追い越し車線をぶっ飛んでいく、まさにそういうドイツの方々のニーズにぴたりとハマるクルマだ。一方でそこに「MHEVプラス」つまり48Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたのがメカニカル面でのポイントとなる。エンジン本体のコストもかさむディーゼルのxEVはハードルが高いが、日本でのA5の販売価格は装備等を勘案すればおおむねTFSIの20万~30万円アップに抑えられているようだ。
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高度な制御のマイルドハイブリッド
3リッターV6ツインターボの「S5」にも搭載されるMHEVプラスは、7段Sトロニックに駆動・回生用パワートレインジェネレーターを組み合わせ、エンジン側にはベルト式の始動・回生用オルタネーター・スターターを配した構成で、最高出力24PS/最大トルク230N・mのアウトプットを実現する一方、減速時には最高34PSの回生エネルギーを得ることが可能だ。そして回収したエネルギーは容量約1.7kWhのLFPバッテリーに蓄えられる。発進時や低負荷巡航時にはモーターのみで走行するパラメーターも備わり、140km/hまではアシストが加わるなど、従来のマイルドハイブリッドよりモーターの使い方が積極的なところが、プラスが意味するものだろう。
それでも伝家の宝刀であるクワトロシステムは、エンジンのアウトプットと物理的に接続されている点がアウディらしい。とはいえ燃費面での配慮から、低負荷時には後輪側への伝達をクラッチで断続し、FF状態で巡航するモードも備わっているところが今日的だ。同じく走破力自慢のスバルも「S:HEV」で同様の考え方を採り入れているあたりは興味深い。
A5のプラットフォームはアウディ主導で開発された「PPC」だ。想定ではグループ全体でBEV一本化へと向かうなか、内燃機を囲う最後のアーキテクチャーと目されていた。が、例のすったもんだを前に一転、速やかに方針転換を図るうえでの救世主になろうとしている。おそらくはポルシェやベントレーも、MLB系アーキテクチャーを用いていたモデルの刷新をPPCベースで検討することになるだろう。
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改善を期待したい点も少々
発進からモーターのみでするするっと歩を進めるあたりの感覚はMHEVの常識を覆す、確かにプラスを裏づけるものだった。が、そういう滑走感を引き出すに求められるアクセルワークはなかなかにシビアだ。むしろ普段乗りでの恩恵は低中速走行時の加速アシストに多く表れるかもしれない。そもそもトルクリッチなディーゼルに高応答なモーターが加わっての力感は、BEVに近いものを感じる。
中高速域ではさすがに駆動アシスト感には乏しいが、代わりにエンジンの稼働を落としてコースティング状態を頻繁につくり出すあたりが、モーターの恩恵を感じさせるところだ。また、コースティングからのエンジン再稼働が滑らかなのはスターターの始動ショック緩衝を狙ってベルト伝達とした効果が表れている。ただしコースティングからの全開など急加速的な操作には複雑なシステムの追従が遅れるのか、時にはレスポンスに違和感がみられることもある。同様にブレーキも停止寸前の微低速域などで、回生と機械制動のつながりに段つきが感じられなくはない。これらは熟成による改善が期待できるが、法的認可次第ではOTAアップデートで対応できる領域でもある。そういう未来図をある程度織り込んで先入れしているのがPPCの開発意義でもあるわけだ。
天候を問わないスタビリティーやロードホールディングの高さといったクワトロの美点は、ロングツーリングでこそ威力を発揮する。そこに組み合わせられるパワートレインがディーゼルである意味合いは大きい。日本ではそういう使い方をする人は少数派ではあるが、仕事でもレジャーでもとにかくクルマでバンバン走り回るという向きにとって、TDIのA5という選択肢は他銘柄とは明確に一線を画するものとなるだろう。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=アウディジャパン)
テスト車のデータ
アウディA5 TDIクワトロ150kW
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4835×1860×1435mm
ホイールベース:2820mm
車重:1990kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/3800-4200rpm
エンジン最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1750-3250rpm
モーター最高出力:24PS(18kW)
モーター最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)
タイヤ:(前)245/35R20 98Y XL/(後)245/35R20 98Y XL(グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツ)
燃費:17.7km/リッター(WLTCモード)
価格:716万円/テスト車=965万円
オプション装備:ボディーカラー<ファーマメントブルーメタリック>(9万円)/パノラマガラスルーフ(33万円)/ロールアップサンシェード<リアサイド>(3万円)/マルチスポークSデザインブラックメタリックポリッシュトアルミホイール<8.5J×20、245/35R20タイヤ>(29万円)/テクノロジーパッケージプロ<MMIパッセンジャーディスプレイ+電動チルト&テレスコピックステアリングコラム+シートヒーター[フロント&リア]+ステアリングヒーター+ダンピングコントロールSスポーツサスペンション/デジタルOLEDリアライト>(45万円)/S lineパッケージ<S lineエクステリア+5ツインVスポーク グラファイトグレーポリッシュトアルミホイール[8J×19、235/55R19タイヤ]+Sスポーツサスペンション+アコースティックガラス[フロントサイド]+スポーツシート[フロント]+ステアリングホイール[3スポークレザー マルチファンクション パドルシフト フラットトップ&ボトム]+デコラティブパネル[マットブラッシュトアルミニウム リニアエンボス アンスラサイト]+センターコンソールサーフェス[グロスブラック]+ステンレスペダルカバー+アルミドアシルトリム+マルチカラーアンビエントライティング+ヘッドライニング[ブラック]>(44万円)/ライティングパッケージ<プライバシーガラス+アンビエントライティングプロ/ダイナミックインタラクションライト+パーティションネット>(9万円)/ラグジュアリーパッケージSファインナッパレザー<MMIエクスペリエンスプロ+Bang&Olufsen 3Dプレミアムサウンドシステム[16スピーカー]+Sスポーツシート[フロント]+シートベンチレーション&マッサージ機能[フロント]+ファインナッパレザー[ダイヤモンドステッチング]+ダイナミカラップアラウンドインテリアエレメンツ[インストゥルメントパネルデコラティブトリム、インナードアハンドルトリム、ドアアームレスト]>(77万円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2034km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:262.6km
使用燃料:22.7リッター(軽油)
参考燃費:11.6km/リッター(満タン法)/12.7km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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